【関連記事】永住許可の取り消し制度は「排外主義の権化」。弁護士や永住者らが緊急集会で訴えたこと
税金を滞納するなどした場合に、外国人の永住許可を取り消せる規定を盛り込んだ入管難民法の改正案(6月14日に参院本会議で可決、成立)について、国連の人種差別撤廃委員会は日本政府に対し、「(市民ではない人たちにネガティブに作用する)不均衡な影響を懸念する」などとして、改正法の見直しや廃止措置などに関する回答を求める書簡を送付した。6月25日付。
書簡は、同委員会の「早期警戒・緊急措置手続き」(early warning and urgent action procedure)に基づいて出されたもの。この手続きに基づく措置には「決議」「声明」「書簡」がある。
法案には、永住許可を得ている外国人が故意に税を納付しなかったり、拘禁刑に処されたりした場合、永住資格を取り消すとの内容が盛り込まれた。在留カードの常時携帯など入管法上の義務を遵守しない場合も、取り消しの対象となる。
従来の制度でも、永住者が虚偽の申請をしたり、1年を超える懲役や禁錮刑に処され強制退去となったりした場合などは、永住資格を失う。改正案は、そうした許可取り消しの対象を拡大するものだ。
入管庁の統計によると、永住者は約89万人(2023年末時点)。国会審議では、永住者全体における税などの未納件数や割合を示す調査結果を入管庁が示さず、野党議員から「立法事実が確認できない」などと批判の声が上がっていた。
法案は6月14日の参院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主など各党の賛成多数で可決、成立した。立憲民主、共産、れいわ新選組、社民の各党は反対した。
国連人種差別撤廃委員会は、日本政府に対して送付した書簡で、今回の法改正をめぐって、市民ではない人たちの権利を擁護する多くの団体から「永住者に悪影響を及ぼすことへの懸念の声が上がっている」と報告。その上で、「人種差別撤廃条約のもとで保護される権利に及ぼし得る不均衡な影響を懸念する」と述べている。
さらに、「市民ではない人に対する差別に関する一般的勧告」を踏まえ、改正法が市民ではない人に差別的な影響を及ぼさないことや、国外退去命令への異議申し立てなどの救済措置を実際に利用できるようにすることなどを日本政府に求めた。
同委員会は、入管法改正案の見直しや廃止措置の情報を含む回答を、8月2日までに提出するよう求めた。書簡の末尾では、提出期限を過ぎた第12回から第14回までの定期報告書の提出も要請した。
国連人種差別撤廃委員会の「早期警戒・緊急措置手続き」に基づく書簡は、2012年にも2度、日本政府に送付された。日本政府はいずれの書簡に対してもその後回答を提出している。
書簡は国連の公式サイトに掲載されている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
永住許可取り消し制度、国連の委員会が緊急の書簡「不均衡な影響を懸念」。日本政府に見直しや廃止措置への回答求める