時に幻想的な「春の霞(かすみ)」
現象としては霧(きり)と同じですが、春に発生するものを「霞」、秋に発生するものを「霧」と呼び、区別することがあります。
ただし、気象用語に「霞」は入っていません。
〜春なれや名もなき山の薄霞(うすがすみ)〜
これは、江戸時代前期の俳人、松尾芭蕉(1644-1694)の句です。名もない山に、薄くたなびいている霞を見て、春を感じている様子がうかがえます。
山の麓や湖にかかる霞は、時に幻想的でもあります。
河原の「猫柳(ねこやなぎ)」に早春を感じる
花穂とは、穂のように群がり集まって咲く花を付けた茎や枝、あるいは、その花の付き方のことをいいます。猫柳の花穂が猫の毛並みを思わせるため、この名前が付きました。
河原などの水辺に多く生えるため、川柳(かわやなぎ)などともいいます。
俳人の山口誓子(やまぐちせいし/1901-1994)は、次の一句を詠んでいます。
〜猫柳高嶺(たかね)は雪をあらたにす〜
近くにある猫柳は銀白色の毛を輝かせていて、遠くに見える高い山には新雪が降り注ぎ、鮮やかに光っているのでしょうか。春の兆しと身が引き締まる余寒の厳しさが感じられる句です。
「木の芽」と「木の芽」は同じ?
じつは、前者の「木の芽」は「このめ」で、後者の「木の芽」は「きのめ」のつもりで書いています。
木の芽を「このめ」と読めば、樹木一般の芽(主に新芽)を意味し、「きのめ」と読めば、山椒(さんしょう)の芽(主に新芽)を意味します。
近年はしばしば混同して使われますが、かつては分けて使っていました。
木の芽(このめ)がふいても、木の芽和え(きのめあえ)を食べても、早春が感じられる点は共通しています。
「雛(ひな)祭り」は女の子のための行事?
古代中国では、3月初めの巳(み)の日を上巳といって、川で身を清める習慣がありました。これが上巳の節句で、雛祭りのルーツといわれます。
この上巳の節句が奈良時代に日本に伝わり、やがて人の代わりに紙や藁(わら)で作った人形に穢(けが)れを移して、川に流すようになったといわれます。
時代が下ると、この人形を雛壇に飾るようにもなり、雛祭りへと発展していったのです。
旧暦3月は桃が開花を迎える時季でもあるため、「桃の節句」の別名も生まれました。
現在、雛祭りは女の子の健やかな成長を願う行事として定着しています。
しかし、室町時代頃までは、女の子だけでなく、男の子や大人の男女も含めて、皆が健康で安全に過ごせることを願うお祭りだったようです。
春の気配が濃くなる雨水の時季。景色の変化などにも注目しながら散策してみるのも良さそうです。