知ってる?地球温暖化がもたらす影響。異常気象は「人災」

2024/05/26 05:10 ウェザーニュース

近年、「異常気象」という言葉を頻繁に聞くようになりました。特に去年(2023年)はWMO(世界気象機関)が「世界の平均気温が観測史上、最も高かった」と発表したほどの暑さで、世界中で異常気象が確認されました。

では、この異常気象は天災なのか、あるいは、人災なのか。気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の意見を交えて紹介します。

Q1/異常気象は人災って、本当?

◆A/猛暑、豪雨、強い台風、干ばつ、山火事など、多くの気象災害が人間活動によって激甚化していると考えられます。

「異常気象」は、気象庁によれば、原則として「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」と定義されており、基本的には「気象が平均的状態から大きく偏(かたよ)った状態」のことです。

「異常気象は、起こることが信じられないような異変ではなく、たまにしか起こらないけれども、昔からたまには起こっていた気象です。ただ、以前よりも極端な異常気象は起こりやすくなっています。

異常気象は主に大気や海などの不規則な自然の変動によっても引き起こされますが、それだけでなく、人間活動も大いに関係しているのです」(江守さん)

▼人間活動が地球温暖化の主な原因であることに「疑う余地がない」

人間活動とは、文字どおり、人間の活動のことで、人が地球上でおこなっている活動全般をさします。

住宅やビルを建てること、自動車や電車や飛行機に乗ること、冷蔵庫や冷暖房や照明器具を使うこと、お風呂に入ること、料理をすること、ゴミを処分することなど、これらはすべて人間活動です。

これらの活動の大部分は、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やすことによって得られるエネルギーを使っておこなわれてきました。しかし、その際に二酸化炭素が発生しています。この二酸化炭素が、温室効果ガスとして地球温暖化の主な原因になっているのです。

「年によって、非常に暑い夏もあれば、それほど暑くない夏もありますよね。2000年代に入ったころ、世界の平均気温がしばらくあまり上がらない時期がありました。そうすると、『地球温暖化は止まった』と主張する人の声が大きくなります。

でも、2016年になると、地球温暖化の傾向は顕著になり、去年(2023年)に至っては、世界的に記録的な暑さに見舞われました」(江守さん)

WMO(世界気象機関)は2023年がこれまでの記録に大きな差をつけて観測史上、最も高温な年であると発表。2023年の平均気温は、1850~1900年の平均より1.45℃高く、早くもパリ協定(2015年採択)の1.5℃目標に迫る勢いです。

これらのことから何が起こっていると考えられるのでしょうか。江守さんは次のように話します。

「人間活動によって、地球のベースとなる気温が上がっていると考えられます。

2001年に出たIPCCの第3次報告書には『人間活動が温暖化の主な原因である可能性が高い』と書かれていました。それが2007年の第4次報告書では『可能性が非常に高い』、さらに2013年の第5次報告書では『可能性が極めて高い』になり、2021年に出た第6次報告書では『疑う余地がない』になりました。

地球温暖化によってベースの気温の上昇傾向はずっと続いているのですが、そこに自然の変動が重なっているので、変動の下振れが重なると上がっていないように見える、上振れが重なるとまた急に上がる、ということを繰り返しているのです。

これが、ここ数十年ずっと起きてきたことで、地球温暖化を止めないかぎり、これから先もずっと続きます」(江守さん)

▼温暖化によって、どんなことが起こっているの?

こうした地球温暖化の影響は、世界のさまざまなところに出ています。こうした地球温暖化の影響は、世界のさまざまなところに出ています。

まず思い浮かぶのは、猛暑。そして豪雨、台風です。

去年(2023年)の世界の平均気温は観測史上、最も高くなり、「うだるような暑さの日々」を多くの人が実感しています。

「ある年の日本の夏が暑いかどうかは、太平洋高気圧の勢力などの天候パターンに左右され、それは年によって不規則に変わります。しかし、地球温暖化でベースの気温が上がっていることによって、暑いパターンの年が来たときに、これまでになかったような記録的な高温になってしまうのです」(江守さん)

日本国内の豪雨も、この10数年間ほど、全国のあちこちで起こっています。2018年の西日本豪雨、2017年の九州北部豪雨、2015年の関東・東北豪雨、2012年の九州北部豪雨など……。

どうして豪雨が頻発するようになったのでしょうか。

「気温が1℃上がると、大気中の水蒸気量が7%ほど増えると考えられます。単純に考えると、雨量も7%増えます。条件によっては、雨が周りの水蒸気を集めてきて、雨量がもっと増える可能性もあります。

台風も、水蒸気が多いほど、水蒸気をエネルギー源にして、強く発達します。海水温の高いところを通って、勢力を強めながら日本に接近して、勢力が衰えずに上陸することも増えてくるかもしれません」(江守さん)

世界的にはほかにも、干ばつ、山火事、水不足、農作物への影響など、地球温暖化によって激甚化したと考えられる異常気象による多くの被害が出ています。最近では、この5月にもブラジルで史上最悪といわれる洪水が発生しました。

その大きな原因の一つに人間活動があることを、私たちは知っておいたほうがよいでしょう。一人一人が気候変動問題に関心を持ち続けることが大切だと、江守さんは話します。
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監修/江守正多
東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)

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