年度末は、新生活に向けて引っ越しが多くなる時期です。進学、就職、職場の異動と、事情はさまざまですが、住み慣れた場所から離れる人が少なくありません。
そんな時、避けられないのが住まいの大掃除です。日数が限られた中で、何とか大掃除を簡単に、きれいに済ませる方法はないのでしょうか。
全国で家事代行サービスなどを展開するカジタク・ハウスクリーニングチームの上田律樹さんは、重曹を使うと家がまるごとピカピカになると言います。早速、その方法を教えていただきましょう。
お掃除の洗剤として重曹を使うという話をよく聞きますが、そもそも重曹とはどんなものなのでしょうか。
「重曹は弱アルカリ性の天然ミネラルで、正式には炭酸水素ナトリウムと呼ばれます。弱アルカリ性なので、油脂を乳化し、タンパク質を分解します。そのため、油汚れや皮脂汚れに効果的です。
また、消臭効果があり、湿気を吸い取る効果もあるので、高温多湿のところに置くとカビの発生を予防する効果があります。
研磨剤としても使われますが、これは粒子がとても細かいからです。加熱すると炭酸を発生させる性質があるので、汚れを浮かせて落とすことができます」(上田さん)
便利な素材だということはわかりましたが、お掃除には具体的に、重曹をどう使えばいいのでしょうか。
「お掃除に重曹を使うときは、用途によって使い方を変えましょう。
まずは、粉のまま使う方法があります。汚れに振りかけ、スポンジでこすり洗いしてください。ぬいぐるみや革靴など、水を使えないものをきれいにしたいときに便利です。水を含ませたスポンジでこすれば、研磨剤効果で頑固な汚れも驚くほど落ちます。
次に重曹水を作る方法があります。水200mlに重曹小さじ1の割合で溶かし、スプレーボトルや霧吹き器などに入れると重曹スプレーの完成です。食器洗い、浴槽の水垢、カルキ汚れなどに幅広く使えます。乾くと白く粉が残るので、最後に水を流して拭き取ってください。
重曹ペーストを作る方法もあります。重曹3:水1の割合でよく混ぜたものが重曹ペーストです。流れ落ちてしまう壁面などの汚れに吸着させ、時間を置いてからスポンジなどでこすって汚れを落とします。
このように汚れの種類によって、いろいろな形状で使えるのが重曹の魅力です」(上田さん)
大掃除では、いろいろな場所の汚れを落とさなければなりません。場所ごとに重曹の使い方を教えてもらいましょう。
(1)換気扇フィルター
「換気扇からフィルターを外し、乾いた場所に置いてください。粉のままの重曹をたっぷり振りかけ、そのまま2~3時間放置します。その後、歯ブラシでこすって汚れを落とし、最後にお湯で洗い流せば完了です」(上田さん)
(2)五徳
「軽い汚れは、重曹スプレーをかけてこすれば落とせます。ひどい汚れは、煮洗いしてください。
水200mlに対して重曹大さじ山盛り1を溶かします(量は鍋の大きさで調節)。沸騰したら、五徳を入れて10分間煮ます。その後2時間冷ましてください。残った汚れは粉の重曹を振りかけ、歯ブラシでこすって落とすことができます」(上田さん)
(3)電子レンジ
「耐熱容器に水500mlと重曹小さじ1を入れ、よくかき混ぜてから600Wで3分間加熱します(終わった時に蒸気が出ていればOK)。そのまま10分間置いて、庫内を蒸らしてください。
最後に布巾で汚れを落として完了です。もし汚れが残っていたら、歯ブラシに粉の重曹を付けてこすり落とします。最後は濡れた布巾で仕上げ拭きをしてください」(上田さん)
(4)湯船の漬け置き洗い
「お風呂のお湯に、重曹1カップを溶かします。そこに洗面器、椅子、蓋、子どものおもちゃなどを漬けこみ、一晩置いてください。次の日、水できれいに洗い流して完了です。残り湯が汚れていると効果が半減するので、なるべく新しいお湯で行ってください」(上田さん)
(5)浴室のカビ取り
「重曹2:酸素系漂白剤2:ぬるま湯(40℃)1の割合で混ぜ、10分間なじませます。それをカビの部分に塗り、ラップで蓋をします。そのまま4時間以上置き、お湯で流せば完了です。流すときに床や排水口もきれにできます」(上田さん)
(6)照明カバーとスイッチ
「照明カバーは、重曹スプレーをかけて雑巾で拭きます。こびりついたホコリも同時に落としましょう。手垢で黒ずんだスイッチ周りも、重曹スプレーをかけて雑巾でこすり落とします。汚れがひどい場合は、重曹ペーストでしばらくラップをすると落ちやすくなります」(上田さん)
(7)魚焼きグリル
「魚焼きグリルは、出がらしのお茶に水を入れて加熱すると、臭いも取れ、汚れも落ちやすくなります。加熱後に重曹ペーストをまんべんなく塗り、放置してください。汚れが浮いてきたら、スポンジでこすって水で洗い流せば完了です」(上田さん)
(8)洗濯槽
「洗濯機いっぱいに40~50℃のぬるま湯を溜め、重曹1カップを入れて溶かします。洗濯コースで洗濯槽を攪拌し、そのまま3時間ほど置いてください。その後、洗濯槽に浮いてきたゴミをすくい取り、すすぎから脱水まで行って完了です」(上田さん)
(9)キッチンのシンク
「食べ物を扱う場所なので、自然素材の重曹が向いています。重曹スプレーを用意して、汚れが気になるところに吹き付けてください。メラミンスポンジ(「激落ちくん」などの白いスポンジ)でシンク全体をこすると、きれいになります。蛇口も忘れずに」(上田さん)
(10)網戸
「重曹スプレーを網戸に吹きかけます。床が濡れないように、新聞紙などを敷いた上で行ってください。しばらく時間を置いてから、メラミンスポンジを水で濡らし、上から下へ向かって網戸を軽く拭いていきます。
メラミンスポンジはすぐに真っ黒になるので、バケツで洗いながら使います。両面とも拭いたら乾かし、窓に取り付けて完了です」(上田さん)
重曹が使えない場所、使う場合の注意点はあるのでしょうか。
「アルミや銅に使うと、黒く変色するので使わないようにしましょう。木材や畳に使用すると、黄色いシミになることがあります。ワックスが塗られたフローリングは、ワックスを剥がしてしまいます。漆器、大理石、宝石にも、傷が付くので使わないでください。
重曹は弱アルカリ性なので、人間の皮膚にも反応します。肌の弱い人は、ゴム手袋をしてください。弱アルカリ性なのでそこまで強力な洗剤ではなく、しつこい汚れ、頑固な汚れは落ちないこともあります」(上田さん)
引っ越し時の大掃除が、重曹でかなりレレベルアップできることがわかりました。大掃除が苦になっていた人も、これで前向きになれたのではないでしょうか。
引っ越しを控えている皆さん、「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、これまでの住まいをきれいにし、新しい門出を清々しい気持ちで迎えましょう。
【関連記事】
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
【掃除の裏ワザ10選】電子レンジから風呂や網戸まで。換気扇フィルターもきれいにする方法