神宮外苑で樹木の伐採始まる。「市民が植えた木を切らないで」抗議の声上がる

伐採が始まった神宮第2球場跡

再開発計画が進められている東京・明治神宮外苑で10月28日、3メートルを超える高木の伐採が始まった。

事業者は9月9日に樹木保全に関する見直し案を発表し、10月に東京都の環境アセス審議会に提出。28日に伐採に着手した形だ。今回は、神宮第2球場の解体工事に伴う一部の樹木が伐採・移植される。

神宮外苑は100年前に市民から献木や献金を受け、ボランティアによって作られた公園だ。大正〜昭和〜平成〜令和と時代を超えて誰もが憩える公共空地を提供してきた。

建物は高さが制限されていて、都心で豊かな緑と広い空を楽しめる場所でもある。

しかし計画では多くの樹木を伐採して神宮球場と秩父宮ラグビー場を再開発し、複数の高層ビルを建てる。

計画に対し、市民からの見直しを求める声が上がっており、署名活動の賛同者数は23万人を超える。

28日も伐採現場の近くに市民が集まり「伐採反対」「市民が植えた木を切らないで」「緑を子ども達に残したい」など声を上げた。

伐採に反対するため神宮外苑に集まった市民

見直しを求めているのは、市民だけではない。

再開発計画に対し、ユネスコの世界遺産に関する諮問委員会であるイコモスは2023年にヘリテージアラートを発出。2024年には、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が「人権に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘している。

他にも、「国際影響評価学会(IAIA)」日本支部や、日本弁護士連合会など、国内外の専門家や機関が、工事中止を求める勧告を出している。

専門家らは事業者との対話の場を求めてきたが、これまでに実現していない。また工事を認可した東京都も、環境アセスメントのやり直しや計画の見直しを事業者に求めていない。

チェーンソーの音が響く中、木が伐採されていく様子を見つめる市民

この再開発計画の問題を指摘してきた日本イコモス国内委員会の石川幹子氏は28日、伐採工事の現場で事業者の三井不動産に説明を求めたものの、対話は行われなかった。

石川氏は、「もはや、東京都に任せられる問題ではありません。こういう進め方は、事業者に名を連ねている企業にとっても国際評価を落とすことになるでしょう」と記者団の取材に述べた。

また、神宮外苑の価値について「国民が一緒になって作った公園は他にはない」と指摘した。

「大正から今まで受け継がれ、未来世代につないでいく。みんなで作った社会の富であり、私たちの世代が食い潰していいものではないんです。なぜ今ここに、高層ビルを建てなければいけないのでしょうか。神宮外苑は社会の財産であり、持続可能なものとして受け継いでいかなければなりません」

石川幹子氏(左から2番目)は早朝から伐採現場を訪れ、事業者との対話を求めた

10/28から始まる神宮外苑樹木伐採に反対する有志の会」も28日に、事業者の三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本スポーツ振興センター宛の要望書を発表。

神宮外苑は、「東京都心部の貴重な緑の環境のひとつ」で、「世界にも稀有な歴史的な場所だ」として、樹木伐採の見直しを要望した。

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Satoko Yasuda