女子児童・生徒への研究からゾッとする現実が見えてきた。戦々恐々とするが、希望は捨てていない

若い女性たちが直面する課題について研究し、世の中に対して声をあげることに、これまで20年間のキャリアを捧げてきた。「Ruling Our eXperiences」(ROX)という団体を立ち上げ、アメリカで暮らす5万人超の少女たちの生活について調査してきた。オハイオ州立大学で教授をしていた2006年にスタートしたこの調査によって、アメリカで少女時代を過ごす子どもたちには多くのしがらみがあることが明るみになった。

実態調査に乗り出すきっかけは、10代になったばかりの私自身の経験からだ。同級生に比べてずいぶん早く思春期が訪れた私は、友だちと一緒にいると自分がまるで巨人のように感じられた。

想像してみてほしい。18歳のような背格好の12歳児を。クラスメートよりも大きく、どんどん変化していく身体に戸惑うばかりだった。「女性の強さ=女性らしさの欠如」とされることが珍しくなかった時代に、私は強さとガッシリした体型と闘争心を持ち合わせていた。そのせいでまわりからチラチラ見られたり、こそこそ何かを言われたり、いつも居心地の悪さを感じていた。女の子たちといても、男の子たちといてもしっくりこなかった。自分でさえ自分自身にしっくりきていなかった。

筆者のLisa Hinkelman博士

体重や身体的な見た目を気にしてばかりいた私は、ガッシリした体型を誇りに思う気持ちと、世間一般の期待にそうような体型になりたいと思う気持ちの間で悶々としていた。

なぜそう感じるようになってしまったんだろうと思い返してみると、「うるさい」「主張しすぎ」と言われ続けてきたことに思い当たった。女の子たるものこうあるべき、という周囲の期待にそえない子どもだったのだ。自分に正直にあるべきだと思う一方、社会が作った型にはまりたいと願う気持ちもあり、心の中は常にせめぎ合いだった。

驚くべきことは、少女たちが抱える問題が今日にいたっても変わっていないということだ。小中高生(5〜12年生)の女子児童・生徒1万7000人超を含む大規模調査「The Girls’ Index」の結果を見ると、回答者の67%が「相手に気に入られるため、思っていることや異論は口にしない」と答えた。

ちょっと考えてみてもらいたい。相手に受け入れられるために、3分の2もの少女たちが黙することを選んでいるのだ。「主張が強い」「偉そう」と言われ続けてきた身としては、調和し静かに目立つなという外圧があることは理解できる。しかし、「少女たちが沈黙を迫られることで、この国は一体何を失うのだろうか」と考えずにはいられない。

少女たちが教室で口を開かない選択をするたびに、革新的なアイデアを共有するのではなく押し黙るたびに、他人の期待にそうために自分を矮小化するたびに、私たちは大切なものを失っていく。少女たちが持つユニークな視点、創造性、課題に対する解決策…。かつてない困難に直面する世界を、世界の人口の半分を成している女性による貢献なしに乗り越えていけるのだろうか。

幼いころから沈黙させることの影響は、学校を出た後の生活にも及ぶ。大人の女性として生きるなかで、役員室で、政治の現場で、ありとあらゆるところに影響する。

リーダーシップにおける性差の主な要因にもなっている。半数超の少女たちが主導権を握り、「偉そう」というレッテルを貼られることを恐れている。リーダーシップを取ること、自分の意見を表明すること、反対意見を述べることをためらうことが、職場や社会全体におけるジェンダー平等に広範囲にわたる影響を及ぼすのだ。

私たちの研究はほかにも厳しい結果を突きつける。2017年以降、「自信がある」と答えた少女の割合は68%から55%にまで落ち込んでいる。「常に悲しみや絶望を感じる」と回答したのは53%にものぼる。「同い年の女子たちはあるがままの自分に満足せず、他の誰かになりたいと思っている」(7年生)という声も聞かれた。このコメントを読み、昔の自分の声を聞くようでひりひりするような共感を覚えた。

回答者の3分の2が、ボディイメージが自信に悪影響を及ぼしていると考えていることも明らかになった。3分の2もの少女たちが!

また、6割近くの高校生がやりたい仕事に就くには自分は賢さが足りないと感じている。可能性が放置され、自己不信のせいでやりたい仕事に踏み出さない状況を考えると、胸が痛む。 

ソーシャルメディアは助けにならない。自分の少女時代を振り返ると、不安になる場はほとんどが学校や時折開かれたお泊まり会だった。現代はどうだろうか。5、6年生の95%がSNSを利用し、そのうちの41%が1日あたり6時間超も画面をスクロールしている。つまり、6時間もを誰かと自分を比較することに費やしているのだ。誰かによってあつらわれた完璧さにとらわれることであり、自己不信につながる可能性があるのだ。

幼い娘を育てる母親である私にとって、これらの統計は差し迫った意味合いを帯びる。娘は自信を持っている子だ。この子のひらめきや自由闊達さを見ると、どうやってあるがままで生きられるように守っていけばいいのだろうと考える。私が感じてきた抑圧を経験させずに育てるにはどうしたらいいのか。研究やキャリアとしての情熱だけではなく、非常に個人的な悩みにもなっている。

【画像】娘の手を取り、笑顔を見せる筆者

課題は山積だし、個人的な悩みにもなっているし、統計を見ると戦々恐々とするが、希望は捨てていない。

支援する環境やメンターシップには少女たちが自信を築く糧になる大きな力があり、実際のその場面を目撃しているからだ。

私自身の駆け出しのころについて少し触れると、女性たちから批判や排除を受け、傷つけられた。少女時代の闘争心や不安が大人になれば自動的に消え去るものではないと突きつけられた。しかし、私の可能性を見出し、育ててくれた女性たちもいた。メンターや同僚、友人たちの応援に背中を押してもらいながら、できないと思ったことにも挑戦し、少女たちのために意義ある変化をもたらしたいという私の原動力になっている。

このような応援の仕組みは、すべての少女のもとに行き渡るべきものだ。研究によってこんなこともわかっている。自分に自信がある女の子たちは、学校に自分の居場所があると感じていて、ありのままの自分を見せられると思っている。クラスメートやまわりの応援してくれる大人たちと密接な関係を築けていると考えており、そういう子どもは思っていることを口にし、組織を引っ張っていくポジションを志している。 

不安にとらわれ、まわりより背が大きくて、自我が強かったかつての自分に言ってあげたい。「そのままであなたは素敵。強さはあなたの素晴らしい資質。あなたの考えや意見は大切で、価値がある」。このメッセージを自分の娘を含めたすべての少女たちに植え込むべく、私は日々取り組んでいる。

道のりはたやすくないが、やるべきことははっきりしている。やるべきは意味なく称賛したり、困難から守ってあげることではない。少女たちが冒険し、失敗し、学び、そして成長できる環境を整えること。外見や成績よりも、困難からの回復力や批判的思考、自己主張することがいかに大切かを教えていくことだ。

自信がある少女たちを育てるのと同時に、まわりの社会もまた彼女たちの声、意見、リーダーシップを評価する世界にしていかねばならない。そして、少女たちにはこう伝え続けねばならない。「主張しすぎることはないし、いろんな意見を持つことは欠点ではなく強さだ」、「あなたのアイデアには意義があり、反論はよりよい解決策を導くこともある。あなたのユニークな物の見方はとても価値ある」と。

少女たちは自己肯定感が低いまま大きくなってはいけない。自分の能力を信じ、自分自身の未来を形づくる権利があると感じて育ってほしい。自信と能力を兼ね備え、世界を引っ張っていく準備ができている女性が当たり前という世代を養成する時はきている。

「未来は女性のもの」と言われている。それは、早咲きの子、遅咲きの子、運動が得意な子、芸術肌の子、寡黙な子、おしゃべりな子、すべての子が自身にどれほどの力があるかを理解し、その力を恐れずに使える未来でなければならない。私が少女時代に願った未来の姿であり、その未来をつくるためにこの20年を研究に費やしてきた。今まさに育ちの過程にある我が娘を含めたすべての少女たちのために築きたい未来なのだ。

みんなで力を合わせれば、押し寄せてくる自己不信の危機を跳ね返すことができる。少女たちの期待がかかっている。失望はさせられない。

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筆者のLisa Hinkelman博士はアメリカで著名な研究家。オハイオ州立大学の教授として少女と大人への教育についての研究を始めた。その後、自信に満ちた少女たちの世代づくりに取り組むNPO「Ruling Our eXperiences」(ROX)を立ち上げ、これまで20年以上にわたって研究を続けてきた。著書にベストセラー「Girls Without Limits: Helping Girls Succeed in Relationships, Academics, Careers and Life」がある。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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女子児童・生徒への研究からゾッとする現実が見えてきた。戦々恐々とするが、希望は捨てていない

Lisa Hinkelman