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性交同意年齢、どう変わる?性犯罪の刑法改正、骨子案の6つのポイント。専門家は「5歳差の要件は広すぎる」との懸念も

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骨子案のポイント骨子案のポイント

刑法を性犯罪の実態に合わせて改正するための骨子案がまとまった。

議論を続けてきた法務省・法制審議会の部会は、1月に示された試案をベースにした骨子案を2月3日に開いた会議で決めた。

性交同意年齢(13歳)を年齢差の条件付きで16歳に引き上げるほか、強制性交等罪などの「暴行・脅迫」要件の見直し、時効の延長などが柱。今後法務大臣に示すなどし、国会で審議される。

評価する声も上がる一方、被害者団体からは「実態に合っていない」といった指摘もある。

盛り込まれた内容から、ポイントを解説。専門家に評価できる点や懸念点を聞いた。

「暴行・脅迫」要件の見直し

骨子案に挙げられた強制性交等罪の構成要件となる行為骨子案に挙げられた強制性交等罪の構成要件となる行為

現在の刑法では、強制性交等罪は「暴行又は脅迫を用いて」行われた際に成立するとされているが、被害者からは暴行や脅迫がなくても恐怖から「フリーズ」状態になることもあるなどの声が上がっていた。

そのため骨子案では、強制性交等罪の構成要件として、以下8つの具体的な行為を例示。こういった行為によって「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」て性交などをした場合と規定した。

①暴行又は脅迫を用いる

②心身に障害を生じさせる

③アルコール又は薬物を摂取させる

④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にする

⑤拒絶するいとまを与えない

⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、又は驚愕させる
※いわゆる「フリーズ」状態

⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせる

⑧経済的又は社会的関係上の地位に基づく 影響力によって受ける不利益を憂慮させる

審議会で論点の一つだった、教師やコーチ、職場の上司などによる、地位や関係性を利用した性暴力の規制については⑧に取り込まれた。

また、こうした行為を自らしていなくても、相手が「当該状態にあることに乗じて」性交などをした場合も処罰対象となる。

 性交同意年齢が13歳→16歳に

性交同意年齢の引き上げ性交同意年齢の引き上げ

性的行為に関して自ら同意を判断できるとする「性交同意年齢」は、日本では明治時代から100年以上変わらず13歳だった。

骨子案では、これを16歳に引き上げ。

ただし、同年代同士の恋愛による行為を処罰対象としないため、13〜15歳に対しては、年齢が5歳以上離れた年上の行為者の場合のみ適用されるとした。

「グルーミング」が処罰対象に

「グルーミング」の罪を新設「グルーミング」の罪を新設

性的な行為を目的に子どもを手懐ける、いわゆる「グルーミング」を処罰する新たな規定も盛り込まれた。

「威迫、偽計又は誘惑して面会を要求する」ことなどが要件となっており、若年者が性被害に遭いやすいことから、被害発生の前段階で介入することを目的としている。 

ただ、「グルーミング」という言葉はペット業界などで「動物の体を手入れする」といった意味でも使われているため、骨子案では使用することを控えた。

時効の延長

時効の延長時効の延長

性暴力の被害申告の難しさなどを踏まえ、性犯罪に関する公訴時効は、いずれも5年延長する案となっている。強制性交等は10年→15年、強制わいせつは7年→12年など、それぞれ時効が伸びる。

被害者が18歳未満の未成年の場合は、18歳に達するまでの期間がこの年数に加算される。

ただ、性被害の当事者と支援者でつくる一般社団法人「Spring」は、特に幼い頃に受けた性被害の認識には数十年かかることも少なくないため「被害実態に見合っていない」と指摘。時効の撤廃や更なる延長を求めていた

体の一部や物の挿入も「性交」扱いに

体の一部やものの挿入も「性交」扱いに体の一部やものの挿入も「性交」扱いに

現在の強制性交等罪は、男性器(陰茎)を膣や肛門、口腔内に挿入、または挿入させる行為を処罰の対象としている。

今回まとまった骨子案では、「膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入する行為」も性交と同じ扱いとした。

「撮影罪」の新設

「撮影罪」の新設「撮影罪」の新設
盗撮は現在の刑法に規定がなく、都道府県の条例で規制。地域で条文にばらつきがある上、処罰が難しい例もあり、法の整備を求める声が上がっていた。
案で示された「撮影罪」は性的な部位やわいせつ行為の盗撮、第三者への提供などが処罰対象。わいせつなものではないと誤信させて性的な姿を撮影することなども含まれる。

専門家は一定の評価「起訴すべきかを判断しやすくなる」

上谷さくら弁護士上谷さくら弁護士

法制審がまとめた骨子案について、専門家はどう受け止めたのか。長年、性犯罪被害者の支援や弁護をしている上谷さくら弁護士に聞いた。

上谷弁護士は「課題はありますが、全体的な評価としてはとても進んだと思います」と話す。

特に強制性交等罪などの「暴行・脅迫」の要件が見直されたこと、いわゆる「グルーミング」が処罰対象になったことなどについては「被害者の視点を反映しようとした印象を受けます」と評価する。

現在の強制性交等罪などの構成要件では、起訴するかどうかの判断が検察官の感覚に委ねられるところが大きかったと指摘。「(改正によって)人による解釈の違いの余地をどう狭めるかが重要でした」とする。

骨子案では「暴行または脅迫」「アルコールまたは薬物を摂取させる」「拒絶するいとまを与えない」など8つの例を挙げている。

それでも解釈の幅は残されるものの、「ある程度、客観的な基準があることで起訴するべきか否かを判断しやすくなり、国民にとってもどういった行為が処罰対象か分かりやすくなる」とした。

性交同意年齢については懸念も「5歳差の要件は広すぎる」

上谷弁護士が最も懸念しているのは性交同意年齢についてだ。

13歳から16歳に引き上げられたが、13〜15歳に対しては、加害者が5歳以上年齢が上の場合にのみ処罰対象になる。

上谷弁護士は「性交同意年齢が引き上げられたこと自体はよかった」としつつ、「中学生は1歳差でも強固な上下関係があることが多く、同学年でもスクールカーストが存在するところもある。性的ないじめも少なくない。5歳差というのはあまりに広すぎます」と指摘。

加えて、日本の性教育が不十分なことが問題をより深刻にする、と上谷弁護士はみる。学習指導要領では中学校では妊娠の経過について取り扱わないとされており、性交や避妊などについての正しい知識を持たない生徒も多いからだ。

「きちんとした性教育をしないのに、『同年代の真摯な恋愛は守られるべき』という理由で性行為をしてもいいと(刑法で)規定する。子どもを守る、保護する、という意識が欠けていると思います」

骨子案は今後法務大臣に示され、国会でも審議される。改正された場合、運用での課題はあるのか。

上谷弁護士は「改正直後は多少の混乱や、解釈の揺れなども起こるでしょう。処罰すべき範囲などについて議論を重ねながら、改正刑法に沿った意識が広まってほしいと思います」としている。

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