もっと読みたい>>また一つ、社会は変わった。統一地方選に挑んだ20・30代の女性たちが渡す「次のバトン」とは
政治のジェンダーギャップの解消を目指し、20・30代で女性・Xジェンダー・ノンバイナリーの選挙立候補を支援する「FIFTYS PROJECT」と一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」が8月30日、4月の統一地方選で支援した立候補者たちの体験や声を分析した調査結果を発表した。
「FIFTYS PROJECT」代表の能條桃子さんは、「立候補者たちが経験した困難や、乗り越えることができた成功体験を『集合知』として、次の世代や次の選挙に立候補する人たちのために役立てたいと思って、チキラボに分析を依頼しました」と説明。
「統一地方選の振り返り会に参加した立候補者21人の経験は数としては統計的なデータにはなりませんが、日本社会でこれだけ女性や若い世代の政治家が少ない原因がよく表れていると思います」(能條さん)
統一地方選に挑んだ立候補者たちの体験から見えてきた、政治におけるジェンダー平等の希望と課題とは?
立候補者の多くが「出馬してよかった」
調査・分析を担当した「チキラボ」の荻上チキさんは、テーマについて思い浮かんだことを次々とメモして貼り出し、話し合いやグループ化をして考えをまとめていく「KJ法」を用いたワークショップの分析を解説。「今回の調査でとても印象的だったのは、落選した人も含めて多くの人が『出馬してよかった』と回答した点です」と話した。
「チキラボの仮説では、ネガティブ体験が非常に多く、そのことがメンタルヘルスに悪影響を与えるんじゃないかと考えていました。しかし実際には、出馬経験を通して社会の実態を知ることができただけでなく、同じような社会問題意識を持っている人々と繋がることができ、ネガティブな反応だけでなく、ポジティブな応援もあったと多くの候補者が話していました」(荻上さん)
ネガティブな経験や出来事としては、ハラスメントや立候補によるキャリアの断絶、資金不足などが挙げられた。
例えば「かわいい女の子が政治のこと考えられるんだね」「もっと勉強してからにしたら?」などと声をかけられたり、「女性の地位向上って言っちゃダメ」と“選挙に勝つためのアドバイス”として言われたりすることもあったようだ。
一方でボジティブな経験や出来事としては、家族や友人、地域の人から予想以上の応援があったことや、ボランティアの人から「選挙楽しかったね!」と声をかけられたことなどが挙げられた。FIFTYS PROJECTによって生まれた立候補者同士の横のつながりに救われたと答えた人も多かったという。
「ネガティブな状況は自分たちで変えていきたいのと同時に、出馬することによって『社会は自分たちでも変えられる、その手応えを感じられる』と次世代にも伝えたいし、ともに変える仲間を増やしていきたいと候補者同士で話していたのか、とても印象的でした」(荻上さん)
政治に女性の声を反映させたい人は「いる」
能條さんはFIFTYS PROJECTが支援した立候補者のアンケート結果と、内閣府の調査を比較した結果について説明した。
能條さんがプロジェクトを通じて驚いたのは、「立候補者21人中21人全員が『政治に女性の声を反映させるために立候補した』と答えたこと」だという。
「今の社会や政治の場に女性の声が足りないという問題意識を持っている人はちゃんといるんだと分かりました。『女性政治家の候補者がいない』という人もいるけれど、探せばちゃんといるんです」(能條さん)
また、内閣府の調査では、議員活動や選挙活動中に受けたハラスメントについて、男性の1位は「SNS、メール等による中傷、嫌がらせ」が15.7%、女性の1位は「性的、もしくは暴力的な言葉による嫌がらせ」で26.8%だった。
一方、FIFTYS PROJECTの候補者の1位は「性別に基づく侮蔑的な態度や発言」が71.4%と、数値として大きな差が出た。荻上さんは「ジェンダーに対する意識が高く、ハラスメントであると自覚できる人が多かったからではないか」と分析する。
能條さんは「FIFTYS PROJECTで立候補者をサポートしてわかったのは、例えば政党のトップがジェンダー平等をやると言っていても、地元の組織までその意識が行き渡っているわけではないということ。支援者側、地域も含めて変わっていかないと、なかなかこの壁は高いままだと思います」と課題を指摘した。
一方で希望も見えた。FIFTYS PROJECTの立候補者にはUターン経験者や移住者が多く、21人の平均居住年数は5.1年だった。内閣府の調査では男女ともに平均居住年数は30年以上が最も多く、男性で約83%、女性で約68%と、地域に長く住んでいる人が多数を占めた。
「実際には移住して暮らす人はたくさんいるし、特に女性は結婚して移住するケースもまだ多い。FIFTYS PROJECTの立候補者のように、移住者だからと気負わずに選挙に出た人がいて、実際に政治家になっている人がいること、そして移住者の声が求められていることをぜひ知ってほしいです」(能條さん)
FIFTYS PROJECTの次のアクションは?
FIFTYS PROJECTは2期目の候補者の募集を開始した。応募は10月末までだという。
統一地方選を経て、アップデートする点について能條さんは、「今後は春〜夏など半年に区切って、その期間の選挙に立候補する人たちを支援するスタイルを考えています」と説明した。
「大きく変わるのは、1期目で既に選挙を経験した人たちがたくさんいることです。次の世代、他の地域でも立候補者が増えていくために役に立ちたいと言ってくれている人がたくさんいるので、そういった面で2期目の人にサポートできることが増えるのではないかと思います」(能條さん)
他にも、「FIFTYS PROJECTゼミ」という、未来の候補者を発掘し増やしていく取り組みも企画中とのこと。非営利で候補者から金銭を貰わない形で活動を続けるために、マンスリーサポーターの形での支援も呼びかけた。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「選挙に出てよかった」。統一地方選に挑んだ20・30代の女性たちが、選挙を振り返って見えてきた希望と課題とは?