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性的画像、陸上界で通報や被害届「盗撮1人じゃない」⇒専門家「取り締まる法律が必要」

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木南記念陸上/無許可での陸上競技撮影を禁じることを示す看板  会場でスタッフが手に持つ無許可での撮影禁止を示す看板=2020年10月24日、大阪・ヤンマースタジアム長居

アスリートが性的な目的で撮影されたり、わいせつな意図で加工された写真がSNSで拡散されたりする問題で、警察に通報されるような悪質な撮影行為が競技会場で横行している。

対策のひとつとして、日本オリンピック協会(JOC)が警視庁に情報提供し、競技中の女性アスリートの写真を無断でネットに転載したとする著作権違反事件の逮捕が報じられた

一方、悪質な撮影そのものは、刑事事件として“立件”するハードルが高い。会場での撮影自体は認められている点や、盗撮や性的な目的なのかの判別が難しい面がある。

法律の専門家は「取り締まる法律や、性的画像が刑事手続きとは無関係に簡単に削除できる仕組みが必要だ」と訴える。

陸上界では、競技現場での被害実態や悪質な撮影行為にどう対処しているのか。

日本陸上競技連盟が実施した全国調査をもとに紹介する。

盗撮者が「1人どころか10人いた」

日本陸連の調査は1〜2月、52の関連団体を対象に実施し、37団体が回答。被害実態や対策などを尋ねた。

その中で、半数以上の20団体が、直近3年で盗撮などの疑いで警察への通報・相談した経験があると説明。

次のような事例が挙げられている。

・盗撮の証拠(携帯のデータ・写真のデータ等)を主催者が確認できているにもかかわらず盗撮を認めない場合、警察に通報し対応してもらう

 

・特定のエリアや一部の種目のみ撮影する不審者を選手が発見し、取り押さえ、警察に通報して引き渡した

 

・巡回で不審者を発見、わからないように近づき確認、不特定の女子選手の主に下半身を撮っていたので、別室に呼び確認、警察通報

 

・陸上競技場隣接の公園内個室トイレで盗撮、被害選手の仲間達が連携し不審者を確保、その後主催者・公園管理者が連携し警察へ通報、事件として取り扱われる

 

・気が付いた大会スタッフが、周りを取り囲み他の競技役員が警察へ連絡。 一人どころではなく、10名ほどの盗撮者がいた。警察が来るまでは、競技場内の部屋へ連れて行き競技役員数名で見張る状態となった。競技会終了間際だったので、運営には支障をきたすことはなかった。その者たちは警察署へ連行され警察から指導を受けたと聞いている。

選手の承諾を得て「被害届を出した」という回答も複数あった。

木南記念陸上/無許可での陸上競技撮影を禁じることを示す看板  会場でスタッフが手に持つ無許可での撮影禁止を示す看板=2020年10月24日、大阪・ヤンマースタジアム長居

盗撮対策の必要性と撮影要望。現場は板挟み

陸連の調査に回答した37団体のうち36団体が、競技会での『盗撮対策』をしていると答えている。

盗撮などの不審者が多いと感じる場面は、選手の世代は「大学生以上のシニア」が18件、「高校生」が17件。一部の種目や特定のエリアが狙われる傾向があったという。

こうした被害傾向を踏まえて、ある団体・大会では、種目ごとに撮影を禁止するエリアや方向、角度を細かく示して、「撮影に関するお願い」として配布・掲示。撮影を許可制にしている団体・大会もある。

撮影に関するお願い

見回り強化やアナウンスによる注意喚起、地元警察による巡回など、各団体で様々な対策をしているが、負担や困難もつきまとう。

自由記述では現場の努力や苦労がつづられている。

・人員や費用の面でも負担が大きい

 

・撮影禁止エリアを設置しても枠外から撮影される

 

・盗撮に関してあまり厳しい規制を設けると、保護者等からの苦情が殺到する。非常に難しい問題でもある

 

・卒業アルバムの撮影や保護者会などの学校関係者なのか盗撮者なのか判断にこまるときもある。

選手を守るための『盗撮対策』の必要性と、保護者や純粋な陸上ファンからの撮影要望との間で、板挟みにあっている状態だ。

きっかけは選手の声。スポーツ界が動いた

アスリートを狙った盗撮は、古くからある問題だと、日本陸連の石井朗生経営企画部長は語る。だが近年は特に、カメラやスマートフォンの機能向上やSNSによって、写真の撮影や拡散が容易になり、被害が起きやすい状況になっているという。

これまでは各団体や大会ごとの対策が中心だったが、今回は日本陸連として、被害実態や対策についての全国調査に乗り出した。そのきっかけになったのは、2020年夏に選手から相談が寄せられたことだ。

石井氏は「今までは被害を受けても、なかなか他人に相談ができなくて、自分で抱え込んでしまっているケースがすごく多かったのだと思います」と話す。

しかし、今回は選手の声が、陸連などスポーツ界としてのサポートや対策の動きにつながった。同じ年の11月には、JOCなどスポーツ関係団体による共同声明が出され、情報提供の呼びかけや被害撲滅を打ち出した。

そのため、被害にあった選手が相談しやすい環境が作られつつあると、石井氏は感じているという。

「声をあげることで、支えてもらえるんだと思えている選手たちが増えているのではないでしょうか」

JOCが表明したアスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組み

法整備を望む声

一方で、被害撲滅の難しさを感じている。

団体・大会によっては、撮影を許可制にして「主催者が撮影した写真の開示を求めた際は、必ず応じる」と同意書に書いてもらっている場合もあるが、強制的に見せてもらうことはできず、応じてもらえないケースも多いという。

さらに、性的目的と疑われる悪質な撮影行為を突き止めても、事件化につなげられるような法律の整備が十分でないこともネックになっている。

「画像や映像の撮影内容や利用の仕方について、違反や処罰を明確に規定している法律や条例はほとんどありません。結局は注意して、終わってしまうケースが多い」と石井氏は話す。

中には「事件として取り扱われた」という回答もあったが、処罰の対象とならないことも多く、法整備を望む声もあがっていた。

日本陸連は、アンケートやヒアリングを元にまとめた対応事例を各関連団体に周知。選手が安心して競技に取り組める環境づくりのため、陸上界全体での対策や、JOCや他のスポーツ団体との連携も図っていく。

超えるべき論点

悪質な撮影行為に対して、法律で処罰規定を設けようとする動きもある。

現在、性犯罪に関する刑法改正が法務省で議論されており、5月に検討会の報告書が提出された。その中で、競技中のスポーツ選手を狙った性的画像の撮影や流通行為に対する処罰も検討されている

ただ、刑法改正検討会委員の上谷さくら弁護士は、法制化について次のような課題をあげる。

「アスリートの場合、スカート内の盗撮などと違って、プレーしている姿を見るのはいいのに、なぜ撮影はダメなのか、という問題が生じます。また、フォームをチェックするために撮影する場合とどう区別するのか、報道の自由はどうなるのかなど、超えなければならない論点はたくさんあります」

しかし、被害者が泣き寝入りしている現状を変えるためには「形にするのが困難であっても取り締まる法律は必要で、法律が整備されるまでの間は、現行法を使って取り締まっていく必要がある」と、上谷氏は訴える。

「先日、アスリートの盗撮事案をめぐり、警視庁は著作権法違反の疑いで容疑者を逮捕しました。これ以外でも、名誉棄損やわいせつ物頒布罪など、使える法律で取り締まっていくべきだと思います」

撮影行為も問題だが、選手にさらに大きな精神的な被害を与えるのが画像のネットやSNSでの拡散であり、それを防ぐための仕組みづくりも必要だと上谷氏は強調する。

「被害者からすれば、頼むからネットにあげないで、という感じではないでしょうか。性的画像が刑事手続きとは無関係に簡単に削除できる仕組みが必要だと思います」

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Source: ハフィントンポスト
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