子どもからカミングアウトされたら、親はどう声をかけるべき? 当事者の集まりや支援団体、相談窓口は

子どもから、性的指向や性自認についてカミングアウトされたら、保護者はどう反応し、どのように声をかけるべきなのでしょうか。

カミングアウトについての気になる質問を、LGBTの子ども・若者の居場所を作る一般社団法人「にじーず」代表の遠藤まめたさんに聞きました。

LGBTの子ども・若者の居場所を作る一般社団法人「にじーず」代表の遠藤まめたさん

LGBT」:性自認が女性で同性を好きになるレズビアン(L)、性自認が男性で同性を好きになるゲイ(G)、性的指向が男女どちらにも向くバイセクシュアル(B)、出生時に割り当てられた性別と性自認が異なるトランスジェンダー(T)の頭文字をとった言葉

性自認」:自分の性別をどのように認識しているかということ

性的指向」:恋愛感情や性的関心がどんな人に向くか向かないかということ

親に打ち明けるまでには相当な覚悟。子どものカミングアウト、親の適切な対応は

ー「カミングアウト」とは、LGBTなどの性的マイノリティであることや、あるいは「そうかもしれないと思っている」ということを、周りに話すことを指しますよね。

子どもからカミングアウトされたら、どう声をかけるのが良いのでしょうか。避けるべき発言や対応も教えてください。

多くの子どもにとって、最もカミングアウトするのが難しい相手が自分の親です。それは、最も拒絶されたくない相手が親だからです。

友達にカミングアウトするのとは違って、否定されたときのショックも、受け入れてくれた時の喜びや安心感も、家族の場合には特に大きいものです。

子どもは安易な気持ちで打ち明けているわけではないこと、話すまでには覚悟が必要だったかもしれないことを想像して、まずは「そうなんだね」と話を受け止めてあげましょう。

家族の受容がLGBT当事者のメンタルヘルスに良い影響を与えること(鬱や自殺企図、自殺未遂、物質乱用の割合が低下すること)を示す調査結果もあります。

もし、子どもの話す言葉をそのまま受け止めることができない、自分のなかで衝撃が大きすぎて、怒りや悲しみ、混乱などが溢れ出てしまいそうなときには、「そんなのは気のせいだよ」「幼いからそう思うだけで、大人になったら変わるよ」などと否定的な言葉をぶつけるのではなく、親御さんの相談できるグループや電話相談など第三者の力を借りてみましょう。

また、本人の許可がないのに周囲に勝手に「うちの子からカミングアウトをされた」などと話してしまうこと(アウティング)は避けましょう。

他の人に話す必要があると考える時には「こういう理由で、あなたのことをAさんに相談したいんだけどあなたはどう思う」などと子どもの意見を聞いてみましょう。

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カミングアウト後のサポートは

ーカミングアウトされた後、家族の他のメンバーへのカミングアウトのサポート、もしくはせずに秘密にしておくなどの対応について、親はどう動くのが良いでしょうか。

まずは、子どもの希望を聞きましょう。家族全員に知ってほしいと考えている場合もあれば、「おばあちゃんだけは差別的な発言をしているから、伝えないでほしい」など、言いづらい家族メンバーがいる場合もあります。

また、伝え方についても2人きりでいる時に、自分で言いたいのか、その相手に言う場面で親に立ち会ってほしいのか、それとも本人がいないところで伝えても良いのか、希望を聞くと良いでしょう。

トランスジェンダーで、服装や髪型、名前の呼ばれ方が変わっていく場合、秘密にしてほしいと本人が思っても、変化について周囲が疑問を持つことがあります。「最近、女の子みたいな(あるいは男の子みたいな)見た目になったね」などと言われたらどう答えるのかなど、子どもと話してみるのもいいかもしれません。

ーカミングアウト後、学校生活などでのサポートは、どのように子どもの意向を聞くのがよいでしょうか。

ちょっとした愚痴などを子どもがこぼせるような関わり方ができると良いでしょう。

特に困りごとはなくサポートの必要がない場合もありますが、性別違和のある子どもの多くは、性別でなんでも分けられがちな学校生活の中で、大小なりとも困りごとやモヤモヤを抱えがちです。

「女子スラックスが履きたいのではなく、男子の制服がいい」とか「下の名前で呼ばれる英語の授業がいや」「ひとりで着替えたい」など思っていても、子どもはなかなか言い出せない場合もあります。

実際にはそのようなことはないのですが、カミングアウトしないと困りごとには対処してもらえないと考えていたり、1人にカミングアウトしたら全員に知られてしまうことになると考えていたりする場合もあり、なかなか援助を求めにくいと子どもが感じている場合もあります。

子どもの視点からはすぐに解決できそうに思えないことでも、まずは愚痴でも良いから話せる場所を作ることで、つらい気持ちが和らいだり、解決の糸口が見つかるかもしれません。

家族には話しにくい場合もあるかもしれないので、子どもが安心して話せる相手が複数いることが望ましいでしょう。

ー子どものカミングアウトを受けて、育て方や離婚、ひとり親家庭であったことなど、家庭環境などが影響したのではと悩む保護者も少なくないといいます。

子どもの性的指向や性自認のあり方は、育て方や家庭環境とは無関係です。

また、妊娠中のストレスによって子どもがLGBTになるなどと書かれている本なども時折ありますが、根拠は不明です。たくさんの研究がなされてきましたが現時点で性的指向や性自認の決定因子について、科学的に解明されているものはありません。

ーカミングアウトがない場合でも、親が『自分の子どもはトランスジェンダーかもしれない』と感じた場合、どのように接するべきですか。

ある子どもがトランスジェンダーかどうかは、第三者が憶測することはできません。

成長するにつれて、非典型的な性別の振る舞いや性別違和の訴えが減っていく子どももいれば、持続する子どももいます。

未就学児でも、「自分の性別は〇〇で、出生時に割り当てられた性別は間違っている」と主張する子もいます。または、幼い頃にはそこまではっきりしておらず、思春期になってから、あるいは成人以降に自覚する人もいます。

いずれの場合にも、トランスジェンダーであるかないかに関わらず、その子が自分らしく過ごせるような子育てができると良いでしょう。

男児のものでも、女児のものでも、お子さんが好きなものをなるべく選んであげてください。最も避けたいのは、その子だけが、いつも自分がほしいものが否定されているという状況です。

自分は大切にされているんだと感じられて、自己肯定感を育めるような環境で見守っていくのが良いでしょう。

当事者の子どもや保護者の集まりや相談先、支援団体は

ー子どものカミングアウトを受け止めることが難しい場合、親としてどうすべきですか。相談先などはありますか。

同僚からカミングアウトされる場合などに比べ、子どもからのカミングアウトは親にとってはより強い感情をもたらします。

子どもを受け入れたい、サポートしたい気持ちと、戸惑う気持ちの両方をいだいて葛藤することは親御さんの間でよく見られます。どちらの感情も、これまでお子さんと接してこられた経験の中では、湧き上がるのが当然の感情だったのでしょう。

親御さんが利用できる電話相談やカウンセリングサービス、親御さんどうしのサポートグループもあります。1人きりで、強烈な気持ちの揺れや将来への不安などに対処する必要はありません。また受け入れられない自分はダメな親だと罪悪感を抱く方もおられますが、そのような感情や経験も含めてお話しできる安全な場所をぜひ探してみてください。

親御さんの中には、子どもが健やかに楽しくこれからの人生を過ごせるのか、仕事が見つかるのか、子どもがこの先も生きていてくれるのかなど、不安を覚える人もいるでしょう。あるいは、子どもをとにかく守らなくてはいけないというプレッシャーを感じているかもしれません。

そのような不安やプレッシャーはすぐに解消されるものではなく「きちんと産んであげられなかった」などの自責の念にかられる方もおられますが、幸せに生きている大人のトランスジェンダーもたくさんいることは忘れないでいてください。

ー子どもが希望する場合、LGBTQ+やそうかもしれない当事者の集まりはありますか。また、子どもがLGBTQ+の保護者の集まりや相談窓口などもありますか。

お子さんの中には「自分と同じような友達と話してみたい」「他の当事者の話が聞いてみたい」と考えてLGBTQ+のグループに参加したいと考える人もいます。

子ども・若者が参加しやすいよう準備されたイベントや、親御さんも参加できるグループなど、日本各地でさまざまな企画がされています。お住まいのエリアの近くで参加できるところがあるかお子さんと一緒に探してみるのも良いでしょう。

例えば、私が運営している一般社団法人にじーずは、10代から23歳までのLGBTやそうかもしれない人が対象で、当事者の子ども・若者のみが参加できるグループです。

ゲームなどで話したり、絵を書いたり、お話をしたり、学校の休み時間のような雰囲気で子どもたちは過ごします。全国10都市近くで開催されており、子どもとの安全な関わりに関する研修を受けたスタッフがファシリテーションを行います。

また、13歳以上であればスマホやPC経由で、メタバース上での居場所「バーチャルにじーず」にも参加いただけます。

メタバースの居場所は匿名性を担保したまま、地域問わずどこからでもご参加いただけるので、利用のハードルが低いと感じる方もおられるようです。

他にも都内で「にじっこという、15歳以下のLGBTやそうかもしれないお子さんや家族のグループがあります。こちらは、ご家族同士での分かち合いができて、学校での配慮やどこで水着を買うかといった話など情報交換もできます。

全国のLGBTの子ども若者支援団体の情報は、よければこちらも参考にしてみてください。

家族のサポートグループはオンラインで開催しているところもあります。

LGBTについて相談できる電話相談窓口も昨今は充実しています。一覧を認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」さんが作成しているのでご利用ください。

また、LINE相談も最近は充実しています。にじーずのサイトでも一覧をまとめています。当事者だけでなく、ご家族の方も使えるところが多いのでぜひご活用ください。

<取材・文=冨田すみれ子>

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Sumireko Tomita