Appleが10月31に発表した「MacBook Pro」シリーズでは、M3、M3 Pro、M3 Maxチップを登載した3つのモデルが登場しました。しかしこの中で、M3 Proチップについては、前世代からあまり進化していないようです。
*Category:テクノロジー Technology *Source:Ars Technica ,Jimmy Tries World
Appleはアピールしませんでしたが、M3シリーズの中でも、明らかに目立っていたのはM3 Proチップでした。これは前世代から大きく飛躍したからではなく、Appleがトランジスタ数、CPUとGPUのコア数、メモリ帯域幅といった主要スペックを前世代から削減していたからです。
トランジスタ数は直接その性能を示すものではありませんが、トランジスタを追加することは、チップの性能を向上させる主な方法の1つです。M3とM3 Maxのトランジスタ数は、M2と比べて大幅に増加しており、M3は200億から250億、M3 Maxは670億から920億となりました。一方M3 Proは370億個で、M2 Proの400億個から減少しています。
また、M3 Proに含まれるCPUコアの数はM2 Proと変わらないものの、構成が大きく変更されています。M2 Proが8つの高性能コアと、4つの小型効率コアを搭載していたのに対し、M3 Proは6つの高性能コアと6つの小型効率コアを搭載しています。CPUに比べ、M3 ProのGPUはそれほど大きく後退していないものの、それでも最大19コアから最大18コアに減少しました。
さらに注目すべきは、メモリ帯域幅(データの最大転送速度)が、200GB/秒から150GB/秒に低下している点です。これは前世代のM2 Proどころか、M1 Proにも劣る数値です。
テックメディア「Ars Technica」はこれについて、実際に14インチ「MacBook Pro」でテストしています。同メディアによれば、シングルコアのパフォーマンスでは、パフォーマンスは約15%向上していたとのこと。Appleは通常、チップのラインアップ全体でシングルコアの性能をほぼ一定に保っており、M3 Proはこれらのシングルコア・テストのすべてでM3 Maxとほぼ同じ性能を発揮しています。
一方マルチコア性能については、M3 ProはM2 Proと変わらない数値となっています。「Ars Technica」によれば、高効率コアと小型効率コアの性能向上が、CPUの構成変更によってほぼ相殺されているとのこと。
電力効率についてはやや向上しており、CPUベースのHandbrakeビデオエンコードテストでは、M3 ProはM2 Proより少し速く、消費電力は平均36Wから平均30Wへと下がっているとのこと。ただし「Ars Technica」は「大きな変化ではない」と指摘しています。
テック系YouTubeチャンネル「Jimmy Tries World」によるM3 Proのベンチマークテストでも、目立った性能向上は見られませんでした。また、GPUベンチマークやゲームのFPS計測では、若干の低下すら見られます。
「Jimmy Tries World」はM3 Proの性能について「正直なところ、がっかりしている」と述べ、Appleのこの決断は「M3 Maxとの差別化を測るためのものではないか」と指摘しました。
「Ars Technica」はM3 Proを、Appleシリコン登載Macが登場して以来「最も奇妙なチップ」と評しました。同メディアは一方で「Appleにとっての利点は明らか」と述べています。
Despite modest-at-best gains in most of our tests, the benefits of a smaller M3 Pro chip to Apple are clear. A smaller chip will be cheaper to produce in the long run, padding Apple’s profit margins and/or giving the company some latitude to keep prices level despite inflation and rising prices for any other components. Giving the Max a clear advantage in both CPU and GPU performance will also presumably push some users into upgrading who otherwise wouldn’t have.
— 引用:Ars Technica
訳:私たちのテストのほとんどで小幅な利益しか得られなかったにもかかわらず、Appleにとってより小さなM3 Proチップの利点は明らかだ。より小さなチップは、長期的には製造コストが安くなり、アップルの利益率を水増しし、インフレや他のコンポーネントの価格上昇にもかかわらず、価格を維持する余裕を与える。CPUとGPUの性能の両方でマックスに明確な優位性を与えることはまた、おそらくそうでなければアップグレードしなかったであろう一部のユーザーをアップグレードに追い込むだろう。
しかし消費者目線では、前モデルからM3 Pro登載「MacBook Pro」に買い替えるメリットはほとんどないといっていいでしょう。一方で、M1世代やインテルMacからの乗り換え先としては、M3 Pro登載「MacBook Pro」は有力なモデルとなりそうです。
オリジナルサイトで読む : AppBank
M3 Pro登載「MacBook Pro」の性能が〝残念〟なワケ