少子化が進行し、核家族世帯が増加している現代。
子育てによる身体的負担や経済的負担に加え、希薄になりつつある親同士の交流の場や、地域コミュニティの不足が「子育ての孤立感」に繋がっている。
「子どもの夜泣きで近所に迷惑をかけていないかな…。少しの間だけ子どもの面倒を見てほしいけど、誰に頼めばいいんだろう…。そういった悩みや知識、そして子育ての喜びを共有できる仲間たちに囲まれた暮らしは、心の大きな支えになります」
そう話すのは、旭化成ホームズ LONGLIFE 総合研究所所長の河合慎一郎さんだ。
「子育てコミュニティが自然に生まれる」住宅を目指して、旭化成ホームズ・旭化成不動産レジデンスが手掛けたのが「へーベルメゾン BORIKI」。関東・関西で35施設にまで広がったこの住宅シリーズは10月16日、「2024年度グッドデザイン賞(公的財団法人日本デザイン復興会主催)」を受賞した。
いったいどんな仕組みが「子育てコミュニティ」を生むのだろうか?
筆者は「へーベルメゾン BORIKI しゃくじいこうえん」(東京都練馬区下石神井)で開かれた取材会に参加した。
「BORIKI」を訪れたのは10月末。敷地内は、居住者による手作りのハロウィーンデコレーションで彩られ、中庭から子どもたちの声が聞こえてきた。
この住宅には、自然な交流を創出する空間設計と、入居前後のサポート・サービスで、子育て世帯同士の繋がりを促進するというコンセプトに共感した人のみが入居可能だ。
しかしそれ以外は、年齢や性別、国籍、事実婚と法律婚などを問わず、多様な形の子育て世帯が入居できるという。
実際にBORIKIに住んでいるのは、どのような人たちなのだろうか。旭化成ホームズが2022年7月に実施したWEBによる入居者調査(アンケート回答者:101世帯135人 居住1年以上の住居者)によると、子どもの学齢では未就学児以下が62.5%、共働きの割合が56.0%。
また、「この地域に住んだことがない」という回答が全体の65.0%だったといい、コンセプトに惹かれて他の地域から移り住む人も多いことがわかる。
狙いとしている居住者同士の交流としては「敷地内で立ち話をする」「家に住人を招く、または住人の家に行く」「一緒に食事やお茶へ行く」「家族ぐるみで一緒に遠出する」などが、いずれも非常に活発に行われていることがわかったという。
さらに、より踏み込んだ助け合いとして「子どもの世話をする」「育児の相談」「子どもをみてあげる・みてもらう(1~2時間)」「子どもを預かる・預かってもらう(半日以上)」と回答した割合が高く、住民同士が支え合いながら子育てしているという結果になったという。
住居者満足度は90%以上と高く、「満足できていない」「まったく満足できていない」という回答は0%だったというから驚きだ。
また、ハード面でも工夫がされている。敷地内の中庭には絵本の共有箱やベンチ、砂場などがあり、子どもが遊ぶ様子をリビングから見守ることができる設計になっている。小さい子の寝室にしやすい畳の部屋があるのも特徴だ。
居住者にも聞いた。
敷地内では、イベントが頻繁に開かれているそうで、ある居住者は「子どものお楽しみになっていることはもちろん、季節感を育くむことにも役立っています」と話す。
パートナーの転勤で知らない土地に住むことになったという方も、安心して子育てができているという。
また、地域で子育てをするといういまでは少なくなったやり取りを通じて、他の家の子ども褒めたり注意したりすることもあるそう。「親以外の大人とのコミュニケーションも自然にできています」と居住者のひとりは話す。
取材を通して「子育てによる孤立やストレスは、必ずしも個人や家族だけで解決しなくてもいいんだ」とハッとした筆者は、子どもたちに「さよなら」を言って「へーベルメゾン BORIKI しゃくじいこうえん」を後にした。
「住居」という角度からライフステージを彩る「BORIKI」は、子育ての障壁が増えつつある現代の日本において、ひとつのロールモデルとなっていくかもしれない。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
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