秋は例年、交通死亡事故が増加する季節です。警察庁のまとめでは、昨年(2022年)は全国の死者数が9月の222人に対して10月は261人、11月は252人となっています。
原因としては、日没時刻が早まることで、車の運転者から歩行者が見えにくくなる「薄暮時間帯」と帰宅時間が重なることなどが挙げられます。また、秋から始まる特有な気象現象である濃霧の発生も要因と考えられます。
濃霧のとき、前方の車や歩行者はどう見えるのか。綿密な実験を行って検証したというJAF(日本自動車連盟)の実験をもとに解説致します。
気象庁では、視程(水平方向に見通せる距離)によって霧を3段階に分けています。靄(もや)は、視程が1km以上10km未満。霧(きり)は1km未満、濃霧(のうむ)はおよそ100mしか見通せない状態です。
秋になると霧が多く発生するのは、朝晩の気温が昼間に比べて低くなり、空気中の水分が凝結されて微小な浮遊水滴ができるためです。
北部や高地では夏に多く発生しますが、内陸部では秋がもっとも発生しやすい時期となります。
地形的に霧が発生しやすいのは、内陸部の標高の高い山間部や盆地などです。霧ヶ峰(長野県茅野市・諏訪市・下諏訪町)など、地名に『霧』が含まれている場所は、地形や気象状況から霧の発生率が高い場所だといえるでしょう。
昼と夜の寒暖差が激しくなる秋は、特に夜から朝にかけて靄や霧が濃霧となりやすいので、運転に気をつけなければなりません。
JAFでは、濃霧の中で前方の車両はどう見えるかテストを行い、検証しました。条件は視程30mと60mです。
前方の停止車両は、無灯火、テールランプ点灯、リアフォグランプ点灯、ブレーキランプ点灯の4パターン。自動車のヘッドライトは、昼間が下向き、夜間はロービーム(下向き)とハイビーム(上向き)でテストしました。
結果は上表のとおりです。視程30mでは、前方の停止車両が無灯火の場合がもっとも見えにくく、テールランプを点灯してもかなり見えにくい状態でした。
一方、リアフォグランプを点灯すると、かなり手前から見えました。また、ブレーキランプもかなり手前から見えるので、停車中はブレーキランプを点灯させた方が安全です。
さらに、ヘッドライトをハイビームにすると光が遠くまで届かず、濃霧の中ではかえって前方が見えにくいこともわかりました。
視程30mの倍くらい見通しがきく視程60mの結果も見てみましょう。
昼間は4パターンのどれも見えづらいことがわかりました。夜間の場合は、ヘッドライトをロービームにした場合とハイビームにした場合で大きな差が出ました。4パターンすべてで、ヘッドライトをロービームにしたほうが前方の停止車両を早く発見できたのです。
これは、濃霧の中でヘッドライトをハイビームにすると、灯りが霧に乱反射して、かえって視界が悪くなるためだと思われます。
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
霧の中の運転、前の車はどう見える?ハイビームとロービーム、どっちが良い?画像で詳しく解説します