卵は1年中店頭にふんだんに並び、栄養豊富な上に日々のメニューに欠かせない人気食材の一つです。しかし本来は、親鶏の体内での成熟期間が長くなる2月から4月にかけてが卵の旬といわれていました。
スーパーなどでは常温で販売されていますが、買ってきたらすぐに冷蔵庫に入れる方が大半です。ではなぜ店頭では常温なのでしょうか。卵販売の老舗、株式会社落水正(おちみずただし)商店(長崎県雲仙市)の岩素子(いわ・もとこ)さんにお話を伺いました。
卵の殻は、よく見ると少しざらざらとしています。
「殻のことを正式には『卵殻(らんかく)』といいます。表面がざらざらしているのは、卵が呼吸に必要な酸素を取り入れ、内部で発生した炭酸ガスを外部に排泄するガス交換を行うための小さな穴(気孔)があいているためです。
気孔は卵1個につき約7000~17000個あります。気孔を通じて卵の内部と外部はつながっていることになります」(岩さん)
気孔が常温販売と冷蔵保存に関係しているといいます。
「温度差があると窓が結露するように、卵も温度差があるとまるで汗をかいたように結露します。もし店頭で冷蔵販売されていると、外気温が冷蔵温度より高い場合、買って帰る途中で卵との温度差が生まれて結露してしまいます。
結露すると水分が気孔を通して卵内部に入り込みやすくなります。その水分の中には雑菌が入っている可能性があり、そのまま放置すれば傷みやすくなってしまいます。それで店頭では常温で販売されているのです。
では、買ってきたら常温で保存しても大丈夫なのでは? と思われるかもしれませんが、卵は生ものなので、菌の発生を防ぐために冷蔵庫に入れ、10℃以下で保存しましょう。
また、これから気温が高くなると、販売店内と外気で温度差が出てきます。もし買ってきた卵が結露していたら、冷蔵庫に入れる前に必ずティッシュなどで拭き取りましょう」(岩さん)
冷蔵庫に入れる際の正しい保存方法も教えてもらいました。
「卵には丸い方と尖がっている方があります。卵をケースから出して冷蔵庫に入れる際には、丸い方を上にしましょう。卵には産卵後、丸い方に気室と呼ばれる空気が溜まる場所ができます。
丸い方を上にすると黄身が安定し、古くなった黄身が浮かんできても、気室があるため黄身が殻に直接触れないので鮮度が保たれやすいとされています。また、尖がっている方の殻が厚いため、こちらを下にした方が割れにくいのです。
ケース販売されている卵は、丸い方が上になって並んでいる場合が多いはずです。ケースごと保存する場合は、ラベルなどで上がわかると思いますので、上下逆さまにしないようにしましょう」(岩さん)
卵には9つの必須アミノ酸がすべてバランスよく含まれています。新鮮な卵を上手に保存して鮮度を保ちながら、美味しくいただきましょう。
取材協力
株式会社落水正商店(長崎県雲仙市)
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