1000万円もらって何も描かれていない作品「お金をもらってドロン」を作ったアーティスト、返金を命じられる

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お金をもらってドロン――。作品のタイトル通りにはいかなかったようだ。

美術館に1000万円以上の制作費をもらい、何も描かれていない作品を作ったデンマークのアーティストが、裁判所から返金を命じられた

クンステン近代美術館でイエンス・ハーニング氏の作品「お金をもらってドロンする」を眺める人々(2021年9月28日)

「お金をもらってドロン」どんな作品?

 美術館から返金を求められていたのは、デンマークのアーティスト、イエンス・ハーニング氏だ。

ハーニング氏は2021年、デンマーク・オールボーにあるクンステン近代美術館から、同氏の過去の作品「デンマーク人の平均年収」と「オーストリア人の平均年収」を再現するよう依頼された

両作品はデンマークとオーストリアの平均年収を実際の紙幣を使って表現したもので、美術館は報酬とは別に、作品に必要な53万2549クローネ(約1128万円)をハーニング氏に支払った。

ところが展示会が始まる直前、ハーニング氏は美術館に「頼まれた作品ではなく、新作を作った」とメールで連絡

新作のタイトルは「お金をもらってドロンする」で、送られてきたのは額縁に入った真っ白なキャンバスだけで、紙幣は全く使われていなかった。

予定とは違う展開になったものの、クンステン近代美術館のラッセ・アンダーソン館長はこの作品を見て思わず笑ったという。そしてアーティストのユーモアと受け止め、労働とアートをテーマにした展覧会に予定通り展示した。

その一方で、美術館はハーニング氏に、契約通り展示会が終了する日にお金を返却するよう求めていた。

しかしハーニング氏は、作品は「盗みではなく、契約の不履行。そして契約の不履行は、作品の一部なのです」とデンマークのラジオ番組で説明

美術館からの報酬が少なかったことにインスピレーションを得た作品であり「私と同じようにひどい労働条件のもとで働かされている人たちにも、同じ行動をとるようお勧めします。ひどい仕事をさせられてお金を支払われていない、もしくは仕事に行くためにお金を支払うように求められているのであれば、奪えるものを奪って逃げたほうがいい」と述べて、返金しない意思を示した。

これに対し、アンダーソン館長は「私たちは財政が豊かな美術館ではありません」「資金をどのように使うべきかを注意深く検討せねばならず、余裕以上の支払いはしない」とガーディアンの取材で語っていた。

そして、ハーニング氏が展示会終了後に返金しなかったため、契約不履行で裁判を起こしていた。

裁判でクンステン近代美術館は、53万2549クローネ全額を返すように求めていたものの、デンマークの裁判所は9月18日の判決で、展示費用と制作費を差し引いた49万2549クローネ(約1043万円)を返却するよう命じた

ハーニング氏には判決の後、「ショックです。しかし同時に、想像していた通りです」とデンマークの公共放送DRに語った。

一方アンダーソン館長は、4週間の控訴期間はコメントは差し控えると声明で述べている。

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1000万円もらって何も描かれていない作品「お金をもらってドロン」を作ったアーティスト、返金を命じられる

Satoko Yasuda