「今の小学生が羨ましい!」と話題。ミニチュア作家・田中達也さんが手がけた算数の教科書表紙は愛に溢れていた【画像】

鹿児島県在住のミニチュア写真家、田中達也さんが手がけた、小学校算数の教科書の表紙が「こんな教科書で勉強したかった!」「今の小学生がめちゃくちゃ羨ましい」と話題になっている。

田中さんが表紙を担当したのは、学校図書(東京)が発行する令和6年度版の小学校算数の教科書「みんなと学ぶ 小学校算数」1〜6年生用の全12冊。

田中さんによると、それぞれの表紙のデザインは、各学年で学ぶ単元にまつわるモチーフを取り入れているという。

「のり巻き」で見立てたものとは…?

例えば、3年下巻では、「三角形と角」を学ぶため、山に見立てたサンドイッチやおにぎりで「三角形」を表現している。また、5年上巻では、「速さ」にちなんで、のり巻きを電車に見立てた作品を採用した。

他にも、1年上巻では、入学をイメージして、ピンク色のボタンで桜を表現。6年の教科書は門出を祝うケーキ、別冊では“中学校への架け橋”をテーマに、鉛筆と分度器で「橋」を再現している。

田中達也さんが手がけた小学校算数の教科書表紙全12冊

4月7日、田中さんが教科書のデザインを紹介したXの投稿には、「こんな可愛い教科書で育ちたかった〜!!」「この教科書で学ぶ小学生が羨ましい」「こんな表紙だったら算数頑張れたよなぁ」「この表紙はわくわくするし、持ち歩きたくなる!」など、絶賛するコメントが寄せられた。

ピンクのボタンで桜を表現した1年上巻の教科書

「見立ては相似に近い」教科書表紙を引き受けた理由

田中さんはこれまでも、高校音楽の教科書や副読本などの表紙を担当してきた。算数の教科書の表紙を手がけるのは今回が初めてという。

「うちの子どもたちが小学生だったので、まず最初に聞いたのが、『鹿児島県の学校で使われますか?』ということでした」と田中さん。教科書は、子どもたちが毎日見るもので、記憶にも残るもの。県内の小学校で採用実績があると知り、5年生と2年生の息子2人も使えるならーと快諾したそうだ。

Tatsuya Tanaka 田中達也 (@tanaka_tatsuya) on X
さっそく我が子の教科書をチェック

 学校図書の依頼を受け、田中さんは「あまり算数の教科書らしくない表紙」を意識したという。文房具や食べ物など子どもに身近なものを、別のものに見立てることで、「生活と算数を結びつけて考えるきっかけにしてほしい」との思いを込めている。

「算数って、日常で使うのが基本だと思うんです。黒板上で数字を見て問題を解くというより、『こういう状況ではあの計算が必要だな』と自分で考えることが大切ですよね。三角形や速さなど、単元にまつわる作品を取り入れることで、教科書の中で新しく習うことを、外側の表紙で問題を作れるように仕上げました」

また、日常にあるものを別のものに「見立てる」作品づくりは、算数の「相似」に近いものがあるという。

「たとえば『山』を見立てるときは、雰囲気で考えるというより、まず三角形という図形に置き換えて、世の中にある相似な形をしたものを色々と探します。また、物同士の大きさの関係は現実とかけ離れてしまうと、『何を表しているか』がわかりにくくなるので、使う素材のスケール感を考えることも大切です。そういう面で、見立てと算数が相性がよいのだと思います」

算数が苦手な子どもたちへ

幼い頃から算数は「得意な方だった」といい、現在の作品づくりにも活かしている田中さん。とはいえ、「算数の壁」という言葉があるように、小学校中学年あたりから難しい単元が増えると、つまづいてしまう子どもも少なくない。

最後に、算数に苦手意識のある子どもたちに向けてメッセージをもらった。

「初めの算数は解き方が単純だし、正解は一つしかないですよね。ただ、本当は、後半の算数の方が面白いと思っています。まさに見立てと同じで、一つの問題に対して色んなアプローチができるし、教科書の『正解』より簡単な解き方を見つけられるかもしれない。『自分ならこう解く』というアイデアが出てくるかどうかを楽しんでほしいです。先生たちも、ただ単元を教えるだけでなく、どのように日常の場面で役立つのかも伝えてあげるとよいのかもしれません」

田中さんは、ミニチュアの視点で日常にあるものを別のものに見立てた作品を毎日SNSなどで発表している。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(2017年)のタイトルバックなども手がけてきた。現在、全国各地で展覧会「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」を実施している。

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