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「東京大学は諦めて地元に…」そんな地方の女子高生のために。男子が8割の東大で、女子学生ら20人が立ち上がった

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「実際に東大で学んでいる女性の先輩がいるのだと知れて、私も頑張ってみようと思えた」

長野県の公立高に通う1年の女子生徒は、5月中旬に東京大学で開かれた文化祭「五月祭」で笑顔を見せた。

訪れていたのは、地方に住む女子高校生の大学進学の選択肢を増やすことを目的に活動する東大の学生団体「#YourChoiceProject」の相談ブース。「地元には東大受験について相談できる人がいない」といい、東大の女子学生に悩みを打ち明けて助言をもらったという。

五月祭で「 #YourChoiceProject」が開いた相談ブースには女子高校生らが続々と訪れた(5月13日午後、東京都文京区)五月祭で「 #YourChoiceProject」が開いた相談ブースには女子高校生らが続々と訪れた(5月13日午後、東京都文京区)

東大の女子の学部生がわずか2割にとどまり、地方出身者は特に少ないーー。そんな現状を変えようと、地方出身の女子学生ら20人が自ら立ち上がった。

「東大は諦めて、地元の大学に…」

五月祭で団体が開いた相談スペースには、東大に憧れつつも受験や進学に不安を抱く女子高校生がひっきりなしに訪れた。

「学習の進度がはやい首都圏の受験生とたたかえるか自信がない」と話す福島県の公立高1年の女子生徒には、「焦らず、学校の普段の授業に集中することが大事」

「東京での一人暮らしが不安で、東大への進学は諦めて地元の大学を目指そうか迷う」という愛知県の公立高1年の女子生徒に対しては、「東大には女子学生向けの家賃補助制度(月3万円)がある。制度を使えば、セキュリティが万全の部屋に住めるはず」。地方出身の女子学生が、1人1人の悩みに答えた。

地方から東大に進学した経験から助言する工学部3年の永田彩羽さん(左)地方から東大に進学した経験から助言する工学部3年の永田彩羽さん(左)

相談に応じた福岡県出身の永田彩羽さん(工学部3年)は「年に1〜2人ほどの東大合格者が出るかどうか」の私立高に通った。「一緒に東大を目指す仲間がおらず孤独だった上、情報収集にも苦戦した」といい、「同じ境遇に立つ生徒の相談に乗り、不安を解消する方法を考えたい」と力を込めた。

東大の女子学生の少なさは顕著だ。日本の大学全体では学部生の45.6%(2022年5月時点)を女性が占める中、東大では20.0%(同)にとどまる。2023年度の入試では、全合格者に占める女性の割合は22.7%と過去最高に達したものの、依然として低い水準にとどまる。

東大は「2026年度末までに女子学生の割合を30%に引き上げる」という目標に向け、女子学生向けに家賃を補助したり、役員の過半数を女性にしたりと対策を講じている。ただ、藤井輝夫総長は30%という数値目標について「相当頑張らないと達成できないレベル」と語っている。

「男子学生ばかりの環境で学んだ男性が社会のリーダー層になれば、女性に理解のない企業や政策ばかりになる」

そんな危惧を抱くのは、団体の共同代表で兵庫県出身の川崎莉音さん(法学部4年)と静岡県出身の江森百花さん(文学部4年)。2021年11月に団体が立ち上げ、地方在住の女子高校生の進路決定をめぐる調査をしたり、大学入試についての情報を発信したり、生徒の相談に乗ったりする活動を展開している。

きっかけは、当時2年だった川崎さんと江森さんが受けた「ジェンダー論」の講義。地方の女子高校生は浪人する割合が低いことを知り、「これっておかしくない?」(江森さん)と思ったという。

江森百花さん(右)が調査結果の解説すると、男性も足を止めて耳を傾けていた江森百花さん(右)が調査結果の解説すると、男性も足を止めて耳を傾けていた

「『東大に女子学生を増やす』といっても、地方の女子生徒は抱えている問題が(都市部とは)異なる。東大を目指せるのに選択肢に入れることができない地方在住の女子生徒をサポートする必要があると思った」(同)

自己評価の低さ、保護者からの期待

団体は地方出身の女子学生が東大に少ない原因を究明するため、2〜4月、高校2年の男女、約3800人にインターネット上でアンケート調査を実施。▽偏差値が67以上▽合格者が例年5人以上ーーなどの条件を満たす全国約100校の生徒に、大学進学についての考えを尋ねた。

その結果、地方の高校にいる女子生徒の傾向として、▽偏差値が高い大学へ行くことそのものにメリットを感じていない▽客観的な学力よりも低い自己評価を下している▽保護者から実家に近い大学に行くことを期待されやすいーーといった特徴が明らかになったという。

五月祭を訪れた人に調査結果について説明する川崎莉音さん(右)五月祭を訪れた人に調査結果について説明する川崎莉音さん(右)

こうした調査結果を、五月祭で団体の相談ブースを通りかかった人に団体のメンバーが解説。グラフを見た会社員の女性(24)は地方の女子生徒について「学力は高くても自己評価が低いという結果に驚いた」と目を丸くした。

東大の卒業生の男性(23)は「(団体のように)東大生が当事者意識を持って打開策を考えることが重要だが、調査結果にあらわれているような実態を知っている在学生は少ないと思う」と話した。

「男子だけの環境では気づけないことも」

団体の共同代表、川崎さんは「地方の女子生徒が抱える問題の実態は大学側も把握できておらず、適切な対応にもつながっていない」と指摘。その上で、「大学入試の制度を変えるなど、国や自治体を巻き込んだ大規模な教育改革で、地方の女子生徒の選択肢を増やす必要がある」と強調した。

問題意識を持つのは女子学生だけではない。団体には男子学生も参加している。

地方から五月祭を訪れた女子高校生の相談に乗る、法学部4年の川崎莉音さん(右)地方から五月祭を訪れた女子高校生の相談に乗る、法学部4年の川崎莉音さん(右)

団体の一員で、関西屈指の名門として知られる男子高出身の男子学生(法学部3年)は「男子高時代は、男女格差について考えることすらなかった」と打ち明ける。「男子だけの教育環境で学力が伸びたのは事実だが、そんな環境では気づけないこともある。男性が大多数の東大は、変わっていかなければならない」と強調した。

団体は地方在住の女子高校生の学習や将来設計を2年にわたって無料でサポートするメンター制度を始める方針。5月21日まで、利用者を募集している。ホームページ内のチャット機能などによる相談も随時、受け付けている。

〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉

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