旬を迎えた新海苔が風味豊かに出回る時季です。忙しい時にさっと食べられるおにぎりや巻き寿司、またお弁当にと活躍する海苔には裏と表があり、巻き方によって食感が変わるのをご存知ですか。
詳しい話を東京築地の海苔専門店、伊藤海苔店の四代目 伊藤信吾さんに伺いました。
おにぎりなどに巻くのは深緑色の焼き海苔ですが、焼き海苔にする前の板状の海苔は「乾海苔」と呼ばれ、紅色に見えるそうです。
「現在養殖されている海苔はスサビノリといい、紅藻類(こうそうるい)に属しています。紅藻類はクロロフィルの他に赤・青の色合いをもった成分を含んでおり、海では緑・赤・青の3色が混ざり合って紅色に見えます。これを板状に加工した乾海苔は、黒に近い紅色をしています。
この乾海苔を焼くと熱に弱い赤と青は色を失い、熱に強い緑色だけが残るため、濃い緑色に仕上がります。そのため焼き海苔は乾海苔とは色味が異なる深緑色をしているのです」(伊藤さん)
おにぎりなどに海苔を巻く際には美味しく見えるコツがあると言います。
「生海苔を板状に加工するには、洗って刻んでからすだれ(海苔簾)に広げて乾燥させます。
現在は機械化が進んで全自動乾燥機のすのこへ流し込み乾燥させることも多くなっていますが、いずれにしても干し上がった時、すだれやすのこに触れていない面はツルツルになり、触れている面はザラザラになります。
ツルツルしている方が海苔の表面で、ツヤがあって美しく、見た目も良いのです。そこでおにぎりや巻き寿司を作る際には表が出るように、ご飯に接する方が裏になるようにします。こうすると海苔の美しい面が出るので美味しそうに見えます。また、一般的に食感も良くなるとされています」(伊藤さん)
海苔には全国統一の規格があり、作るものに適したサイズもあるそうです。
「板状の海苔には全国統一の縦21cm×横19cmという規格があり、これを『全形(全型)』と呼びます。そして、全形を縦半分にしたものを『半切』、3分の1にしたものを『三切』、6分の1にしたものを『六切』と呼びます。
太巻き寿司を作る際には全形、おにぎりや手巻き寿司、細巻などには半切、軍艦巻きにするなら六切が向いています。
また、おにぎりに海苔を巻く際、ご飯全体を包む場合は半切、横からご飯を見せたい場合は三切を使うとよいでしょう。
今は温かいご飯をふわっと握って海苔で巻いて、海苔がパリパリしているうちに食べるのが流行っています。半切を使ってご飯全体を包めば食べやすくなりますが、お好みの大きさで楽しんでみてください」(伊藤さん)
収穫したての新海苔を上手に使って、おにぎりや手巻き寿司を味わってみませんか?
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