「カス」はもったいない精神だ。 「森永甘酒」50周年機に「サミット」開催で消費者と語り合う

赤い缶で知られる森永甘酒缶が発売から50周年を迎えることを記念し、ファンと共に語り合う「サミット」が3月17日、神奈川県・葉山の古民家で開かれた。開催したのは、森永製菓とその関連会社のSEE THE SUNだ。

サミットで光を当てたのは、日本酒作りの工程で出る副産物で、甘酒の材料になる「酒粕」や、牛乳をチーズに加工する製造工程で出てくる「ホエイ」。それぞれ商品開発を担当する森永製菓と森永乳業の社員が「キング」「クイーン」に扮装して魅力などを解説した。

森永製菓で森永甘酒の担当をする渡部耕平さんは、酒粕の魅力について「日本酒の副産物として『カス』と呼ばれますが、白米と比べてもタンパク質やアミノ酸など栄養成分が多く含まれることは日本食品標準成分表でも明らか」として「カスと呼ばないで」と訴えた。

また、「甘酒は日本書紀に古墳時代からあると記述がある、古来の日本独特の嗜好飲料。抹茶の次に世界に羽ばたく存在になるはず」と紹介した。

森永甘酒

一方、「ホエイ」について、森永乳業の白庄司宣明さんによると、近年、牛乳の付加価値を高めるためにチーズ製造を始める国内の酪農家が増え、それに伴って「ホエイ」が生産されるようになっている。

しかし、一般的には1キロの牛乳からは約100グラムのチーズが製造され、約900グラムのホエイが排出されることになる。有効活用のため、ホエイは飼料などに使われたり、「ホエイジャム」や「ブラウンチーズ」といった商品にされている。大企業では粉末にしたり、海外ではバイオプラスチックの原料にする研究も進められているが、さらなるホエイの付加価値が求められており、同社でも4月にホエイなどを原料にした発酵酢ドリンクの発売が予定されているという。

「酒粕という『カス』だったものが本当に美味しい甘酒という飲み物を確立されているのは素晴らしいこと。ホエイももっと何かにしたい、もっと価値あるものに作り替えていきたいと常日頃から考えています」(森永乳業・白庄司宣明さん)

(左から)「クイーンカス」に扮した森永乳業・白庄司宣明さんと、「キングカス」の森永製菓・渡部耕平さん

また、サミットでは「料理僧」として知られる湯島山緑泉寺住職の青江覚峰さんによる、精進料理の振る舞いや解説も。

青江さんは、肉や魚などを使わない精進料理の良い点について「世界には色々な食のルールがありますが、ほとんどの方と『同じ料理』を食べることができるフードダイバーシティに対応した日本発のお料理です」と解説。

さらに精進料理は、単なる野菜を使った料理というだけではなく、調理中の心構えや味付けについても様々な決まりがあると青江さん。

「味を濃くすれば満足度が上がるけれど飽きやすい。淡い味は飽きが来ない、じんわりと優しく味わい美味しく感じる、これが長く続けられるということ」と話した。

精進料理を紹介する湯島山緑泉寺住職の青江覚峰さん

最後に、精進料理との共通点について、渡部さんと白庄司さんはそれぞれこのように語った。

「『もったいない』という意識が共通してあるなと感じました。それは自分が持っているものを簡単に捨ててしまわないこと。人が持っている心を大切にするということ。私にとっては仕事を通じて出会った酒粕ですが、調べれば調べるほど利用価値の高い食材だと実感しますし、もったいない精神をうまく利用して各地で様々な展開をされているのだと感じます」(渡部さん)

「食べ物で命を繋ぐ、命を大切にして次の命に活かすことが大事ということを改めて意識しました」(白庄司さん)

その他、甘酒探求家の藤井寛さん、管理栄養士のさけかす子さんも来場、酒粕の食べ比べやメーカーごとの甘酒の味の違いや製造工程などについて解説した。

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