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結婚するため海外に行く、日本に選択肢がないから「好きな人と、自分が生まれ育った場所で住みたいのに」

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Kanさん

2019年に配信された『クィア・アイ in Japan!』に出演し、性的マイノリティ当事者としてSNSなどでの発信を続ける日本在住のKanさん。 

番組にも出演した遠距離恋愛中のイギリス人パートナーのTomさんと、2021年9月にイギリスで結婚することになった。

新生活を「ものすごく楽しみ」と語る一方で、「日本で結婚する選択肢がなかったことは、悔しい気持ちが大きい」とも明かす。パートナーのTomさんも、選択肢があれば日本での生活を望んでいたという。

日本では、自治体による同性パートナーシップ制度は広がる一方で、同性婚の法制化は実現していない。

「好きな人と一緒に、自分の生まれ育った場所で住みたいだけなのに。『なぜ』という気持ちです」

【関連記事】ずっと生きづらかった。ネトフリ人気番組出演者が「自分を肯定」できるようになるまで

Kanさん

大学在学中にカナダへ留学。イギリスの大学院でジェンダー・セクシュアリティを学ぶ。帰国後は化粧品会社でマーケティング業務を担当。2019年にNetflixの番組『クィア・アイ in Japan!』エピソード2に主人公として出演。性的マイノリティ当事者としてSNSでの発信や講演などに取り組む。

Instagram @kanyonce  Twitter @kankanyonce  

 

「日本での結婚を、検討すらできなかったのは寂しい」

KanさんとパートナーのTomさん

《Kanさんは、イギリスの大学院に留学していた2016年に交際を始めたTomさんと結婚するため、2021年夏にロンドンに移住する。2人は、2018年から遠距離恋愛を続けてきた。》

新型コロナの影響で約1年半会えてないんです。この間は、毎週のビデオ通話を、1回も休むことなく続けてきました。

Tomは、ハードルをハードルと思わないような考えを持ちつつ、自分以外の人の苦しみにも敏感な優しい人です。そういう人と一緒に暮らせることが、ものすごく楽しみです。

ただ、新生活の場所をイギリスにしたのは、現在ある選択肢の中から「ベター」なものを選んだ結果にすぎません。

 

 「今ある選択肢」から主体的に選んだ結果。でも、思うことはある。

《日本では2015年以降、カップルであることを自治体が「証明」する同性パートナーシップ制度が広まっている。しかしこの制度は、国が法律で認める結婚とは異なる。法律婚では得られる保障などが確保されないのが現状だ》

Tomは日本での生活を経験してみたいという気持ちが強く、イギリスで勤めている会社では日本駐在の選択肢もあります。

でも、Tomが日本に来ても、日本で法律婚はできない。法的な根拠がないことは、互いの身に何かがあった時のリスクになりえます。

イギリスでの結婚は、今ある選択肢の中から、2人で主体的に選んだ結果ではあります。とはいえ、家族や友人の近くに住めたかもしれない…今の仕事を続けられたかもしれない…という思いはある。日本での結婚を、検討すらできなかったのは寂しいですよね。

 

同性婚の実現を「許可」しない政治への悲しさ

日本は、暮らしていて「なんだかな」と思うことはありますが、「いいな」と思うところもたくさんある。日本のことを好きじゃなかったら、「なんで選択肢がないんだろう」なんて思わないです。

なので、日本に選択肢がないということについては、悔しいという気持ちが一番強いです。好きな人と、自分が生まれ育った場所で住みたいだけなのに。僕が何をしたって言うんでしょうか。

法律婚の実現は、やろうと思えば「すぐ」にでもできることだと思います。それを「許可」しない、状況を変えようとしない政治家がいることに、悲しさを感じます。

婚姻の平等は、1日でも早く実現しないといけない。人は、1日ずつ老いていきます。今、生きている人の選択肢が狭められているんです。パートナーと生きることを諦める人も多くいると思います。自分自身も、1日も早い婚姻の平等の実現に貢献するために、自分のやれることはやりたいと思っています。

 

「まずは理解」という発言の「特権」に気づいて

「LGBT理解増進」法案が自民党内部で反対され、法案をめぐる議論の中で議員が差別発言をしたことに対し、自民党本部前では抗議が続いた

《性的少数者をめぐる「理解増進」法案は、超党派で合意したものの、自民党内部の反対を受け、国会に提出されなかった。この法案をめぐる議論の中では、自民議員が「『種の保存』にあらがってやっている感じだ」などと差別発言をしたことも報道されている

国民を幸せにし、差別をなくすために働くべき国会議員が差別発言をすることがまず許されないことです。

そして、こういった発言が与える影響について、僕は本当に心配しています。国を代表する人たちが差別発言をすることで、それを聞いた一般の方の中には「政治家が言うなら、性的少数者は否定されるべき存在ってことなんだ」と考える人も出てくるかもしれません。

また、「理解をする・しない」ということを選べる立場にあること自体の「特権」にも気づいて欲しい。当事者たちは現在、苦しんでいるんです。「まずは理解」という発言を政治家がしたり、立ち位置を取ったりすることは、それ自体が、当事者に対する「加害」にもなりうるんです。

 

自分も「特権」に自覚的でありたい。個人で何ができるか?

僕が発信をする背景には、自分が持っている「特権」にも自覚的でありたいという思いがあります。

英語を学び、留学できる環境にあったので、パートナーに出会えた。そのパートナーがたまたま同性婚のできるイギリスの人だから、結婚ができる。そう考えると、自分も「特権」を持っている。ならば、不平等の解消に向けて、自分から動いていかないといけないと思うんです。

決して、個人みんながそうすべきだと言いたいわけではないです。「社会を変えよう!」と声を上げることは、自分の心と身体が健康であってこそできることだと思います。まずは自分の「安全なスペース」を確保した上で、「余裕」の部分でやっていくのが大切だと思っています。

その上で何をするかは、色んな方法があると思いますが、同性婚実現に関しては、法律に関わることなので、投票権があるならば投票に行くことが大切だと思います。投票するためには、学び、考えることが必要なので、自分の考えを整理するためにも、周りの人と話してみるということは大切だと思います。

 

前向きな変化の一方で、「気になっていること」がある。

「同性婚を認めないのは憲法違反」として札幌地裁は2021年3月、日本で初めて違憲判決を下した

《札幌地裁は2021年3月、同性同士の結婚を認めない民法などの規定は違憲と判断した。また、企業や自治体などでの変化が見られる。一方で、Kanさんは社会の雰囲気で心配していることもあると語る》

札幌地裁判決は画期的で、自分のアイデンティティとか、パートナーとの関係が祝福されているように感じました。

ずっと、自分のアイデンティティが否定されることが「前提」の日本社会で、「差別的なことを言われたらどうしよう」「あそこに行くと、同性愛嫌悪発言を耳にしてしまいそうだから近付きたくないな」とか「防御線」を張って生きてきました。なので今回も、「否定的な判決が出るんじゃないか」と構えていたので、驚きが大きかったですね。ニュースで知って、仕事中なのにウルウルしてしまいました。

変化が起きているのは、今までずっと活動し続けてくださった方々がいるからです。その積み重ねを、みんなの力で大きくできているのだと感じています。

一方で、国会議員の差別発言問題などに加えて、社会の雰囲気についても、少し気になっていることもあります。

 

「渋谷に行けば結婚できるじゃん」「性別なんてないよね!」人の言葉から感じたこと

LGBTQについての認知が広まる中で、「みんな違っていいよね!」「性別なんてないよね!」といった言葉を耳にします。悪意がないケースが多いのは分かっていますが、そういった言葉が、今ある差別を覆い隠してしまうこともあると思います。

また、「楽しげな場所」には企業などが集まるのに、デモや署名などの場面になると、参加する個人や企業が減ってしまうというのも課題だと感じています。

自分の結婚にあたり、「結婚するためにイギリスに行く」と報告したら、「渋谷に行けば結婚できるじゃん」と言われたことが、すでに数回ありました。日本では同性婚ができないということが、実はそこまで知られていないのだと実感しています。

 

誰もが、自分の人生を主体的に生きられるように。

なので、こうやって取材を受けていることも含めて、自分の発信が、婚姻の平等の1日でも早い実現に貢献できたらと思っています。

僕が目指しているのは、誰もが自分の人生を、自分らしく、主体的に生きられることなんです。結婚に関して言えば、結婚する・しないの選択に、社会からの圧力があってはいけないと思う。そして、当事者たちが結婚したい場合には、同性同士でもできるようになってほしいし、名字も選択できるようになってほしい。

そういう風に、その人の選択がより尊重される社会・仕組みに変わっていって欲しいと思っています。そのために、イギリスに行っても、日本の変化に向けた取り組みに参画していきます。「僕の一歩」を発信することで、誰かが「自分も一歩を踏み出してみよう」と思ってくれたら嬉しいです。

(湊彬子 @minato_a1 ・坪池順  @juntsuboike /ハフポスト日本版)

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Source: ハフィントンポスト
結婚するため海外に行く、日本に選択肢がないから「好きな人と、自分が生まれ育った場所で住みたいのに」

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