モロッコやポルトガル、スペインなどジブラルタル海峡近海で、シャチがヨットに損傷を与えるニュースが相次いでいる。
ハフポストを含むメディアは、この行動を「攻撃」という言葉で表現してきた。
しかし非営利団体「シャチ行動研究所」のモニカ・ウィーランド・シールズ所長は、この表現は誤解を招くとMSNBCへの寄稿で主張している。
「攻撃と呼ばれる行動の動画を見ると、私にはまったく違うものが見えます」
「シャチは船に激突したり、バラバラにしたりはしていません。これはシャチがよくとる別の行動、“遊び”のように見えます」
シャチがヨットに損傷を与える問題は、2020年から相次いで報告されている。2024年5月にも、シャチの群れがモロッコ沖で約15メートルのヨットの船体に激突し、舵を破損させた。乗っていた2人は救助されたものの、ヨットは沈没した。
ニューヨーク・タイムズによると、近年この地域でシャチがボートを沈没させたのは5件目で、死者は出ていないものの、他にも数十件の被害が発生している。
多くのケースで、シャチの群れは船の舵を損傷させている。シールズ氏は、「シャチの視点からすれば、舵に注目するのは驚きではない」とも説明している。
「舵は動きますし、人間が舵を制御しようとする時には抵抗の意思が示されます。シャチにとって、悪意を持って攻撃しているというよりは、綱引きのようなものなのでしょう」
シールズ氏はシャチは「娯楽と遊びに対するユニークな能力」を備えているとも説明している。
シャチは社会性の高い生き物であることで知られており、群れの中で、新しい行動や流行が広がることもある。
たとえば1987年には、アメリカ・ワシントン州近海で暮らすシャチの群れが、死んだサケを帽子のように頭にかぶせるようになった。その行動は突然始まり、あっという間に終わったという。
シールズ氏以外にも、「遊び」説を支持するシャチ専門家はいる。
シャチ研究保護団体「ワイルド・オルカ」科学ディレクターのデボラ・ガイルズ博士は2023年、シャチの行動について「おそらく遊びであり、社会的な行動です」とヴァイスのインタビューで述べている。
一方で、生物学者のアルフレド・ロペス・フェルナンデス氏は2022年、ヨットに傷つけられた「ホワイト・グラディス」と呼ばれるメスのシャチが、自己防衛から他のボートを攻撃するようになり、それが広まったのでないかという説を発表した。
この主張はソーシャルメディアで拡散し、人類に反旗を翻す「チーム・シャチ」を応援する声も投稿された。
シールズ氏はホワイト・グラディス説を支持していないものの、なぜ多くの人が「シャチの反乱」という考えに説得力を感じるのか検証する価値はあると述べている。
「私たちは、人類がシャチに攻撃されるだけのことをしてきたと認識しているのではないでしょうか。ネットミームを笑うのもいいですが、この件について、もう少し考えてほしいと願っています。シャチの動機が何であれ、私たち一人一人は、周りの野生の世界とより平和に共存するために何ができるのでしょうか」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。
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ヨットを沈没させるシャチは「攻撃」してるわけじゃなかった?専門家が指摘