政党ごとに女性候補の目標設定、法改正で義務化を 「一歩でも前に進めたい」【ジェンダーギャップと政治】

3月31日発表されたジェンダーギャップ指数2021で、日本は120位だった。足を引っ張っているのは、やはり政治分野だ。

そんな中、2018年に議員立法で成立した「候補者男女均等法」を改正しようという動きがある。

日本版パリテ法とも称され、男女の候補者の数ができるかぎり均等になるよう政党に努力を求めた法律だが、実効力の低さが課題となっていた。

法改正を目指して動いているのは、超党派による議員連盟だ。各政党に対し、現在は努力義務とされている候補者数の目標設定を義務付けなどを盛り込むことなどを検討している。

議連の事務局長を務めるのは、国民民主党副代表で参院議員の矢田稚子氏。「一歩でも前に進めたい」と語る矢田氏に、法改正の必要性や女性議員を増やす必要性について聞いた。

 

民間から飛び込んだ政治の世界「一番遅れている」

「会社だけで変えられることには限界がある。社会が変わらないとダメなんだと思うことはいっぱいあったが、以前はそれが政治と結びついていなかった」

1984年、男女雇用機会均等法が成立した前年に松下電器(現パナソニック)に入社。電話交換手からキャリアをスタートした矢田氏は、人事や組合での仕事を通じて、女性が男性と同等に働き評価されるようなキャリアの道を開拓してきた。

2016年に薦められるがままに参議院に立候補し、初当選。32年間、民間企業に勤めてきた矢田氏の目に、政治の世界は異様に映った。

「正直、政治の世界が一番遅れていると思いましたね。企業と違って定年がないから、組織としての新陳代謝が全くない。重鎮議員の鶴の一声で物事が決まるような文化が根強く残り、若い人や女性は『オンナコドモ』扱いをされてしまう」

一方、政治の世界の常識に馴染みがなかったからこそ、感じられたこともあった。

「庶民感覚を持っている人が政治家に必要だと思います。例えば、保育もそうです。毎日子供を送って、布団を洗って乾かして持っていく大変さ。熱を出したらどうしようという現実的な悩み、焦り。生活の当事者としての感覚がないと見えないものはいっぱいあります」

生活者としての意識を持つ女性がもっと増えるべきだ、と考えていたところに議連の存在を知り、すぐに参加を決めたという。

「一歩でも前に進めたい」

超党派の議員連盟は2015年、自民党の野田聖子氏らが中心となって発足。当初目指したのは「クオータ制」の導入だった。

だが、議論の過程で「男女同数」か「男女均等」か意見が分かれ、2018年に「候補者男女均等法」が成立。メディアの注目は集まったものの、努力義務に止まる現行法では実効性に乏しいのが難点となっている。

少しでも実効性を高めようと、検討中の改正法案には、具体的な目標の定め方は政党に委ねるものの女性候補者の数値目標の設定は義務づける方針。議連内のワーキングチームで議論を取りまとめ、今国会に改正案を提出する予定だ。

矢田氏は、こう訴える。

「過去からの性別役割分担意識の積み重ねで『今』があり、結果として政治や経済の世界の決定権のある立場に女性が少ない。アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)により、立候補にも壁がある。まずは、数を一定数増やすための施策が必要です」

「一足飛びに全部というのは難しいかもしれないけれど、自分たちの目標を設定しましょう、くらいならできるはず。1歩でも前に進めたい」

声をあげて行動を起こせば、少しずつでも常識は変えられるーー。

矢田氏がそう信じているのは、企業時代の経験からだ。

女性は結婚や出産で仕事を辞めるのが当たり前だった時代。均等法により、多くの日本企業で女性の採用は広がったが、女性社員だけに自宅からの通勤や制服着用が求められた。仕事は男性社員の補助的な業務で、結婚や出産で女性が退社した場合は退職金が上積みされる制度まであった。

矢田氏の職場でも、「女に名刺なんかいらん」と言われ、女性社員は名刺が持てない時代があったという。

ある時、隣の新入社員の男性のデスクに積まれた新品の名刺が目に飛び込んできた。

「彼はまだ何の仕事もしていないのに、やっぱりおかしいです、と部長に直談判しました。これまでに私が仕事先にもらった名刺の束を見せて、なぜ私には名刺がないんでしょう?って…」

名刺を作ることはあっさり認められた。その後も、女性だけ出張を認めてもらえないことに抗議したり、女性も正当に評価され昇進できるように女性社員の意見を取りまとめて上層部に提言を出したりーー。

「自分たちで課題形成をして、事実関係を突きつけて、耳を持つ相手に訴えれば、状況は変わると信じています」

 

若者世代の動き「頼もしいし、ありがたい」

時代の変化にも希望を感じているという。

超党派議連が発足した2015年から同法が成立した2018年、女性議員を増やす必要性について声をあげてきたのは、均等法制定の中心となった赤松良子氏が代表の「クオータ制を推進する会(Qの会)」だった。

だが、現在は若い世代も一緒に声をあげている。

2020年に広がった、今年行われる衆院選に向けて、各政党に女性候補者を増やすための具体的な取り組みを求める署名キャンペーン「#女性議員を本気で増やしてください!」では、学生グループも中心メンバーとして活動に加わっていた。

「本当に頼もしく思うし、ありがたい。みなさんの社会だから、みなさんで関心を持って、もっと盛り上がって欲しい。一緒に社会を変える挑戦をしてほしいし、私ももっとみなさんと話したいです」

【中村かさね @Vie0530/ハフポスト日本版】

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。
しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。
2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。
候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。

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Source: ハフィントンポスト
政党ごとに女性候補の目標設定、法改正で義務化を 「一歩でも前に進めたい」【ジェンダーギャップと政治】

Kasane Nakamura