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足が幅広で、サイズの合う靴を探すのが大変。
パンプスを履くと、いつも靴擦れしてしまう。
スニーカーでさえも、窮屈に感じるものが多い。
でも、お洒落を諦めたくない。
そんな私が履いて驚いたのが、VIVAIA(ビバイア)の靴でした。
VIVAIAは、デザインの美しさと快適さ、そして環境への配慮を同時に叶えることを目指して作られたブランドです。
どんなこだわりをもって作っているのか。VIVAIA代表のJeff Chan(ジェフ・チェン)さんに話を聞きました。
ジェフさんがVIVAIAを始めようと思ったきっかけの一つが、靴好きな妻の存在だったと言います。
「妻はハイヒールを履くたびに靴擦れをして絆創膏を貼っていました。なぜ自分の好きな靴を履いているだけで、それとトレードオフのように傷を負わないといけないのか疑問が募り、改善の必要性を感じました」
同時に10年以上アパレルの仕事に携わってきたジェフさんは、ファッション業界が大量のエネルギーや資源を使い、地球に環境負荷をかけていることに危機感を覚えていたそうです。
これだけ多くのファッションブランドがあるにも関わらず、環境に優しく、お洒落で、快適な女性用の靴が少ない。この3つを同時に叶える靴を作ろうとVIVAIAが立ち上がりました。
ジェフさんは、「ファッション業界は持続可能性の面で3つの大きな課題があります」と指摘。VIVAIAはその3つの課題にチャレンジしていると言います。
1つ目の課題は素材です。ジェフさんは「最初から持続可能な素材を選ぶことが、環境フットプリントを減らす鍵になります」と説明。実際にVIVAIAでは、ペットボトルからできた再生素材や植物由来の素材を使っているそうです。
2つ目がプロダクトデザイン。「ファッション業界では顧客にアピールするために過剰にデザインし、多くの選択肢を用意する傾向があります」とジェフさんは指摘します。
「トレンドをもとにお客様が望むものを推測して作ることが多いですが、私たちは違います。何千、何万人ものお客様と会話し、アンケートをとり、トレンドではなくお客様が望んでいるものを提供することにコミットすることで、過剰な設計を防いでいます」
また、「統合3Dニットテクノロジー」という技術によって材料の無駄を極力減らすことに成功。ごみを出さないようにする「ゼロウェイスト」にコミットした製造方法で作っていると説明しました。
3つ目が、原材料などの調達から製造、物流、販売までのサプライチェーン(供給網)のマネジメント。市場が絶えず変わり続ける中で、過剰な在庫や無駄を省くためにも、柔軟なサプライチェーンを持つことが重要だと語りました。
ファッション業界には大量生産、大量消費、大量破棄の問題があります。近年では循環型経済(サーキュラーエコノミー)が注目され、どうすれば新たな素材の使用を減らして資源を循環させられるシステムを作れるか、多くの企業や自治体が挑戦しています。
例えばVIVAIAの代表商品であるフラットシューズ一足は、捨てられたペットボトル6本から作られているそうです。素材からゼロウェイストの工程まで環境へ配慮しているといいますが、靴が寿命を迎えた後のことはどのように考えているのでしょうか。
聞くと、「靴のサイクルの初期段階から先を見据えることが、最善の策だと考えました」とジェフさんは説明します。
「靴の一足一足がお客様のニーズに合わせてデザインされ、気に入ってもらえるように。そして最大限履き心地のいい靴になるように作ることで、捨てる前にまず長く使ってもらうことを目指しました」
また、VIVAIAの靴は洗濯機で丸洗いができるため、いらなくなったとしても再び綺麗に洗って再利用しやすいと言います。チャリティー団体のSoles4Soulsとも提携し、これまでに1413足を寄付し、顧客へも寄付を勧めているとジェフさん。
しかし同時に、「正直に言うと、まだVIVAIAとして完璧な解決策はありません」とも打ち明けました。
「靴が壊れた後、どうすれば完璧にリサイクルできるのか。他の団体との提携なども含めて常に解決策を追求していますし、リサイクル方法を見出すことは私たちの責任だと思っています」
ペットボトルに関して言えば、まだ総量自体は少ないものの、ペットボトルからペットボトルを作る技術が徐々に確立され、飲料業界が水平リサイクルに取り組んでいます。
靴のリサイクル方法が確立していないのなら、ペットボトルはペットボトルとして生まれ変わった方がいいのでは?と聞くと、「確かに、最近では再生ペットボトルが増えています」とジェフさん。
「それでもVIVAIAが捨てられたペットボトルから靴を作るのは、従来の革や、石油などから作られるポリエチレンではなく、リサイクル素材でも美しく快適な靴が作れることを示すためです」
今でもヘンプ(麻)やコットンなどリサイクル可能な素材で作られた服や靴もありますが、まだまだ種類も少なく、活用されているのはごく一部です。
「5年後、10年後には、靴に使用されている何百種類ものサステナブルでリサイクル可能な素材が目につくようになるに違いありません。それが可能だとお客さまにも業界にも思わせる提案をしているのがVIVAIAだと思っています」
実際にVIVAIAの靴は快適なのでしょうか?今回は女性にも男性にも合う幅広いサイズ展開をしているVIVAIAのスニーカーを履いてみました。
スニーカーの上の部分は、ウール、再生プラスチック、ソールの部分はバイオベースの素材からできているといいます。
履いてみると、快適さにびっくり。足の幅はちょうどいいし、中のクッション性も高くて軽く、履き心地がとてもいいです。出張に履いていき、1週間歩き回りましたが、足が痛くなりませんでした。
幅広の靴特有の野暮ったさがなく、洗練されたデザインの印象です。
スリッポンのようにスッと履けるのも嬉しいポイント。VIVAIAは従来のスニーカーより価値のあるものを作れるか考えた末に、履くたびにかがんで紐を結ばなくてもスリップオンで履ける構造を作ることに成功したそうです。
ジェフさんは「女性の靴はいつもジレンマを抱えている」と言います。幅が広い方が快適ですが、幅が狭い方が一般的に美しい傾向にあるというのです。
「このジレンマを解決するために、VIVAIAは何度も足の型を改善し続けていいます。また、再生ペットボトルの素材は伸縮性があり、靴にフィットしやすいなど、快適さを実現するための重要な役割を果たしています」
VIVAIAは4月17日、原宿に新たにオープンした商業施設「ハラカド」に初の実店舗をオープンしました。
2年ほど前から日本各地でポップアップを行い、日本の顧客への理解を深め、日本人の足に合うように改善を重ねていったそうです。
「徐々に日本のお客さまに、VIVAIAが環境への配慮とデザイン性と快適さを同時に叶えた靴であることが伝わり、手応えを感じることができ、出店を決めました」
ハラカドは交通の便がいいだけでなく、モダンと伝統、国際性とローカル性を兼ね備えた場所でもあるとジェフさんは言います。
「多様性と包括性というブランドの価値を完璧に表現できる場所だと思います。VIVAIAが環境に優しく、ファッション性と快適性を同時に実現できることを原宿に、そして世界に示していきたいです」
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
なぜ痛くなる靴で我慢していたんだろう。足が幅広で靴探しに苦労する私が出会った、お洒落で快適で、環境に優しい一足