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「仮面ライダー」や「秘密戦隊ゴレンジャー」を世に送り出したマンガ家、石ノ森章太郎(1938〜1998年)の原点ともいえるSFアクション作品「サイボーグ009」が2024年、誕生60周年を迎えた。次々に発表されている記念企画の一つとして、最初のテレビアニメシリーズ中でもとくに名作とうたわれるエピソード「太平洋の亡霊」が、新しいマンガとなって甦った。
南海の海原に、陽光がふりそそぐ。ハワイ沖で穏やかな日々を過ごしていた009たちの前で、信じられない出来事が起こったーー。
かつて真珠湾を攻撃した日本海軍が復活。突然の事態に混乱が広がる中、ゼロゼロナンバーサイボーグたちが集結、出動する。
「サイボーグ009」の初のアニメシリーズ(1968年放送、東映動画=現・東映アニメーション)のエピソード「太平洋の亡霊」は、そんな筋書きで物語が展開していく。ハードなSF作品に仕上げられ、石ノ森アニメの代表作とされる同シリーズの中でも、名作のほまれが高い。
「太平洋の亡霊」のエピソードは、64年に連載開始された原作マンガにはない。脚本家の辻真先がテレビ用の脚本を練り上げたという。
マンガから生まれ、テレビアニメに発展したこの作品が、もう一度マンガに帰ってきた。石森プロのマンガ家、早瀬マサトが手がけ、4月19日発売の「チャンピオン RED」2024年6月号に第1話が掲載された。同号の表紙と巻頭カラーを飾ったほか、アニメのオリジナル脚本を収録した小冊子が付録となっている。
「チャンピオン RED」は秋田書店刊で税込880円、毎月19日発売。電子版もある(毎月1日発売)。
早瀬は以前から「太平洋の亡霊」のコミカライズ企画を温めていたという。「サイボーグ009」誕生60周年の節目に実現の運びとなり、ハフポスト日本版の取材に対して次のようにコメントした。
「本作のアニメ版は、交響曲『はげ山の一夜』を BGM に使うなど、非常に完成度の高い名作として知られています。セリフも音も聞こえてこないマンガという媒体で、その完成度にどこまで近づけるか、どこに優位性があるのか、挑戦してみたいと考えました。コミカライズ版をきっかけに、オリジナルののアニメ作品も観ていただき、後世に語り継いでいただけたらと願っています」
早瀬によると、辻の脚本はそのままアニメ化されたわけではなく、往年のファンにとっては「まだ見ぬ宝」となっていた。今回は、その脚本をベースとしながら、マンガとして読みやすい構成となるようにシナリオを肉付けしたという。
サイボーグ戦士の人物描写などには、マンガ独自のものもある。付録の脚本と読み比べ、原作アニメも鑑賞すれば、味わいも2倍、3倍になりそうだ。
石森プロによると、「サイボーグ009」は、1964年から「週刊少年キング」(少年画報社)に連載されたのがはじまり。日本でまだ海外旅行が自由化されていなかった時代に世界一周旅行に出た石ノ森は、帰りの飛行機の中で雑誌「LIFE」を手に取り、「サイボーグ」の文字を見つけた。これが構想のきっかけになり、9人の戦士は野球のナインから着想を得たという。
キャラクターを設定する際には、肌の色も来歴もさまざまな人物が世界中から集められるというストーリーを採用し、作品世界に深みと広がりが加えられた。
最初のマンガでサイボーグ戦士たちが戦う相手は、自らを生み出した悪の組織だ。生みの親に反発、抵抗するというモチーフは、その後の「仮面ライダー」シリーズなどにも受け継がれ、石ノ森作品の重要なテーマとなった。
「サイボーグ009」は、石ノ森のライフワークとなっていった。一度は最終回を描いたにもかかわらず、読者の要望によって再スタートさせたこともあった。晩年に至るまで、完結編について何冊もの構想ノートを残していたという。
マンガは、後年まで様々なエピソードが描かれた。アニメ化も度々されており、それぞれの時代に応じたキャラクター解釈やストーリーが生まれた。このたびの誕生60周年の特別企画では、初の舞台化も決定した。
石森プロは「サイボーグ009」について、「時代に寄り添って生き続ける作品でありたい。原作に込められたメッセージを内包しながら、新しい媒体や新しいスタイルで、常に時代にリンクしたい」とコメントしている。
(文中敬称略。石ノ森章太郎の「ノ」は約60%縮小が正式表記)
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「サイボーグ009」誕生60周年で名作アニメがマンガ化。「太平洋の亡霊」連載開始