【もっと読む】NHK女性アナ、茨城県南部の地震速報をパーカー姿で伝える。「緊急性伝わる」の声にアナ経験者が思うこと
2024年元日、石川県に最大震度7の地震で甚大な被害をもたらした「令和6年能登半島地震」。大津波警報が発令されると、地震報道をスタジオから伝えたNHKの女性アナウンサーは「高台へ逃げてください!」「今すぐ避難!」などと強い口調で避難を呼びかけた。
このNHKの地震・津波報道には様々な声が寄せられた。SNSには「必死さがひしひしと伝わってきた」「呼びかけのおかげで避難ができました」との声がある一方、一部では「ちょっと怖い」「大げさだ」などとネガティブな声もあった。
そんな中、NHKの伊藤海彦アナウンサーは1月2日、自身のXでNHKの地震災害報道に関する考え方を紹介。その内容に反響が広がっている。
NHKは元日の大地震発生直後、当時放送していた番組を中断し、地震・津波に関する情報を伝える報道に切り替えた。
大津波警報が発令された際、スタジオから情報を伝えたのは同局の山内泉アナだった。地震発生後、日本海沿岸には大津波警報・津波警報・津波注意報が相次いで発令された。
「『ここは大丈夫だ』と思うのは危険です。情報を待って逃げ遅れないで下さい!」「可能な限り高いところへ逃げること!」「今すぐ避難!今すぐ避難!東日本大震災を思い出して下さい!」「一度逃げたら途中で引き返さないでください!」
山内アナは強い口調でこのように繰り返し、被災地の人々に迅速な避難を促した。その表現は「絶叫」とも受け取れるようなもので、日頃冷静に情報を伝えているアナウンサーの非常時の対応に、状況の深刻さを感じ取った人も多かったようだ。
NHKの伊藤アナは自身のXで2日、「私たちNHKのアナウンサーが強い口調で呼びかけをするのには理由があります」とつづり、メディアプラットフォームnoteに掲載された「NHK取材ノート」による文章をシェアする形で投稿した。
noteは2021年7月に投稿されたもので、タイトルは「『東日本大震災を思い出してください!』その時、ことばで命を守れるか。NHKアナウンサーたちの10年」。
文章ではまず、地震や津波が発生したことを想定した緊急報道訓練が行われていることや、「命を守る呼びかけ」というハンドブックの存在が紹介された。
文章の主な内容は、東日本大震災に関する報道の反省などを当時の災害報道を担当した複数のアナウンサーが語るものだ。
大地震が起きた際の放送局の役割とは何か。文章では「初動」の重要性について、次のように綴られている(以下、noteに掲載された文章より一部を引用)。
「仮に放送で人の命を守れるということがあるとすれば、まずは初動の数十分だ。今回(東日本大震災)でいうと最初の津波が来る前の30分で、アナウンサーは何ができるか。津波が到達したときに何ができるかだ」
「ふだんは礼儀正しくしゃべっているアナウンサーが、突然モードを変えてことばを発し出す。本当にやばいときは、やばいんだとパニックにさせてもいい、というぐらいの強い表現も必要ではないか」
「いつもは冷静なアナウンサーが、ある瞬間を境に叫び始める。だからこそ効果があるという考え方です。逆に言えば、アナウンサーは今が異常時だと、ピンと来なければならない。経験と知識がより求められる」
文章ではそのほか、「冷静、沈着なアナウンスに感じた限界」などとして、東日本大震災の時の反省が詳細に書かれている。
今回の能登半島地震でも耳にした「東日本大震災を思い出してください」というアナウンサーの言葉。
NHKのアナウンサーがそのように伝える理由については「『自分だけは大丈夫』『この地域は大丈夫』という思い込み、『正常化の偏見』を打ち破って避難してもらうには、あの震災のことを思い出してもらうのが効果的という考え方」としている。
震災当時、東北に勤務していたアナウンサーや現地を取材したアナウンサーからは、「つらい出来事を思い起こさせ、被災者を傷つけないか」という懸念や意見が出されたものの、このアナウンスが採用されたという経緯も紹介されている。
異例とも言えるアナウンスやNHKアナの「絶叫」は、過去の震災報道の検証と反省が活かされたものだった。
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能登半島地震、NHKアナウンサーはなぜ「絶叫」したのか。異常なアナウンスが生まれた理由「本当にやばいときはやばいんだと」