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「罪悪感」をカタルシスに。SNSに衝撃を与えた問題作『やすお』は、こうして生まれた。

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吉田博嗣さんの漫画「やすお」より

「ディストピアとはこのことかというような漫画だった…」

「怖いし悲しいしどこかしら感動的でもある」

「読む人によって解釈がまっぷたつに割れる作品」

これらはウェブで無料公開されている漫画『やすお』に関して、SNSに寄せられていると感想だ。2021年3月期にヤングマガジンの月間賞を受賞した32ページの短編だ。5月17日、講談社が運営する「コミックDAYS」に掲載されると、あっという間に反響が広がった。

一人暮らしの愛子の元に届いた「やすお」。家庭内の仕事をする「汎用お手伝いロボットとでもいうような存在」だという。愛子は「やすお」に料理を作らせたり、皿洗いをさせたり、さまざまな仕事を頼むが、思うように動いてくれない。愛子は「やすお」の送り主である姉に電話で相談するが……。という内容だ。

終盤で明かされる設定は、現代社会への警告のようにも見えてくる。ハフポスト日本版は作者の吉田博嗣(よしだ・ひろし)さんに、作品を制作した経緯などを聞いた。

 

■「理不尽なジャッジに晒される暴力的な主人公」にした理由とは?

吉田博嗣さんの漫画「やすお」より

―― 「やすお」の設定に衝撃を受けた…という声もSNS上で広がっていますが、この作品のプロットはどんなところから発案されたのでしょう?

 

この作品の構想段階での一つのキーワードとして「罪悪感」というものを考えていました。現在は、毎日のようにメディアを通じて自分の無力さを刺激されている環境なのでは?ならば、それをカタルシスに導ければ面白いのでは?!という仮説をもとにプロットを考えました。

 

―― 「やすお」では、他者を暴力でコントロールすること、感謝の気持ちをどう伝えるか……など、人間同士のコミュニケーションの問題を扱っているように思えました。そうした意図はありましたか?

 

コミュニケーションの問題を主題にしたつもりはないのですが、ジェンダーやポリティカルコレクトネスをめぐる「男女関係」の描き方、というのは少し考えました。例えば最近は「男女」というものが対立的な立場として認識され、言い争いの火種になっているような状況があるように思います。実際文化の問題とも重なるのでグレーな部分が多く難しいテーマだと思いますが、こうした対立について不毛だなぁと思う議論もあれば、自分自身の感情を逆なでされた経験もあります。

 

このようなテーマが人々の感情をこれほど掻き立てるのは、自分自身が当事者としてなんらかの価値判断を迫られ、それによって自分の知的レベルだとか政治的立場をジャッジされるように感じるからなのでは。もしそうだとすれば不快に思うのは当然のことで、そのことが他人への暴力的な言動に繋がっているところもあるのでは?と思いました。こうした不快感の渦中にあるようなキャラクターとして、理不尽なジャッジに晒される暴力的な主人公を置いた感じです。

 

―― 2020年以降、コロナ禍で密なコミュニケーションが取りづらい状況が続いていますが、そうしたことは、この漫画の制作に関連していますか?

 

直接関係しているかはわかりませんが、ネット上の感情的な議論に触れる時間が増えたかもしれず、そういうところは影響しているのかもしれません。

 

―― 「やすお」は、Twitter上で大きな話題となり、掲載誌の「コミックDAYS」が5月18日にはトレンド入りしました。こうした反響は予測していましたか?

 

全く予想していなかったです!自分としてはかなりマイナーな漫画を描いたつもりで、よくて佳作ぐらいだと思っていました。まさか入選した上にこんなに大勢の人が面白がってくれるとは思いませんでした……!しかし、考えてみればネット炎上などを見ていて溜まった不満から作ったようなふしもあるので、意外と Twitter と相性がよかったのかもしれないぞ、と思いました。色々な方がコメントつきでリツイートしてくれたりして、ありがたいなぁと思います……!

 

 

―― この作品では「人間同士の格差を増やす」ことを目的とする社会が描かれていますが、あえてそうした社会を描いた理由は?

 

「色々な問題を認識してはいるけれど、それを解決する能力は自分にはない」という無力感は、今けっこう共感されるのでは?と思いました。そこで、そういうふつうの人を際立たせるための背景として、実際に広がっている格差を用いた感じです。

 

―― 「雑誌っぽい絵」を意識されたとのことですが、どんなところに気を付けましたか?

 

昨年液晶タブレットを購入して、デジタル作画を練習中です。デジタルなので色々な絵が描けるはずなのですが、今回は紙にGペンで描いたような画面を目指してみました!

 

―― ヤングマガジン月間賞に応募された経緯はどんなものでしたか?

 

DAYS NEO という講談社の漫画投稿サイトに漫画を載せたところ担当さんがつき、「とにかく腕試しで一つ応募してみましょう!」となった感じです。

 

―― 漫画作品を商業誌の紙媒体やデジタル版に掲載するのは今回が初めてでしょうか?これまでどのような場で作品を発表されていましたか?

 

漫画は趣味で昔ちょっと描いていました。その時一度だけウェブ上に掲載されたことはあります。漫画を改めて描こうと思ったのは昨年からで、気持ち的には初掲載という感じがします。

 

―― 今後はどんな作品を描いていきたいですか?

 

できるだけポップでキャッチ―で荒唐無稽で何も考えずに楽しんで読んだあとは笑いながら破り捨てられるような漫画が描きたいですが、今回のような漫画でもウケるなら、もっと意地悪く不快で不快で仕方のないような漫画も描いてみたいと思いました。

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Source: ハフィントンポスト
「罪悪感」をカタルシスに。SNSに衝撃を与えた問題作『やすお』は、こうして生まれた。

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