法律上同性カップルの結婚を認めないのは違憲とした東京高裁、判決の画期的な5つのポイントとは

東京高裁前で違憲判決を喜ぶ原告と弁護団(2024年10月30日)

「画期的かつ歴史的な判決だ」

法律上同性カップルの結婚が認められないのは違憲だとして性的マイノリティ当事者が国を訴えていた裁判で、東京高裁(谷口園恵裁判長)は10月30日、憲法14条1項と憲法24条2項に違反とする判決を言い渡した。

この「結婚の自由をすべての人に」訴訟は全国5カ所で計6件の裁判が行われており、今回の判決で8件のうち7件で違憲もしくは違憲状態と判断されたことになる。

また、今回の東京高裁判決では、これまでにない判断や国会への注文もあった。原告側が歴史的だと高く評価した判決の5つのポイントをまとめた。

1. 結婚の目的は子を産み育てることではない

この裁判では、「結婚の目的」が争点の一つだった。

国は、結婚の目的は「子を産み育てる男女の関係に法的な保護を与えること」であり、「自然生殖の可能性がない同性カップルは保護の対象にならない」と主張してきた。

これに対し、東京高裁は「生殖能力や子を持つ意志」は結婚するために必要な要件になっていないと指摘。

結婚の目的は子を産み育てることではなく、婚姻する2人の「人的結合に法的な保護を与えること」だとした。

その上で、結婚して配偶者としての法的な関係が作られることを「安定して充実した社会生活を送る基盤」と認定し、「個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益」として十分に尊重されるべきだとした。

判決後に記者会見した原告と弁護団(2024年10月30日)

2.同性カップルも子どもを育てられるし、育てている

東京高裁は、子を産み育てることについて、結婚に不可欠な目的ではないものの、次の世代を作るという重要な社会的機能を果たしてきたとしている。

その上で、それが法律上同性カップルの結婚を認めない理由にはならないとした。

根拠の1つとして挙げたのが、同性カップルの結婚を認めても、異性カップルの法的保護が減って、子を産み育てることの支障になるとは考えられない点だ。

また、子どもをもうける方法は「自然生殖」だけではなく、里親や養子縁組もあり、親の一方のみと血縁関係がある親子もいるとも指摘。

男女間に限らず、法律上同性カップルも里親や片親のみと血縁のある家族など、さまざまな形で子どもを育てており、次世代を育てるという社会的な機能を同じように果たしているとした。

3「両性」「夫婦」という言葉は壁にならない

国は、結婚の自由を保障する憲法24条に「両性」や「夫婦」という男女を想起する言葉が使われてるため、憲法は同性カップルの結婚を想定していないとも主張してきた。

しかし東京高裁は、憲法が作られた時には「結婚は男女間のもの」という社会通念があったので、同性婚は議論もされなかったと説明。

「両性」「夫婦」という言葉に「同性カップルに法的な保護を与えなくてもいい」という趣旨はなく、この文言を理由に結婚を認めないのは、憲法14条の平等原則に違反しうるとした。

4. 賛成多数に着目

厚労省の機関である国立社会保障・人口問題研究所が2023年に発表した調査で、同性婚に賛成すると回答した人は75.6%だった。

しかし、これまでいくつか判決で、反対者が一定数いることを考慮すると、同性カップルの結婚を認めるべきだという憲法上の要請や社会的承認があるとはいえないという判断が示された。

一方、東京高裁が注目したのは、少数の反対者ではなく多数の賛成者だ。

賛成の割合が世論調査で大幅に増加していること、パートナーシップ制度の急速な広がり、性的指向で差別してはいけないという国内外での共通理解を挙げて、同性間の結婚について「社会的受容度は相当程度高まっている」とした。 

5. 法整備について国会に注文をつける

今回の判決の大きな特徴の一つが、結婚の平等実現のための法律の作り方に具体的に踏み込んだ点だ。

これまで複数の裁判所が、法律上同性カップルが結婚できるようにするためには、今ある婚姻制度を同性カップルも利用できるようにする方法の他に、別制度を設けるやり方もあると判断している。

東京高裁も別制度を否定しなかったものの、制度を別にする場合は、「憲法13条が保障する個人の尊重と、14条が定める法の下の平等に反しない範囲でという制約がある」と釘を刺した。

その具体例として配偶者の相続権を挙げており、結婚相手の性別や生殖可能性の有無が影響を及ぼさない権利を異性カップルとは違う内容にすれば、憲法14条1項違反になる可能性があるとしている。

原告代理人の寺原真希子弁護士はこの点について「ほとんどの婚姻の規定がこの範囲に当てはまるので、男女間の結婚とほとんど変えることは許されないと言っているのに等しいと思います」と判決後の記者会見で述べた。

また、東京高裁の判決が何度も「配偶者」という言葉を使っているのも、これまでになかった特徴だという。

寺原氏は「これまでの判決では、配偶者ではなく家族やパートナーという言葉が使われています。一般的に結婚した相手を意味する配偶者という言葉を使っている点で、結婚と同じ制度を作るべきといっているように解釈できます」とハフポスト日本版の取材に述べた。

同性パートナーを「配偶者」と表現したことに対して、原告からも喜びの声が上がった。

原告の小川葉子さんは、パートナーの大江千束さんとの関係について「これまで配偶者ではなく家族という言葉で置き換えをしていましたが、配偶者と捉えてもいいのかなと希望を持てました」と記者会見で述べた。 

(左から)原告の大江千束さん、小川葉子さん(2024年10月30日)

画期的かつ歴史的

東京高裁は、こういった判断から、法律上同性カップルの結婚が認められないのは、性的指向による差別的取り扱いで、憲法24条1項、24条2項違反という結論を導き出した。

結婚の平等をめぐる一連の裁判では、札幌高裁でも憲法24条1項、2項、14条1項違反という判決が言い渡されている。

寺原氏は「画期的かつ歴史的と言えると思います」と記者会見で述べた。

「2つの高裁が明確に、憲法に違反しており、国会で速やかに法整備をしなければいけないと判断しました」

「さらに今回は、司法が国会での法整備についても、配偶者としての地位を確立し、不合理な差異を設けてはいけないと具体的な注文をつけたことが大きなポイントだと思います」

一方、東京高裁は一連の裁判で初めて、憲法24条1項について違憲/合憲の判断をしなかった。

寺原氏はこの点について、「判決は、婚姻制度は一義的に決まっているものではなく、時代や社会によって変えていかなくてはいけないものだとしている」と説明した。

「結婚が認められていないのは差別だということが、憲法14条の平等原則や、憲法13条の個人の尊重、憲法24条2項の個人の尊厳から十分に導き出せるので、24条1項について説明する必要がなかったと受け止めています」

時間がない問題

東京高裁は、判決の中で7人の原告一人一人の名前を挙げて、日々直面してきた困難を認定している点でも特徴的だ。

パートナーの西川麻実さんと、それぞれが産んだ3人の子どもを一緒に育ててきた原告の小野春さんは、「自然生殖は重要だが、それだけじゃなくて色々な家族がいるんだということを言ってくれたのが本当に嬉しかった」と記者会見で述べた。

一方、この判決を聞くことができなかった原告もいる。

東京1次裁判の原告だった佐藤郁夫さんは、パートナーと結婚したいという望みを叶えられないまま2021年に亡くなった。

記者会見の席には佐藤さんの写真も置かれ、小野さんが「裁判長はちゃんと違憲と言ってくれましたよ」と声をかけた。

記者会見で話す原告の小野春さん。横には佐藤郁夫さんの写真が置かれた(2024年10月30日)

小川葉子さんは「私たちも高齢になり、もう時間がありません。私は持病で病院に通うことも多く、そんな時に法的な下支えがほしいとすごく思っています」と、1日も早い結婚の平等実現を求めた。

原告代理人の上杉崇子弁護士も「立法府は、法整備の手続きや議論について進めてほしい。これは時間がない問題なのです。毎日、同性カップルとその家族の尊厳や人権が侵害されている状態です」と述べた。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、12月には福岡高裁で判決が言い渡される。

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法律上同性カップルの結婚を認めないのは違憲とした東京高裁、判決の画期的な5つのポイントとは

Satoko Yasuda