イスラエルの「アパルトヘイト」を批判した同国の映画監督、殺害予告を受けていると明かす

『ノー・アザー・ランド』でベルリン国際映画祭の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したユヴァル・アブラハム(左)とバーゼル・アドラ氏(右)(2024年2月24日)

イスラエルによるヨルダン川西岸地区の占領を描いたドキュメンタリー『ノー・アザー・ランド 』の監督が、ベルリン国際映画祭の受賞スピーチ後に脅迫されていると明かした。

同作は、ヨルダン川西岸南部のマサフェル・ヤッタ地域で起きている、イスラエルによるパレスチナ人住民の追放を描いたドキュメンタリーだ。

マサフェル・ヤッタでは、イスラエル軍が軍事訓練を行なっているほか、イスラエル人入植者がパレスチナ人を攻撃している。

『ノー・アザー・ランド』は、パレスチナ人でマサフェル・ヤッタ出身のバーゼル・アドラ監督と、イスラエル人のユヴァル・アブラハム監督が共同で制作した。

95分の作品には「イスラエル政府に派遣された兵士たちが徐々に家屋を取り壊し、住民を追い出して、村々を緩やかに消滅させてる様子」が記録されているという。

イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区の攻撃が続き、約3万人が犠牲になっている中で、『ノー・アザー・ランド』はベルリン国際映画祭の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。

アドラ氏とアブラハム氏は2月24日に行われた授賞式のスピーチで、イスラエルとパレスチナ自治区の現状を語り、停戦を訴えた。

パレスチナ人のアドラ氏は「イスラエルによってガザで何万人もの同胞が虐殺され、私自身のコミュニティであるマサフェル・ヤッタもイスラエルのブルドーザーによって破壊されている中で、受賞を喜ぶのは難しい」と述べ、イスラエルへの武器提供を止めるようドイツ政府に求めた。

イスラエル人のアブラハム氏は、自身とアドラ氏が戻るのは「平等でない土地」だと述べ、停戦や占領の終結、政治的解決を訴えた。

「私は文民法のもとで生活していますが、バーゼルは軍法のもとに置かれています。私たちは互いに30分の距離に住んでいますが、私には選挙権があり、バーゼルにはありません。私は好きな場所に自由に移動できますが、バーゼルは何百万人ものパレスチナ人と同じように、占領されたヨルダン川西岸地区に閉じ込められています。私たちの間に存在するこのアパルトヘイト、この不平等を終わらせなければいけません」

ふたりのスピーチは大きな拍手で称えられたものの、アブラハム氏は25日、この発言がイスラエルで放送されて「反ユダヤ的」と批判された後、「殺害予告を受けている」とソーシャルメディアで明かした。

Yuval Abraham יובל אברהם (@yuval_abraham) on X
Our film “No Other Land” on occupied Masafer Yatta’s brutal expulsion won best documentary in Berlinale. Israel’s channel 11 aired this 30 second segment from m...

さらに27日には、「昨日、イスラエルの右翼暴徒が家に私を探しに来て、身近な家族を脅した」と投稿した。

家族は夜中に別の街に逃れ、アブラハム氏も帰国便もキャンセルせざるをえなかったという。

アブラハム氏は、停戦とアパルトヘイト終結を求めるスピーチを「反ユダヤ」と決めつけたことが、今回の事態を招いていると指摘。

イスラエルのメディアやドイツの政治家らによる「反ユダヤ主義」という言葉の悪用が、この言葉の持つ意味を空虚にし、世界中のユダヤ人やマサフェル・ヤッタに暮らすアドラ氏を「危険にさらす」と述べた。

アブラハム氏は、アドラ氏は「私よりはるかに危険な状況に置かれている」と強調している。

ベルリン国際映画祭の受賞スピーチ(2024年2月24日)

授賞式の後、アブラハム氏やアドラ氏の発言はイスラエルやドイツで批判された。

イスラエルの公共放送局Kanは、アブラハム氏の発言は「反ユダヤ主義だ」と主張(その後映像を削除した)。

ドイツ当局は26日、イスラエルを批判するベルリン国際映画祭でのスピーチが「一方的」だったと可能性があるとして調査を開始したと明らかにした。

授賞式に出席したドイツのクラウディア・ロート文化・メディア担当大臣は、スピーチ後に拍手したものの、文化・メディア庁は26日、拍手は「政治的解決と平和的共存を支持する発言をしたユダヤ系イスラエル人のジャーナリストで映画監督のユヴァル・アブラハム氏に向けられたもの」とXに投稿して、アドラ氏には拍手していないと示唆した。

バーゼル氏とアブラハム氏が、記者やライターとして所属する独立系メディア「+972」と「Local Call」は28日、ふたりへの攻撃は「イスラエルのアパルトヘイトについて厳しい真実を語る人々を黙らせようとする抑圧的な力を物語っている」と共同声明で述べた。

「(攻撃)は、イスラエルの占領に反対する発言を、たとえユダヤ人自身によるものであっても、反ユダヤ主義と解釈するドイツの反ユダヤ主義に関する言説の堕落を示しています」

「それは、マサフェル・ヤッタだけではなく、ガザが包囲され砲撃を受け続けているような状況でも、イスラエルのアパルトヘイトに関する厳しい真実を聞こうとしない不寛容さが高まっていることを示しています」

ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。

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イスラエルの「アパルトヘイト」を批判した同国の映画監督、殺害予告を受けていると明かす

Matt Shuham