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3月25日の正午前、自民党本部で始まった二階俊博元幹事長の記者会見には、解散した派閥の「側近」として知られていた林幹雄氏が、最初から最後までピタリと付き添っていた。
二階氏は会見冒頭、用意していた原稿を読み上げる形で次のように述べた。
「私が会長を務めていた派閥の政治資金問題が政治不信を招く要因になったことに対し、改めて国民のみなさん、地元のみなさんに深くお詫びを申し上げます」
「その政治責任はすべて、私自身にあることは当然のことであります。私はこの際、自らの政治的責任を明らかにする。本日、岸田文雄・自民党総裁に対し、次期衆議院選挙に出馬しないことを伝えました」
政府与党の中心で権勢を誇ってきた二階氏が、裏金問題の責任をとって、表舞台から引き下がることを表明した。残された任期では「国土強靭化」「観光立国」などに力を尽くす考えを述べ、最後には国政を志した若き日の思い出や、田中角栄元首相から聞いたという言葉に触れて、冒頭発言を締めくくった。
ここからは、居並ぶ記者たちの質問に答えることになる。
最初に質問した記者は「国会では政倫審が開かれ、複数の政治家が弁明している。二階議員はなぜ出席しないのか。今後出席する考えはあるか」と聞いた。
伏し目がちの二階氏は、チラリと記者席の方を見た後、ゆっくりと右隣の林氏の方へ顔を向けた。
その顔の動きが終わらないうちに、「んんっ」と咳払いをして林氏が代弁を始めた。
「出席は自分の判断でしてますので、必要はないと判断しました。かわりに事務総長の武田議員が出席して全部を話した通りでございます」
記者は「国民の中には二階氏が出てきて説明すべきだという声がある」と食い下がった。だが、これに対しても二階氏は答えなかった。
代わりに林氏が「すべてつまびらかにして、記者に報告している。いちいち政倫審に出なくてもわかっていただけると我々は判断している」と応じた。
10分ほどの短い記者会見の中で、記者側が発した質問は繰り返しの問いも含めて15問あった。政治とカネに関しては、最初の政倫審に関する質問に加え、2019年の参院選で起きた河合克行元法務相の選挙違反(買収)事件に関する質問もあった。だがこれも、応じたのは二階氏ではなく、林氏だった。
ちなみに林氏は、2012年の二階派発足に際して他派閥から移籍して加わり、派閥内では副会長などを務めた。経済産業相も務めた衆院議員だ。
二階氏が気色ばむ場面もあった。ある記者が「このタイミングで不出馬を決めたのは、政治資金パーティー収入の不記載の責任を取ったのか。それとも年齢の問題か」と問うた時だ。
「いや、不記載と、申し上げた通りだ」と林氏が答えたのを遮るようにして、二階氏は「年齢の制限があるか?」と逆に記者に問いかけた。
記者側が「年齢制限はないが、お年を考えたら……」と返すと、二階氏は「お前もその年来るんだよ」と、すごむような声で答えた。
二階氏は1939(昭和14)年生まれの85歳。かつて自民党田中派に所属していたが、小沢一郎氏らとともに自民を離れ、政界再編の波に洗われた。
2000年代初頭に復党すると、次第に頭角を現した。16年から21年にかけては安倍、菅両政権で党務を一手に握る幹事長を務め、その在任期間は歴代最長となった。
だが、次第に健康不安説がとりざたされ、次期衆院選をめぐっても様々な憶測がとびかっていた。
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衆院選に「出ない」と表明した自民党の二階俊博元幹事長が、自分で答えたこと、答えなかったこと。裏金問題は側近が代弁