アメリカのプロ野球マイナーリーグに、初の女性監督が誕生する。
ニューヨーク・ヤンキースは1月11日、傘下のローAチーム「タンパ・ターポンズ」の監督に、レイチェル・バルコヴェック氏が就任すると発表した。
Looks like we'll be helping shape history in 2022! ⚾️🤙
Welcome Rachel! https://t.co/jvSoXTFyFJ#TampaTarpons#Yankees#MiLBpic.twitter.com/zEU65xVmQj
— Tampa Tarpons (@TampaTarpons) January 11, 2022
タンパ・ターポンズのツイート:私たちのチームは2022年に歴史を作る一助になりそうです。ようこそレイチェル!
MLB傘下チームを初めて女性が率いる
バルコヴェック氏の監督就任により、初めて女性がMLB傘下チームを率いることになる。
同氏が歴史を作るのはこれが初めてではない。バルコヴェック氏は2019年にヤンキースのマイナーリーグチーム巡回打撃コーチに就任。女性として初めてのMLB傘下チームのフルタイム打撃コーチとなった。
バルコヴェック氏はこの時「私は野球の仕事を得た最初の女性ではありませんが、今回の就任は小さな変化だと思います」「私を生み出したのは、先人の女性たちです。もし、私のことを先駆者だと思う人がいれば、それは素晴らしい。なぜなら『自分にも可能だ』と考えてくれる人がいるかもしれませんから」と語っている。
さまざまな場所でキャリアを築いてきた
バルコヴェック氏は元々、ソフトボールの捕手として、クレイトン大学やニューメキシコ大学でプレーした。
プロ野球でのキャリアをスタートさせたのは2012年。セントルイス・カージナルスのマイナーリーグチームで、インターンとしてストレングス&コンディショニング(パフォーマンス向上と怪我予防などを担当する部署)に携わった。
その後、ドミニカ共和国のティグレス・デル・リセイやアリゾナ州立大学、シカゴ・ホワイトソックス、ヒューストン・アストロズのマイナーリーグチームなど、様々なチームでコーチやコーディネーターとして働いた。
2018年にはオランダのアムステルダム自由大学に留学し、生物力学で自身2つ目となる修士号を手にした(1つ目は2012年にルイジアナ州立大学で取得した運動科学の修士号)。オランダ留学時には、同国の野球代表やソフトボール代表の強化プログラムで、打撃コーチ補佐も務めている。
最新テクノロジーを学ぶことにも貪欲だ。
オランダから帰国した後の2019年には、データや最先端技術を使って野球選手の能力を向上させる団体「ドライブラインベースボール」で、バッターのためのアイトラッキングの研究に携わった。
2019年にヤンキースのマイナーリーグチーム巡回打撃コーチに就任した後、2021年シーズンはヤンキースの傘下チーム「フロリダ・コンプレックスリーグ」の打撃コーチとしてチームに貢献した。
「レイチェル」の名前を「レイ」に変えたら…
技術を向上させ、視野を広げる努力を続けてきたバルコヴェック氏だが、圧倒的に男性が優位なプロ野球の世界で、数々の試練や差別にも直面してきた。
ニューヨークタイムズによると、数年前にプロ野球のコーチ職に応募したものの、全く返事がなかった。
そこで履歴書の名前を「レイチェル」から「レイ」に変更すると返信がくるように。ところが応募したのが女性だとわかると、相手から驚かれたり、チームが女性を雇わない方針だという理由で採用を断られたりした。
それでもバルコヴェック氏はプロの世界を諦めず、キャリアを重ねて監督の座を自ら手にした。
2019年のインタビューで、バルコヴェック氏は「自分が歩んできた道は、私にとって強みだと思っている」と語っている。
「私はおそらく、男性よりもっと多くの努力をしなければならないでしょう。しかしそれは、私にとっていいことだと思っています。なぜなら、課題に直面した時に、より一層の備えができているからです。若い女性や一般の女性には、私たちがより努力しなければいけないのはフェアじゃないと言いたい。しかし自分は努力してよかったと思います。簡単に達成できていた場合よりずっと、準備ができています」
少しずつとはいえ、メジャーリーグでも女性の進出が進んでいる。
2020年にはマイアミ・マーリンズのGMにキム・アング氏が就任し、初の女性GMが誕生した。また、2021年にはボストン・レッドソックスがマイナーリーグコーチにビアンカ・スミス氏を起用。スミス氏は黒人女性初のプロ野球コーチになった。
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履歴書の名前を変えたら対応が変わった…そんな過去を乗り越え、初の女性監督が米マイナーリーグに誕生