ほぼ全ての授業で「気候変動」を学ぶフィンランドの学校に行ってみた。15歳に「欲しい服が環境に悪かったら?」と尋ねると…

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フィンランド・ヘルシンキの中心地から約10km北東に進んだ場所にあるラトカルタノ総合学校。中学1年生の地理の授業で、ユハ先生はグループに分かれた生徒たちに洪水や山火事、干ばつや飢餓の様子が写った写真を渡した。

「この写真と地球温暖化がどう関係するか考えてみてください。Googleを使っても、ChatGPTを使ってもいい。ただし、データが確かかどうかソースを調べて見極めてみて」

フィンランドでは、日本の学習指導要領に当たる「コアカリキュラム」に「気候に関する教育を行うこと」と記載されていて、この学校では「環境」という科目や「生物」「化学」などの他にも、英語や数学などほぼ全ての教科を横断して気候変動について学ぶ機会があるという。

実際に生徒たちはどんなことを学び、実践しているのか。9月20日、現地を取材した。

フィンランドのラトカルタノ総合学校

日常的に「環境への配慮」を学ぶ

日本でいうところの小学1年生から中学3年生まで約860名の生徒が在籍しているラトカルタノ総合学校。

英語の教師で海外からの視察の受け入れも担当しているセダ・アルトゥンベイさんは、「本校は『普通科』の学校ですが、いくつかの特徴があります」と説明する。

「ここはユネスコ加盟校で、人権や民主主義に関する教育にも力を入れています。また、近年ではウェルビーイングも重要なテーマです。学校には保健師のほか、臨床心理士や生徒間の問題解決をサポートするソーシャルワーカーも常駐しています」

英語の教師で海外からの視察の受け入れも担当しているセダ・アルトゥンベイさん

また、2007年から、環境に配慮した行動を日常的に実践していることを意味する「グリーン・フラッグ・スクール」に認定されている。

「生徒たちは様々な教科を通じて気候変動や環境問題について学んでいます。例えば私が担当している英語では、社会的な事象にまつわる単語の学習を通じて環境問題について伝えています」

生徒主体のグループで週に1回集まり、どうすればもっと環境に良いことができるか話し合って実行することも。さらに、先生の中にも環境チームがあり、チャリティーウォークなどのイベントを企画するなど、様々な角度から実践的に学んでいるそうだ。

ラトカルタノ総合学校の食堂

気候変動を知って、生徒は不安にならない?

ここ数年、ウクライナとロシアの戦争もあり、不安を感じている生徒も少なくないそうだ。アルトゥンベイさんは自身の授業で気候変動について伝える際にも、不安を煽りすぎないように注意しているという。

「『遅すぎることはない』と伝えています。生徒たちだけでなく、世界中みんなで取り組めば、気温上昇を1.5度に抑えられる世代なんだということ、そしてあなたたちは自分で変化を起こせるんだと自信を持ってもらいたいと伝えています」

冒頭の地理の授業でも、教師のユハさんは「海面上昇によって25万人が故郷から出なければならない、と想像してみてほしい」と問題の深刻さを伝えると同時に、「私はみんなを怖がらせたいわけじゃない」とも生徒たちに言った。

「怖がらせる意図はないが、思考停止する必要もない。氷が溶けても、海面上昇には長い時間がかかるだろう。ただし、すでに海面が上昇している場所もある。これが現実です。私たちは注意深く観察し、何かが起こった場合に備えなければなりません」(ユハ先生)

地理を教えるユハ先生

実際の生徒たちの声は?

15歳のラルフさんは、「気候変動によって、水不足や燃料価格の高騰、さらに自然災害など、大きな影響が出ていることを学んでいます」と話す。

「学校生活の中で実際に行動しています。例えば給食の献立を、肉から野菜にしたり、ヴィーガンメニューを増やしたりしました。資源の無駄遣いをやめて、ゴミを減らし、リサイクルするなど、環境保護のためにできることをしています」(ラルフさん)

記者から「どうしても欲しい服が環境に悪かったらどうする?」と聞かれると、「私はファッションが大好きだけど、どんなに可愛くても質が悪くて環境に悪いものなら、買う意味がないと思う」とラルフさんは答えた。

ラトカルタノ総合学校に通う15歳のラルフさん(右)とサンミさん(左)

同じく15歳のサンミさんは、自身が履いている靴を指差しながら、「これは2年前に買いました」と話し始めた。

「この靴は本革で、ちゃんとケアをしたら10年くらいは履けると思う。環境に悪いとわかっているものは買わないし、ちょっと高くても長持ちするものを買って、その物のライフサイクルの最後まで使ってあげたいです」(サンミさん)

他にも、「そもそも新しいものはあまり買わないで、今あるものを活用するようにしています」「電気代が高くなったから、無駄な電気を使わないようにしている」など、気候変動に対して日常的に実践していることを話してくれた。

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本校のテーム・ラッパライネン校長と通訳を担当したセルボ貴子さんらとの会話で印象的だったのが、フィンランドで学校は「取り残された島」ではないということだ。

選挙権がない年齢の子どもたちにも関わらず政治家が学校を訪れて会話をしたり、専門家が子どもたちに教えたりする機会も多いという。

また、実際に自身の子どもをフィンランドの学校に通わせているセルボさんによると、フィンランドでは子どもに「〇〇をしなさい」と言うのではなく、「あなたはどう考える?あなたは何がしたい?」とよく聞くそうだ。

「もちろん気候変動に不安を感じている生徒もいますが、こうした教育システムや文化によって、多くの生徒たちは『自分たちが物事に影響を与えることができる』という感覚を持っていると思います」(ラッパライネン校長)

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ハフポスト日本版は、駐日フィンランド大使館より招待を受け、現地の取材ツアーに参加しました。執筆・編集は独自に行っています。

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Maya Nakata