世界で最も権威ある写真大会の一つ「世界報道写真コンテスト」に選ばれた作品を展示する「世界報道写真展」が11月、京都市で開催される。日本国内での開催は3年ぶり。
世界報道写真コンテストは、オランダのアムステルダムに本部がある世界報道写真財団が運営している。コンテストは1955年に始まり、2024年に67回目を迎えた。発表によると、今年は約4000人から計約6万点の応募があったという。
11月30日から京都市内で開催される展示会には、入賞者約30人の作品が展示される。
コンテストの大賞に当たる「今年の写真」(World Press Photo of the Year)には、パレスチナ人のフォトジャーナリスト、モハメド・サレムさんが撮影した「めいの遺体を抱きしめるパレスチナ人女性」が選ばれた。
ロイター通信などによると、写真は2023年10月17日、ガザ南部ハンユニスのナセル病院で撮影された。病院の遺体安置所で床にしゃがみ込んだ女性が、白い布にくるまれた小さな遺体を抱きしめ、号泣している。
女性はイナス・アブ・マアマルさん。イスラエル軍のミサイルが自宅を直撃し、当時5歳のめいのサリーさんが殺された。
撮影者のサレムさんは、2003年からロイター通信で働いている。イスラエルの包囲によってオランダで開かれた授賞式に出席できず、ビデオメッセージを寄せたという。
ビデオの中で、サレムさんはガザで多数のジャーナリストが殺害されたことや、食糧や水、医療品が入手困難な状況に触れ、「あなたが見る写真が、この戦争を止めるための圧力になることを願っています」と語りかけた。
イスラエル軍の攻撃により、ガザで取材活動をする多くのジャーナリストたちが死亡している。
ジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、2023年10月からの約1年間で、少なくとも128人のジャーナリストと報道関係者が殺害された。2023年10月7日のハマスによる2人のイスラエル人ジャーナリストの殺害を除き、全てイスラエル軍による殺害だと説明している。
今年10月には、19歳のパレスチナ人ジャーナリストのハッサン・ハマドさんが、ガザ北部のジャバリア難民キャンプにある自宅にいたところ、イスラエル軍の空爆を受けて死亡した。
ハマドさんは、イスラエル当局から「イスラエルについての嘘を広め続けるなら、次はお前と家族を狙う。これが最後の警告だ」というWhatsAppのメッセージを受け、ガザでの撮影をやめるよう脅迫されていたと報じられている。
写真展ではパレスチナ自治区ガザ地区のほか、ロシアによるウクライナ侵攻や、ミャンマーの軍事政権の弾圧によって人々の命が奪われている現状も伝える。
このほか、アマゾンの干ばつやカナダの森林火災など、各地で発生している気候変動による環境問題に焦点を当てた作品も公開されるという。
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写真展の概要は以下の通り。
名称:世界報道写真展2024京都
会期:2024年11月30日(土)〜12月29日(日)
休館日:12月15日(日)
開館時間:午前10時〜午後6時
主催:世界報道写真展2024京都実行委員会(京都新聞、世界報道写真財団)
入場料:無料
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「戦争止める圧力に」世界報道写真展、日本で3年ぶりに開催へ。ガザで子どもの遺体抱く女性の写真も 京都