1: 通りすがりのコメンテータ全てが下がってきている
足許、中国経済に“デフレ”の圧力が高まっている。
2022年10月、川上の物価の変化を示す、生産者物価指数(PPI)は前年同月比マイナス1.3%と落ち込んだ。
それ以降、今年7月まで10か月連続でPPIは下落した。不動産バブル崩壊で鉄鋼やセメントなど、多くの分野で供給能力が需要を上回る状況になっている。
2023年7月、中国の消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した。不動産バブル崩壊によって家賃は下落、家具など耐久財の需要も減少した。
スマートホンやパソコンの需要も弱い。そうした状況下、中国では個人消費にも盛り上がりがみられない。どうしても経済全体でデフレ圧力が強まることになる。
日米欧などでは物価は高止まりしており、むしろインフレ圧力と戦っている。それだけ、中国経済の特殊事情によるデフレ圧力は際立っている。
今後、不動産分野や地方政府傘下の“地方融資平台”のデフォルト懸念も高まることが想定される。それは、中国経済の需要を一段と押し下げることになりかねない。
その場合には、デフレ経済はさらに鮮明化するだろう。景気が長期の停滞に向かう可能性もある。中国経済の“日本化”懸念は高まっている。
テスラやBYDまで…
2022年10月以降、中国経済ではすう勢的に物価の下落圧力が高まった。2023年3月、PPIの下落率は同2.5%、4月の下落率は同3.6%に拡大し、7月の下落率は4.4%だった。
その要因として、不動産バブルの崩壊などで建設やインフラ投資が減少し、過剰な生産能力の問題は鮮明化した。
消費者物価指数(CPI)の下落圧力も強まった。2022年10月、同2.1上昇したCPIは2023年3月に0.7%に上昇幅を縮め、7月にマイナスに陥った。
品目別にみると、自動車や家具、デジタル家電などの耐久財の価格は下落した。EV分野ではテスラ、BYDなどの値引き競争が激化した。
2022年5月以降は家賃もマイナスだ。飲食、宿泊、交通などに関しても基調として需要は弱含み、価格の下落リスクは高まっている。
6月の端午節連休中に国内旅行に出かけた人は、前年の同じ連休期間比で32.3%増の1億600万人だった。
一方、旅行関連の支出はコロナ禍が発生する以前の2019年の実績を5.1%下回った。
不良債権処理はどうするのか
不動産バブルが崩壊で資産価格が下落したことで、節約を志向する中国の家計は増えたはずだ。共産党政権は、金融緩和や不動産関連の規制緩和など景気刺激策を発表しているが、今のところ持続性のある効果は出ていない。不動産などの投資を積み増して成長率を高める経済運営が限界を迎えつつある中、中国のデフレ圧力は経済指標が示す以上に強いとみるべきかもしれない。
今後、中国経済のデフレ環境は一段と鮮明化し、景気の停滞も長引く恐れが高まっている。これからの中国経済を考えるとき、1990年初頭のバブル崩壊後に我が国が迎えた経済の展開はそれなりに参考になるだろう。
バブル崩壊後、わが国では不良債権処理が遅れた。1997年には“金融システム不安”が起き、戦後最悪の経済状況に落ち込んだ。
それに伴い、わが国はデフレ経済に陥った。経済全体で債務の返済を急ぐ企業や家計などは増え、需要はすう勢的に下落基調を辿った。
足許の中国経済もよく似た状況にある。不動産デベロッパー、地方融資平台、さらに理財商品のデフォルト懸念は高まった。
それにもかかわらず共産党政権は、今のところ、不良債権処理に本腰を入れる考えを明確に示していない。
中国もデフレ経済が鮮明化
その状況が続くと、わが国が経験したように、徐々に金融システムが不安定化する懸念がある。銀行などが成長期待の高い企業や個人に資金を融通することは難しくなる。人々が成長への期待を持つことも難しくなる。
景気停滞が長引くと、給料がカットされリストラも増えるかもしれない。そうなると、家計部門はこれまで以上に節約をしなければならない。
1990年代以降、わが国では心理が先行し、デフレ経済は鮮明となり景気は長期の停滞に陥った。これを“日本化”と呼ぶ。そこから脱却することは、政策金利をマイナスにしても需要回復は容易ではなかった。
これまでの歴史を振り返ると、大型のバブルが崩壊した場合、政府は大手金融機関などに公的資金を注入し不良債権処理の促進を図ることになる。
続きはソースで
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f74b19336fc59ff0eca40776b540d0feae27fe78?page=1
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