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近年、災害が起きるたびに課題となる生理用品の備蓄不足や、支援のあり方。
能登半島地震発生直後には、一部のSNSで「一日一枚ずつで足りる」「男性にも何か配らないと不平等」という声が上がるなど、理解に乏しい現状がうかがえた。また、一回の生理で使うナプキンの量を紹介する投稿も話題を呼び、驚きや共感などさまざまな反応が寄せられていた。
生理期間や経血量には個人差があり、使用するナプキンの量はその人次第で変わってくる。ただ、いつ起こるか分からない災害に備えて、日頃からどのくらいの生理用品を備蓄しておくべきなのだろうか。
生理用品ブランド「ソフィ」を手がけるユニ・チャームの広報に話を聞くと、生理用品のストックの目安や保管しておく際のコツ、そしていざという時は男性など生理がない人にも役立つ可能性が見えてきた。
ユニ・チャーム公式サイトのコンテンツ「ソフィ生理のケア&アドバイス」によると、正常とされる生理の日数は3〜7日程度で、1回の経血量は20〜140mlだという。
ナプキンは一日あたり、何回取り替えるべきなのだろうか。ESG本部広報室・室長代理の渡邊仁志さんによると、「おおよそ2〜3時間おきに交換すること」を推奨しているそうだ。
「ナプキンは経血を吸収して、肌がベタつかないように開発されていますが、それでも長時間つけていると湿度を含んでしまい、細菌が繁殖して、ニオイが強くなったり、痒みや痛みといった肌トラブルを引き起こしたりする恐れがあります。デリケートゾーンのため、感染リスクも高まりますし、衛生的な状態を保つために、できるだけこまめに交換することをおすすめしています」
ちなみにタンポンの場合は、8時間以内の交換が目安。長時間使用すると、「トキシックショック症候群(TSS)」のリスクが高まるという。TSSとは、黄色ブドウ球菌の産生する毒素が原因で起こる急性疾患のことで、初期症状として突然の高熱を伴う発疹や下痢、嘔吐などが見られるそうだ。
ナプキンの場合、一日で2〜3時間おきに取り替えることを踏まえると、一回の生理期間でどのくらいのナプキンが必要だと想定されるのだろうか。
「もちろん個人差はありますが、生理期間が7日間として、一日に5、6枚取り替えた場合、35〜42枚になります」
写真は、取材を基に用意した一回の生理期間で使うナプキンの量だ。
自治体の備蓄では、食料や飲料の場合、避難が想定される人数×3日分を保管することが推奨されている。生理用品の備蓄は防災計画などに定められているが、避難所の運営リーダーとなるのが男性の場合がほとんどで、必要な配布量に対する知識がないことが課題だ。一人の女性に対して、およそ1ヶ月間(1回の生理周期)で、このくらいは必要になると認識しておきたい。
災害時に備えた生理用品の十分な備蓄は喫緊の課題であるものの、自治体によっては何十年も更新されていなかったり、そもそも備蓄していなかったりというケースも見受けられる。そうした場合に備えて、個人でも備蓄しておくことが必要だろう。
家庭での備蓄方法として、ユニ・チャームが推奨しているのが「ローリングストック」だ。ローリングストックとは、日常使いしている日用品を、普段から多めに買ったおき、使った分だけ買い足していく方法のこと。渡邊さんによると、生理用品の使用期限の目安は未開封で3年程度で、高温多湿・直射日光を避けて保管するのがよいという。
また、備蓄する際は、水害などに備えて”ある一手間”を加えた方がよいそうだ。
「生理用品や吸水ケア用品は湿度や水に弱く、パックにはミシン目がついている商品もあるため、完全密封ではありません。水害などの万が一の事態に備えて、チャック付きの袋などに入れて保管しておくことをおすすめしています」
そして、ナプキンをストックするポイントは「ちょっと大きめ」を用意することだという。例えば、普段「昼用」を使っている人なら「多い日の昼用」、夜用ナプキンの「29cm」を使っている人なら「33cm」を用意するなど、いつもよりワンサイズ大きいものを備蓄しておくのが、渡邊さんのおすすめだそうだ。
渡邊さんによると、東日本大震災直後には、同社が販売する中で最大吸水量の300ccの尿もれケアパッドの購入問い合わせが一気に増えたという。普段は150cc前後のものを使っている場合でも、トイレにすぐには行けず、衛生的ではない状況を踏まえて、普段より吸水量が高いもの、大きめのサイズの需要が高まったそうだ。
「生理用品の場合も、普段とは異なる状況を想定して、少し大きめのものをストックしておくのも一つの手だと思います。最近は、吸収量も高く、モレやズレを抑えるショーツ型のナプキンも展開されていますし、なかなか取り替えられない時を想定して用意しておくのもよいのではないでしょうか」
災害時の生理に備えて、ナプキン以外にもおりものシート、ショーツ型ナプキン、生理用ショーツ、デリケートゾーン用ウェットティッシュなどを備蓄しておくのがよいそうだ。
「ナプキンは最低限、一回の生理期間で使うであろう35〜42枚は用意しておき、プラスでおりものシートや生理用ショーツを入れておくと安心です。おりものシートは、下着を取り替えられない場合の応急処置として使うことも想定されるので、抗菌タイプやデオドラントタイプを選ぶのをおすすめしています。デリケートゾーン用のウェットティッシュは、お風呂に入れない時に重宝するかと思います」
他にも、近年SNSなどで話題の「シンクロフィット」など、ナプキンにプラスして使うアイテムを用意しておくのもおすすめだという。(シンクロフィットは、デリケートゾーンに挟んで使うことで、吸収力をプラスするアイテム)
渡邊さんへの取材を基に、災害時に備えた生理ケア用品を揃えてみた。ライフラインの遮断や、必要な量の支援が届かないことを想定すると、普段使わないものも含めてこのくらいのストックをしておくのが安心かもしれない。
「被災地には自分が普段使っている生理ケア用品は来ない可能性があります。普段と異なる状況の中でも、生理ケアだけでも安心できるものを用意しておけば、少しだけ気持ちを落ち着かせることができるのではないでしょうか」
災害時に備えた、生理用品や吸水ケア用品の備蓄は女性の課題のように思われがちだ。ただ、ライフラインの遮断でお風呂に入れず、下着の取り替えができない場合、男性など生理がない人も尿もれケア用品などを備蓄しておくことで、同じ下着でも衛生的に過ごすことができるだろう。
ユニ・チャームでは10年前から男性用の尿もれケア用品を展開しており、サッと貼れるシートタイプや、安心設計のパッドタイプ、吸水量3cc〜250ccまで幅広いラインナップがある。渡邊さんは「男性も取り替えの利くパッドを用意しておくことで衛生的な状態を維持できるのでは」と話す。
「非常時には命が最も大切なので、まず水や食料品、人によっては薬の確保が重要になります。ただ同時に、自分たちではコントロールできない、生理や排尿による感染リスクなど衛生面の担保にも注意してもらいたいと思っています」
被災地での生理用品は贅沢品——。災害が起きるたびにSNSでは、一部の男性ユーザーから生理用ナプキンの必要性を軽視する声が上がるが、生理はただ血が出るものではなく、女性の生涯に密接に関わるものだ。渡邊さんは「性別に関わらず、社会全体が生理に対する正しい知識を学ぶことが大切」と話す。
「まず実態として知ってもらいたいのは、女性は初潮を迎えてから約40年間生理と向き合わなければならないことです。一生の生理期間を合計すると、約6年9ヶ月もの長期間に及びます。生理をタブー視することなく、正しく理解することで、まずは身近なパートナーや家族に寄り添えるようになるのではないでしょうか」
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