みなさん、お久しぶりです!LiLiCoです。
連載「もっとホンネで話そう。私たちのこと」では頻繁に、私の故郷であるスウェーデンと日本の比較だったり、スウェーデンと日本の良いところをお話したりしてきました。日々の生活や考え方、エコへの意識、家族や性教育の話…本当にみなさんが興味を持ってくださったからこそ、いろんな角度からお話させていただくことができました。
そしてなんと、私の芸能生活35周年の年である今年、日本政府観光局(JNTO)の北欧初の事務所が3月4日にストックホルムにオープンしました。JNTOでは訪日外国人旅行者の誘致のため、主に現地のツアー会社などと組み、世界中の人々に日本の魅力を発信しています!
私は期待を胸に、ストックホルムの素晴らしい立地にあるオフィスにお邪魔させていただき、ここで働く若林香名さんと石井悠さんに、スウェーデンで充実した日々を過ごすための心構えや仕事環境について取材して来ました。
私がスウェーデンに住んでいるときに感じたことは、「スウェーデンでは家族もたまに会社に来るのが普通」ということです。私もよくお父さんの会社に行って、廊下でキャスター付きの椅子に乗ってはしゃいでいました。お父さんの秘書の膝に小さな私が乗っている写真もあります。パートナーの働くところを見ないと不安になりますよね。
それから数十年が経ち、今はもっと進化したスウェーデンに出会うことができました。ストレスも溜まりがちな今の社会で、快適な環境で働けるようにどう工夫しているのか?忙しいなかでもオフィスに緑が多かったり、カフェテリアがあったり、屋外のスペースがあったり。リモートワークも増えた時代だからこそ、個室スペースで打ち合わせをする人も多く、働き方改革は時間のことだけではなく、環境も大事なのだと感じました。
身体を動かさないと脳も動かないということで、卓球スペースも!心をリラックスさせることも大切ですよね。
こうしたスペースは同じビルにある会社の社員とも出会いの場になり、上手くいけば何か新しい企画が生まれることもあるそうです。
一番驚いたのはキッチンかな。温めるだけの電子レンジではなく、料理が出来ちゃいます。オシャレな調味料なども揃えてありました。
夢のような仕事環境、日本も見習うべきものがたくさんありそうですね。
▼LiLiCoによる、JNTOストックホルム事務所で働く若林香名さんと石井悠さんへのインタビューに続きます
LiLiCo:日本からスウェーデンに来て、生活環境がガラッと変わったと思います。生活はいかがですか?
石井さん(以下、敬称略):日頃の生活に対する考え方、仕事への向き合い方、日照時間が変わる各季節の過ごし方など、違いを挙げればきりがないですが、日本とは良い意味で全く違う世界で、勉強になる部分がたくさんあります。
赴任して1年4カ月となりますが、北欧の冬の暗さにはまだ慣れていません。夜中の0時ごろまで日が出ている夏の季節と正反対に、午後2時半には暗くなり始めるこの生活で、体内時計を維持することにまだまだ悪戦苦闘しております(笑)。一方で、非常にきれいな街並みですし、スウェーデンの方々は優しく、他の欧州に比べても治安が良いことからも、この街で過ごすことにはとても満足しています。
若林さん(同): 以前赴任していたソウルやシドニーと比べると、日本食材が少ないと感じてしまいますが、お米や基本的な調味料は入手できるので、特にこだわりがなければ不自由はありません。住居探しについては、日系の不動産会社はないので、オンライン上で大家さんと直接交渉しました。内見もオンラインのみで賃貸物件は非常に限られているため、即決する必要もありました。
生活に慣れるまではスウェーデン語にも苦労しましたね。英語ができればなんとかなるものの、スーパーの表示や役所などの書類はスウェーデン語で、グーグル翻訳もあまり機能せず、牛乳も種類が多すぎて選ぶことができませんでした(笑)。
LiLiCo:おふたりともご家族と一緒に引っ越してきたんですよね。ご家族の反応は?
石井:私たち赴任者はSFIという移民のためのスウェーデン語学学校に無料で通うことができるのですが、妻が毎日通っていることから、家に引きこもることもなく、友人も作ることができ、とても楽しく日々を過ごしています。私たち外国人にもそういった国のサービスを無料で提供いただけることには本当に感謝しています。
若林:子どもに優しい国と聞いていましたが、子ども3人(17歳、11歳、7歳)を連れて来て、それを実感しています。公園には遊具が溢れており、医療費、学費が無料であること以外にも、社会みんなで子どもを育てようとする仕組みは、日本としても参考になるところが多いと感じます。子どもたちも、のびのびとした生活を楽しんでいます。
LiLiCo:生活だけではなく、仕事に対する考え方も日本とスウェーデンでは大きく異なると思います。
若林:スウェーデン人は「まじめでシャイ」と言われていて、日本人に似ているところも多いと思いますが、例えば、役職や年齢を超えてフラットな関係性であったり、業務でも非常に合理的で効率的な判断をしたり、かつ長期休みを取得したりするなど、日本とは大きく異なるところもあります。日本との調整をする立場として、その両国の違いをそれぞれに説明して理解してもらう必要があります。
たとえば、日本から届くメールは、文字量も多く、解読するのに時間がかかることが多いのですが、北欧の関係者とのコミュニケーションでは、長文のメールや添付ファイルが好まれないため、できるだけ内容をシンプルにし、受け取る側が負担に思わないように気を付けています。夕方になると帰宅される方が多いので、外部とのコンタクトは15時くらいまでに終わるよう心がけています。
LiLiCo:今日は私もオフィスにお邪魔しています。とても開放的で素晴らしいオフィスですが、働く環境はどうですか?
石井・若林:シェアオフィスという形態は無駄がなく、少人数での事務所運営には最適ですね。街中もオフィスもデザインが非常に美しく、注意書きのような張り紙が少ないのも景観を守るために大事なことだと気付かされます。
LiLiCo:キッチンも充実していて驚きました。どのように利用していますか?
石井・若林:キッチンスペースはちょっとしたイベントを開催する際にも使用できますし、日々のランチでも色々なスペースで食事できるので、職員の気分転換にも役立っています。スウェーデンのFIKA(甘い物とコーヒーを一緒に楽しむスウェーデンの文化で、仕事の合間などにも行う)も、ここで体験できます。
LiLiCo:このビル内のほかの会社さんと、共有スペースで会ってお話することも?
石井・若林:はい。たまたま、現地のマーケティング会社などが入居していて、観光分野における市場データに関して商談を行ったことがあります。直接コンタクトできるのも、まさにシェアスペースならではのメリットだと思っています。
LiLiCo:おふたりはスウェーデンで暮らしながら、北欧唯一のJNTO事務所として、北欧のみなさんに日本について発信しています。具体的に、どんな仕事をしているのでしょうか?
石井・若林:主な事業パートナーは現地の旅行会社やメディアとなり、日々ネットワーク構築に励んでいます。こちらの旅行会社に日本のツアーを造成いただくための情報提供を行い、メディアの方へは、日本に関する記事を執筆いただけるよう取材先との調整などを支援しています。JNTO独自に広告事業やセミナー開催なども行い、日本の観光魅力の情報発信を行っています。日本側の自治体、宿泊・観光施設などのインバウンド関係者とも日々コミュニケーションをとっています。
LiLiCo:おふたり以外にも、スウェーデン人の職員さんがいらっしゃいます。一緒に働いてみて、いかがですか?
石井:10月から一緒に働き始めたばかりですが、現地の考え方や目線を持った方からの発信は、現地コミュニティにより深く馴染むことができると考えています。先日行ったネットワークイベントでも、その職員から日本に関するプレゼンを行ったところ大好評で、今後もさらに交流を広げ、日本の情報発信に貢献してくれると、期待が高まりました。
若林:日本への留学経験もある方で、以前から友達や家族に日本の魅力を伝えていたそうです。日本から来た私たちに、FIKAなどの日本とは異なる慣習を教えてくれたり、時事問題について日本とスウェーデンの違いや共通点を話し合ったり、一緒に働いていて楽しいです。
LiLiCo:3月に事務所がオープンしてから半年以上が経った今、感じている課題はなんですか?
石井:まだまだ現地に日本の情報が少ないことです。たとえば、日本食への関心を高めるにも、現地でどれだけ日本食が根付いているか、日本食レストラン等に馴染みがあるかなどが重要です。まだまだ日本の味が「SUSHI」「RAMEN」に偏っていることは否めず、日本には食事をはじめとしてもっと沢山の魅力があることをまずは認知いただくことが、今の私たちの大きなミッションだと思っています。街を眺めていても、日本に関する広告が流れることも少ないので、まずは日本に触れる機会を増やすことに注力しています。
LiLiCo:私もJNTOのサイトで、日本に関して北欧言語で発信するブログを連載しており、今後もっと日本とスウェーデンの架け橋になるような活動をしていきたいと思っています。スウェーデンを含むスカンディナヴィア諸国の人々は、日本に対してどんな印象があるのでしょう?
石井・若林:日本は歴史や文化が非常に発達した国で独自の文化がある、「先進性と伝統を兼ね揃えた綺麗な国」という印象を持っている人が多いようです。一生に一度は行ってみたい国だと言われることも多々あるので、このようなプラスな印象を、実際の訪日に繋げることができるはずだと確信しています。
LiLiCo:具体的にどんな文化が人気ですか?
石井・若林:日本のポップカルチャーが大好き、自分の子どもたちが行きたいとずっと言っているなど、比較的若い方々から日本のアニメ・マンガなどをきっかけに日本が好きになったというお声を多数いただいています。まだまだ情報が少ない中でこれだけの人気なので、これからどう広げていくことができるのか、私たちも本当に楽しみです。
(取材・文=LiLiCo、撮影=黒澤義教、編集=若田悠希)
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スウェーデンでは長文メールは好かれない? LiLiCoが現地オフィスを取材「働き方改革は時間だけではなく環境も」