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資生堂は11月28日、最新の研究成果を発表するカンファレンス「Shiseido Innovation Conference 2023」を開催した。
資生堂の岡部義昭副社長は、「研究成果発のイノベーションと、生活者発のイノベーションを掛け合わせ、スピード感を持ってイノベーションの最大化を目指すのが、私の大きな役割」と話す。
岡部氏はマーケティング出身だが、マーケティングの旗振り役に加え、2021年からは研究開発(R&D)のトップも務めている。その「異色」の人事に、資生堂が変革に向けて動き出していることがうかがえる。
資生堂はスキンビューティーにおける新たな研究成果の他、サステナビリティ・イノベーションや新たな領域への進出に動きを見せた。資生堂は一体どう進化していくのか。
資生堂は2025年までに100%サステナブルな容器を、2026年までにカーボンニュートラルを目指すなど、サステナビリティの実現に向けた目標を掲げ、循環型のビジネスモデルを推進してきた。
岡部氏が強調したのは、「サステナビリティへの取り組み」と「容器の機能性やデザイン性」の両立をし、そのベネフィットを生活者へ届けること。
その一例が、2023年3月に発売した化粧水「オイデルミン」。「ボトル製造」と「中味液充填」をワンステップで行うことでCO2排出量を削減する容器技術「LiquiForm(リキフォーム)」を用いた容器を使っている。
オイデルミンは各ファッション誌の上半期ベストコスメ賞31冠、美容誌3誌で最優秀賞を受賞するなど、大きな支持を集めたという。
「さらに私たちは、容器だけではなく、原料も『循環型』にする研究開発にも取り組んでいきます」(岡部氏)
資生堂は7月、藻類を基点にサステナブルな産業を構築するプロジェクト「MATSURI」に10億円の出資と研究開発を中心とした戦略協業契約の締結を発表。容器だけでなく化粧品の原料の開発にも乗り出している。
藻類は光合成によってCO2が削減できるだけなく、少ない水で、砂漠や荒地でも育てることができ、タンパク質やオイルがふんだんに含まれている。そのため、化石燃料に代わる燃料のほか、プラスチックや食料、化粧品など、多種多様な分野の原料として使えることが期待されている。
同社ブランド価値開発研究所の大山志保里氏は、「150年続いてきた企業として、これからますますサステナブルに存在し続けるために、今がまさに転換期だと思ってます」と話した。
「藻類という新しい素材が、化粧品の使用性など新しい価値を生活者にもたらすことができるのか、夢のあるところだなと思っています。現在はまず第一歩として、原料メーカーと契約を締結し、藻類を化粧品に採用可能な原料にすることを目指しています。2025年までにプロトタイプの開発、2030年までに商業化を目指します。化粧品だけでなく、食品などへの活用も見越しています」(大山氏)
生物多様性や自然資本へどのような危機感を抱いているのか。岡部氏は「資生堂という社名は、中国の古典『易経』の『万物資生(ばんぶつとりてしょうず)』から来ています」と言う。
「『全てのものが大地から生まれ、大地に帰っていく』という意味で、まさに150年前にこの循環型、サステナビリティの社会を予言していたかのようです。創業からのこのDNAと、現在のお客様のインサイトを的確に捉える。この双方から資生堂がやらなくてどうする、そんな気持ち取り組んでいます」(岡部氏)
また、資生堂は新たにウェルネス領域へ展開。同社みらい開発研究所の岡村智恵子氏は、「例えば自律神経や握力などと肌のつながりや鼻の骨格が実は肌の内側の構造と関わっていることなどが見い出されてきています。このように肌と体の心の繋がりを明らかにして独自の美のアルゴリズムを構築し、新ブランドへ実装していきます」と説明した。
資生堂は9月にインナービューティー事業を始動させ、ツムラとカゴメとの共創を発表したが、そのコラボレーションによる新商品が2024年2月に発売が予定されているなど、確実に歩みを進めている。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「資生堂がやらなくてどうする」容器だけでなく、原料も「循環型」へ。転換期を迎える資生堂が目指すイノベーションとは