2024年も残りわずかとなり、新年が近づいてきました。師走の何かと忙しい日々ですが、そのさなかの12月13日を「正月事始め」と呼び、新年の準備を整える日としている地域も多いようです。
この日が正月事始めと定められた由来や、具体的にどのような「行事」がなされているのかなどについて、平安時代初期に建立された東京の神社の宮司さんに教えていただきました。
正月事始めには、どんな由来があるのでしょうか。
「正月事始めは新しい年に、福をもたらすために下って来られる『年神様』をお迎えするため、清掃などを行って支度を整える日とされています。ほぼ全国的に神社や寺院、各家庭などで広く行われています。
この日を正月迎え、ことはじめ、ええことはじめ、まつならしなどと呼ぶ地域もあります」(宮司さん)
なぜ12月13日が正月事始めの日と定められたのでしょうか。
「古代中国で暦(こよみ)の作成にも用いられた『二十八宿(にじゅうはっしゅく)』のうち、28日ごとに訪れる吉日である『鬼宿日(きしゅくび/きしゅくにち)』だったことが由来のようです。
鬼宿日は、鬼が宿(自分の住み家)に留まって外出しない日を意味し、婚礼以外のすべての行事を始めるのに良いとされていました。そのため、12月の鬼宿日に新年の準備を開始するという習わしが起こりました。
江戸時代から定着し、1872(明治5)年に旧暦が新暦(太陽暦)に切り替わったのちも、『正月事始めは12月13日』の伝統は残り、現在に至っています。
新年の支度は12月13日から始め、遅くとも28日までには終えることとされています。29日を避けるのは29の読みが『二重苦』に通じます。また、31日に支度をすることは『一夜飾り』と言って急ごしらえで真心に欠け、年神様に失礼にあたるとされています」(宮司さん)
正月事始めでは、具体的にどのような行事がなされるのでしょうか。
「最もなじみ深いのは『煤(すす)払い』です。年に一度、多くは12月13日に各地の神社や寺院などで一斉に煤払いを行う様子が、新聞やニュース番組で報道されています。神棚や仏壇の煤払いを行い、併せて大掃除に取り掛かるご家庭も多いと思います。
神道の煤払いの手順は、あらかじめ刈っておいた笹竹の先に葉や藁(わら)を付けた用具を作り、まず神棚、続いて荒神様(こうじんさま)とも呼ばれる竈神(かまどがみ)がおわす台所を念入りに、その後に各部屋を掃除します。
この用具を『清め竹』と呼ぶ地域もあるように、煤払いには掃除だけでなく、お清めの意味もあるのです。
煤払いを終えた夜に『煤払い祝い』と称して、もちや団子などを食べる風習もあります。使い終えた清め竹をすぐに処分せず、小正月の左義長(さぎちょう=1月15日前後に行われる火祭り)の『お焚きあげ』で燃やす地域もあります」(宮司さん)
煤払い以外に行われる行事もありますか。
「正月飾りの門松用の松をこの日に山から伐(き)り出す『松迎え』行事や、年神様を山へ迎えに行くために人々が山へ登って祭礼を行っている地域があります。山へ入るのは、雑煮やおせち料理用の薪(まき)を集めに行く目的でもなされています。
松迎えの役を新年が生まれ年の干支(えと)と同じ『年男』が務め、恵方(えほう=新年の徳をつかさどる神様がおわす方角、年により異なる)の山に登ったり、正月事始めの諸行事を年男のみで務めたりする地域もあるようです。
もともと年男とは生まれ年の干支にかかわらず、正月事始めを取り仕切る役の男性を意味する言葉で、主に家長が務めたともいわれています」(宮司さん)
古くからの由来と深い意味をもっていた12月13日の正月事始め。師走の忙しさにかまけて先送りせず、この日から取り掛かって、福をもたらす年神様はもちろん自分や家族も、心豊かに新年を迎えましょう。
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知ってた?12月13日は「正月事始め」。何をする日?新年の支度を整え始める吉日