空き家は増えているのに、人口の3割以上が「住宅弱者」?住まい確保の支援団体や大家が語り合った【LIFULL】

「住宅弱者」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

年齢や国籍、性別、経済状況などの理由で「不動産契約を断られやすい」人たちを指す言葉だ。住宅弱者は全人口の3割以上いるとも言われており、当事者にとって住まい確保のハードルが高い状況は現在も続いている。

LIFULLが運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULLHOME’S」は11月上旬、「居住支援でつながろう会」をLIFULL本社にて開催。同社は、住宅弱者の物件探しに力を入れる不動産会社を検索できるウェブサイト「LIFULLHOME’S FRIENDLY DOOR」などを通して、住まい確保の問題に注力している。

第1回目の本イベントでは「家族に頼れない若者」「在留資格が不安定な状況にある難民」「外国籍の方」の住まい確保をテーマに設定。関東で居住支援に取り組む企業や団体、不動産会社、大家が一堂に会し、課題解決に向けて議論を交わした。

なぜ、空き家が増えているのに「住まい確保」が難しいのか

同社が2022年に実施した調査では、住宅弱者の60.4%が住まい探しにおいて、自身の社会的立場を理由に不便を感じたり、困ったりした経験があると回答。

日本では人口減少や少子化などの影響から、住居世帯のない賃貸住宅は増加傾向にあるが、入居者トラブルや滞納のリスクを懸念して貸し渋りするオーナーも多い。また、不動産会社はオーナーと交渉する手間や難しさを感じており、こうした構造が住宅弱者の増加の一因になっているという。

「LIFULL HOME’S FRIENDLY DOOR」事業責任者の龔軼群(キョウ イグン)さんは、住宅弱者の住まい確保をサポートするためには「オーナーと不動産会社の双方が前向きに取り組む必要があります」と話す。

龔軼群さん

厚生労働省によれば、保護者がいなかったり、虐待を受けていたりする「要保護児童」の国内人口は、2020年時点で4万2千人。こうした「家族に頼れない若者」は、学校や社会に馴染めずに孤立するケースもあり、成人後も金銭的な理由で住まい確保が難しくなる傾向にあるという。

また同調査では、外国籍の人のうち40.5%が「内見や契約手続きで差別を受けた・不平等を感じた」と回答。また、他の入居者からの差別を受けた経験(35.6%)や、オーナーまたは不動産会社から退去を迫られた経験(28.8%)も多いことが示された。

課題解決に取り組む4団体の代表者が登壇

登壇者紹介

イベントでは、難民や若者支援に取り組む4法人の代表者が登壇。住まい確保をサポートするそれぞれの活動について紹介した。

稲葉剛さんが代表理事を務める「つくろい東京ファンド」では、「住まいは基本的人権」を理念として掲げ、中野区と練馬区を中心に58室のシェルターを運営。2014年の創立以来、外国籍の人や単身高齢者など、170人以上が利用している。また、多様な背景を持つ入居者をつなぐコミュニティづくりや、外国人の入居者の行政手続き、医療機関の受診同行なども行っている。

山中真奈さんが代表取締役を務める「シングルズキッズ」 では、「シングルキッズたちを住環境から楽しくHAPPYに」をモットーに、東京、千葉、神奈川に8棟42室のシェアハウスを運営。また、世田谷区では「シングルマザーシェアハウス」を運営し、ひとり親と子どもを、シニアと地域でサポートする仕組みを確立した。

荻野政男さんが常務理事及びあんしん居住研究会長を務める「日本賃貸住宅管理協会」では、「部屋探しガイドブック」などの資料整備により、外国籍の人が安心して住まい確保をするためのサポートをしてきた。また、地域社会にスムーズに溶け込み安心して過ごせる環境を提供するため、言語サポートや多文化共生の推進、法的保護の強化、家主への補助金などの多岐にわたる取り組みを実施している。

吉中由紀さんが理事長を務める「くらしサポート・ウィズ」では、住居支援事業や暮らしの相談事業、若者支援事業などを実施。暮らしの困りごとや悩みを相談する窓口として、さまざまな事業に取り組んでいる。また、吉中さんは、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)が改正されたことについても言及した。

「住宅弱者」は、それぞれが多様な背景を持つ「個人」

イベント後半のワークショップでは「若者と難民を含む外国籍の居住支援」をテーマに、参加者自らが話し合うディスカッションを実施。登壇者も交えて、問題解決に向けて言葉を交わした。

ディスカッションの様子

ディスカッションでは、空き家にはニーズがある一方で、情報がまばらで十分に活用できていない地域が多い現状について話題に挙がった。不動産会社を営む参加者からは「税理士法人ネットワークと連携できれば、不動産を手放したい人の情報も集まりそうですね」というアイデアが寄せられた。

また、多文化共生に関する課題について、難民支援グループに所属する参加者からは「日本は衛生意識が高い傾向にあるので、ゴミ捨て問題でトラブルになることが多いです」「自国の郷土料理を作る際に油をたくさん使う人も多いので、油の処理におすすめの商品を紹介しています」といった発言もあった。これに対し、LIFULL HOME’Sの龔さんは「大家さんが一般的な日本のお掃除方法を丁寧に教えている住居もあり、良い方法だなと思いました」とコメントした。

行政面における課題については「在留資格が出る前にお金が尽きてしまう人が多いです」「RHQ(難民事業本部)からの支援金の給付が継続的に受けられる見通しがつかず、大家さんが滞納のリスクを懸念して貸せない場合もあります」などという声も寄せられ、参加者同士で「そんなこともあるんですね」と学び合う場面が見受けられた。

龔さんは「外国籍の方のニーズは特に増えています。人が増えればそこに対するソリューションも必ずあるはずなので、ビジネスチャンスと捉えて、全ての立場の人にメリットのある最適解を、横のつながりを持って、引き続き探していければと思います」とイベントを締め括った。

一口に「住宅弱者」と言っても、そこには様々な背景を持つ「個人」がいる。それぞれのニーズに合った住まいの確保を推進するために、より多様なステークホルダーが連携して、仕組みを共創していくことが今後も求められそうだ。

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