日本新聞労働組合連合(新聞労連)は1月19日、2023年度の新聞労連ジャーナリズム大賞を発表した。日本の警察官による人種差別的な職務質問の問題に迫った「レイシャル・プロファイリング」を巡るハフポスト日本版の一連の報道(國﨑万智記者)が、疋田桂一郎賞に選ばれた。2006年に新設された同賞は、「人権を守り、報道への信頼増進に寄与する報道」に対して授与される。
警察などの法執行機関が、人種や肌の色、民族、国籍、言語、宗教といった特定の属性であることを根拠に、個人を捜査の対象としたり、犯罪に関わったかどうかを判断したりすることは「レイシャル・プロファイリング(Racial Profiling)」と呼ばれる。
委員による選考では、「日本に暮らす外国人、とりわけ有色人種が直面している警察官による人種差別的な職務質問の実態を鋭い問題意識を基に報じた。在日外国人や海外にルーツがある人 329人から体験談を集めたアンケートからは、容貌や発音を基にした露骨な差別の実態が鮮明に浮かび上がる」などと評された。
ハフポスト日本版の國﨑万智記者は2021年以降、日本の警察によるレイシャル・プロファイリングの実態を継続して取材・報道してきた。2023年には、全国の47都道府県警察に対して人種差別防止の取り組み状況を調査し、警察官による人種差別を防止するためのガイドラインを策定する警察が「ゼロ」である実態を明らかにした。
さらに、「外国人に対して積極的に職務質問するよう教え込まれた」と証言する元警察官へのインタビューでは、レイシャル・プロファイリングを生み出す警察内部の差別的な教育の問題を報じた。
<日本のレイシャル・プロファイリングを巡るハフポスト日本版の記事一覧はこちら>
2023年度の応募総数は、前年度を11点上回る33作品だった。選考委員会の総評では、ハフポスト日本版の相本啓太記者の以下の記事も取り上げられた。
・捕手を「女房役」や「正妻」と表記。夏の高校野球を報じる新聞記事に感じたこと
・「妻の育休期間が終わればどうすれば……」私が新聞記者を辞めた理由は「子育て」だった
総評では相本記者の2本の記事について、「捕手を『女房役』『正妻』と表記する高校野球報道や、自身の育児体験から感じた男性中心の職場への違和感を率直に記し、旧態依然としたメディア業界の問題点を提示した」と評した。
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他の受賞作品は以下の通り(敬称略)。
▽大賞(3作品)
・障害者不妊処置問題のスクープと一連の報道(共同通信社「障害者不妊処置問題」取材班)
・河井克行元法相の大規模買収事件への安倍政権幹部関与疑惑のスクープ(中国新聞社「決別 金権政治」取材班)
・人権新時代(西日本新聞社「人権新時代」取材班)
▽優秀賞(4作品)
・連載・キャンペーン報道「アカガネのこえ 足尾銅 山閉山50年」(下野新聞社編集局「アカガネのこえ」取材班)
・ふつうって何ですか?―発達障害と社会(信濃毎日新聞「ふつうって何ですか?―発達障害 と社会」取材班)
・連載「カビの生えた病棟で―神出病院虐待事件3年」(神戸新聞社赤穂支局・小谷千穂 、報道部・前川茂之)
・防衛力の南西シフトなど、激化する沖縄の基地負担に関する一連の報道(琉球新報編集局「南西シフト」取材班)
▽特別賞(3作品)
・関東大震災に際しての朝鮮人虐殺事件を巡る一連の記事(毎日新聞社・後藤由耶、南茂芽育、栗原俊雄)
・長崎県の離島を巡る一連の報道(長崎新聞社編集局「離島取材班」)
・連載「自衛隊南西シフト」~国境の島・与那国と八重山諸島を中心に~と一連の報道(八重山毎日新聞編集センター編集部「自衛隊南西 シフト」取材班)
▽専門紙・スポーツ紙賞(1作品)
・3本指に込められた思い(日刊スポーツ・平山連)
【アンケート】
ハフポスト日本版では、人種差別的な職務質問(レイシャル・プロファイリング)に関して、警察官や元警察官を対象にアンケートを行っています。体験・ご意見をお寄せください。回答はこちらから。
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レイシャルプロファイリング巡るハフポスト報道、新聞労連・疋田桂一郎賞を受賞「露骨な差別の実態、鮮明に」