元ラグビー日本代表で神戸親和女子大教授の平尾剛さんが、秩父宮ラグビー場の移転に反対するオンライン署名を立ち上げた。
平尾さんは、移転計画を「改悪」「スポーツウォッシュ」と批判。その理由を5つ挙げている。
75年の歴史がある秩父宮ラグビー場(東京都港区)は、大阪の花園と並んで「ラグビーの聖地」と呼ばれている。
その秩父宮ラグビー場は、神宮外苑再開発で移転し、屋根付きのスタジアムとして建て替えられる計画になっている。
平尾さんはこの計画を、次の5つの理由から「改悪」と説明する。
1. 屋根が開閉せず、青空の下での試合はできなくなる
2. 人工芝のグラウンドになる
3. 観客席が4割も減り、2万5000人収容→1万5000人に
4. 新施設はもはやラグビー場とはいえない空間になる
5. ここから歴史ある神宮外苑の森が破壊される
平尾さんによると、さまざまな気候条件のもとで行われるラグビーは「天候をどう味方につけるか」を楽しむスポーツでもある。
しかし新しい秩父宮ラグビー場は、開閉しない屋根がついており、天候を楽しむどころか青空も見えない。
また、新たな秩父宮は人工芝になり、選手がヤケド傷を負う可能性もある、と指摘する。
さらに、建て替えにより観客席が4割も削減されて、2万5千人収容から1万5千人になる。
平尾さんはこの点について「ラグビーの普及を考えていく上で、なぜ今のスタジアムよりも規模の小さいスタジアムに建て替えなければならないのか、不思議でなりません」と1月13日に開かれたオンラインセミナー「コモンズとして考える神宮外苑」で懸念を表明している。
「当然、国際マッチのような大きな試合はできないでしょう。今よりも不便になることは火を見るより明らかではないかと思います」
また、新施設はラグビー以外にライブやアイスショーなど、さまざまなイベントができる作りになっているが、そのような施設を「ラグビーの聖地」と呼べるのか、違和感を感じると話す。
そして、この神宮外苑再開発計画では、1000本近い樹木が伐採や衰退の危機にさらされ、その中には神宮外苑のシンボルいちょう並木も含まれる。
平尾さんは「100年の森の伐採は子供たちに誇れる行為なのか」「環境破壊を伴う競技場の新設は、スポーツ界の潮流からもずれている」と指摘する。
平尾さんは、署名を立ち上げた理由について「資本の論理で何もかもが決められていくことへの抵抗がある」とハフポスト日本版の取材で説明した。
「屋根が開閉しないのも人工芝も、多目的に使用するためであり、これはつまり収益を上げるためのものです。収容人数が激減したのも、音楽イベントなどで使用する巨大スクリーンを立てるためで、徹頭徹尾『カネのため』です。ラグビーの試合を行うことが脇に追いやられており、ラグビーというスポーツの価値になんら配慮していない。私財を投じて建てた先人の意志もまた蔑ろになっています」
「そしてこのスタジアムが、樹齢100年の樹木を伐採し、あの美しいいちょう並木を取り壊してまで建てられようとしていることには、異論しかありません。ここでもまた『100年後に自然な森になるように』との先人の思いが踏み躙られています。経済効率性だけを優先して自然や文化が損なわれようとしていることに反対の意を表明したんです」
平尾さんが移転の代わりに求めているのが改修だ。その例として、阪神甲子園球場を挙げている。
秩父宮も歴史ある競技場を改修することで次世代に継承したい、という平尾さん。
13日のオンラインセミナーでは「議論を尽くさずに、このままあっさりと建て替えを見過ごすことは到底できない」「賛同していただける方はぜひ署名をしてほしい」と訴えた。
1月11日に始まった署名には、16日時点で9000人以上が賛同している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
元ラグビー日本代表・平尾剛さんが秩父宮ラグビー場移転に反対。建て替えが「改悪」である5つの理由