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列車50両が脱線したオハイオ州の事故。被害拡大の背景に「規制緩和」と専門家指摘

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アメリカ・オハイオ州で列車が脱線して有害物質が流出した事故で、当局が周囲の汚染状況の検査を続けている。

住民には水道水に代わるペットボトルが配られ、近くの川では魚などの生き物の死亡も確認された。

調査が進む中、被害が拡大した背景に鉄道業界が求め続けてきた支出削減や規制緩和があるのではないかと指摘されている。

脱線し炎上する貨物列車(2023年2月4日)脱線し炎上する貨物列車(2023年2月4日)

50両が脱線。有害なガスが流出する

事故は2月3日、ペンシルバニア州との州境にある人口約5000人の町イーストパレスティーンで発生した。

環境保護庁(EPA)によると、ノーフォーク・サザン鉄道の貨物列車150両のうち50両が脱線し、そのうち20両に大量の塩化ビニルやアクリル酸ブチルなどの有害物質が積まれていた。

塩化ビニルはプラスチックの製造に使用される有機化学物質で、肝臓や脳、肺などの複数の癌との関連がわかっている

事故による火災は数日間続き、2月5日には爆発の恐れがあるとして事故現場の周辺1マイルに緊急避難命令が出された。

当局は爆発を防ぐため、塩化ビニルなどの危険なガスを抜いて燃焼させる「制御燃焼」を実施。その結果、ホスゲンや塩化水素などを含むガスが空中に放出された。

ホスゲンは第一次世界大戦中には毒ガスとして使用され、吸入すると嘔吐、目の炎症、呼吸困難などの症状を引き起こす。

連邦および州の機関が、事故現場周辺の空気と水質チェックを続けているが、オハイオ川で汚染物質が検出されており、州当局は3500匹の死んだ魚が見つかったと発表した。

ガスを抜いて燃焼させたことで、脱線した車両から有毒物質を含む黒いガスが立ち上った(2023年2月6日)ガスを抜いて燃焼させたことで、脱線した車両から有毒物質を含む黒いガスが立ち上った(2023年2月6日)

規制緩和を求めてきた鉄道業界

この事故の背景にある問題として問題視されているのが、鉄道業界が求めてきた規制緩和だ。

オバマ政権は2014年、一定量の原油や危険物質を運ぶ列車にECPブレーキ(電子制御式空気ブレーキ)を搭載する新たな規制を導入した。

ECPブレーキは、列車全体に電子ブレーキ信号を瞬時に提供することで従来のエアブレーキよりも速くブレーキをかけられる。

この規制に強く反対したのが、ノーフォーク・サザン鉄道も加入する業界団体・アメリカ鉄道協会(AAR)だ。

AARはこの規制について「ECPブレーキは非常に費用がかさむ一方で、それに見合うだけの利益はない」とパブリックコメントで述べている。さらに、規制の義務化は正当性に欠けると主張した。

そして業界寄りだったトランプ政権は2018年、AARなどの求めに応じて、オバマ政権時代に導入されたECPブレーキの規則を撤廃した。

オハイオ州の脱線事故の後、この鉄道業界が求めてきた規制緩和が被害を甚大にしたのではないかと指摘されている。

脱線した車両の一部(2023年2月9日)脱線した車両の一部(2023年2月9日)

国家運輸安全委員会によると、事故を起こした列車にはECP ブレーキが搭載されていなかった。

連邦鉄道局の元高官スティーブン・ディトマイヤー氏や他の鉄道専門家は「ECPブレーキが搭載されていれば、これほどの被害は出なかっただろう」と、調査報道メディアのザ・レバーに語っている。

脱線事故の調査は、まだ始まったばかりだが、国家運輸安全委員会のマイケル・グラハム氏は2月5日の会見で、車軸の機械的な問題が脱線を引き起こした可能性があると語った。

また、ピッツバーグ・ポスト・ガゼットが入手した防犯カメラの映像から、車両の1台が脱線約20マイル手前で炎と火花を散らしていたことがわかっている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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列車50両が脱線したオハイオ州の事故。被害拡大の背景に「規制緩和」と専門家指摘

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