人種や肌の色、民族的ルーツなどを理由に警察官から人種差別的な職務質問を受けたとして、外国にルーツがある3人が、国などに損害賠償を求めて近く東京地裁に提訴する。
警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャル・プロファイリング(Racial Profiling)」と呼ばれる。
日本の警察によるレイシャル・プロファイリングを巡っては、在日アメリカ大使館が異例の警告を出すなど、近年問題が明るみになっている。
原告は20〜50代の3人。原告の一人であるゼインさんは、パキスタンで生まれ、8歳の時に来日し、13歳で日本国籍を取得した。ゼインさんは「外国人ふう」の外見を理由に職務質問を繰り返し受けたと訴え、回数は15回ほどに上るという。
南太平洋諸島の国で生まれたマシューさんは、2002年に日本国籍の配偶者と結婚して日本に移住後、永住権を取得した。これまでに100回ほど職務質問を受け、1日に2回職務質問を受けたことが4度あると主張する。
アフリカ系アメリカ人のモーリスさんは、日本に10年近く居住しており、永住者の在留資格を持つ。2021年4月、自宅からバイクで出かけたところ、交通違反がないにもかかわらず警察官に停止を命じられ、職務質問を受けた。これまでに16〜17回ほど職務質問されたという。
弁護団は、原告らが受けた肌の色や「外国人ふう」の見た目を理由とした職務質問は、法の下の平等を定めた憲法に違反すると主張。人種差別撤廃条約にも違反するとして、国などに対して賠償を求めている。
弁護団は「見た目が『外国人』又は『外国ルーツを持つ人』という理由に基づいて、警察官から犯罪者又は犯罪者予備軍として扱われることは、人間の尊厳を損なう重大な人権侵害だ」と主張する。
日本の警察官による人種差別的な職務質問の問題が近年、明らかになっている。
ハフポスト日本版の2021年のアンケートには、職務質問の際に人権侵害だと思ったり嫌だと感じたりした体験が329人から寄せられた。
「あなたのような外国人は、たいてい危険な凶器かドラッグを持っているからと警察官に言われた」「明確に覚えている3回の職務質問でいずれの場合も、私を止めたのは私が日本人でないからだとはっきり言われた」などの声があった。
東京弁護士会は2022年、外国にルーツのある人に対する職務質問に関する調査結果を発表(有効回答数は2094件)。過去5年ほどの間に職務質問を受けた人のうち、 76.9%が「外国人または外国にルーツを持つ」こと以外に警察官から声をかけられる理由はなかった、と認識していると回答した。
在日アメリカ大使館による警告が2022年に国会でも取り上げられた後、警察庁は全国の都道府県警察に対して調査を実施。人種や国籍などを理由とした職務質問に関する調査の結果、2021年中に6件で「不適切・不用意な言動があった」と認定している。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「『外国人ふう』の見た目で犯罪を疑うのは人権侵害」人種差別的な職務質問を巡り提訴へ