神宮外苑の再開発に「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」ユネスコ諮問機関が「世界に類を見ない文化遺産」

神宮外苑のいちょう並木

神宮外苑再開発とは?>>【5分でわかる】神宮外苑の再開発、何が問題になっているの?知っておきたい5つのこと

ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)と日本イコモス国内委員会が9月7日、東京・神宮外苑の再開発に対して「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」を出した。

パリに本部を置くイコモスは、世界の文化財保護に携わる国際NGOだ。ヘリテージアラートは危機的な状況に置かれた文化遺産に対する警告や、保存、解決策促進のために出される。

イコモスは今回のヘリテージアラートで「世界的に有名な公園である神宮外苑で3000本もの樹木が伐採され、市民との協議なしに高層ビルが建てられようとしている」として、事業者や東京都などに対して計画を見直すよう求めている。

神宮外苑を「卓越した文化遺産」と評価

神宮外苑は約100年前に、「永遠の杜」である神宮内苑の対になる「人々に開かれた杜」として、国民の寄付や奉仕活動によって作られた。

イコモスは「市民によって作られた神宮外苑は、世界の都市公園の歴史において、類を見ない卓越した文化遺産だ」とその価値を評価。

さらに、都市公園の役割について「人々の憩いの場であり、豊かな生物多様性を維持し、ヒートアイランド現象を和らげ、大規模地震などの自然災害時の避難所としての役割も果たす」と説明している。

神宮外苑

神宮外苑の再開発では三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本スポーツ振興センター(JSC)が主な事業者となり、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替えるほか、高さ190メートル、185メートル、80メートルの高層ビルが建築される計画だ。

事業者によると、その過程で743本の高中木(3メートル以上の樹木)が伐採される。また、ツツジなどの小さな低木(3メートル未満の樹木)を含めた伐採数は、一部エリアだけで約3000本になる。

イコモスは「世界の他の公園にはない歴史を持つ神宮外苑が、都市再開発によって差し迫った脅威にさらされている」と警告。

 ヘリテージアラートを出すとともに、事業者や東京都、自治体、国に対し以下の5つを要請している。

1. 事業者の三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事への要請:神宮外苑の再開発計画から撤退し、国際企業や宗教組織、スポーツ促進団体として、社会的、倫理的責任を果たすこと

2. 東京都への要請:高層ビルの建築が市民の公園利用の権利を永遠に奪うもので、環境影響評価に誤りが含まれていることを認識し、神宮外苑再開発に関する都市計画決定を見直すこと

3. 明治神宮への要請:神宮外苑が「美しい公園として永遠に維持する」という約束のもとに、市民からの寄付と奉仕活動によって作られたことを考慮して、プロジェクトから直ちに撤退すること

4. 港区、新宿区、渋谷区への要請:将来世代の利益のために、神宮外苑を名勝指定するための取り組みを行うこと

5. 日本政府への要請:神宮外苑再開発を東京だけの問題と見なさず介入すること

神宮外苑の再開発に対し、日本イコモス国内委員会は、樹木を伐採しない案を提案している。

日本イコモス国内委員会が提案する伐採を伴わない再開発プラン

事業者は9月から高中木の伐採を始める予定としている。ハフポスト日本版はイコモスのヘリテージアラートに対するコメントを、事業者と東京都に求めている。

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神宮外苑の再開発に「遺産危機警告(ヘリテージアラート)」ユネスコ諮問機関が「世界に類を見ない文化遺産」

Satoko Yasuda