東京都・神宮外苑再開発の認可取り消しを求め、市民らが東京都と小池百合子都知事を訴えている裁判で、新たに101名の原告が追加提訴した。
神宮外苑再開発とは?>>【5分でわかる】神宮外苑の再開発、何が問題になっているの?知っておきたい5つのこと
小池都知事がこの再開発計画を認可したのは2月。
原告の山下幸夫弁護士によると、この認可の取り消しを求めて2月に提訴したところ、多くの人が参加を希望したため、今回追加提訴した。
新たに原告になったのは、近隣住民を含めた東京都民やその他の都道府県在住の人たちで、建築家や自営業、教師、主婦など職業や年齢も様々だ。
この追加提訴で、これまで59人だった原告数は合計160人になった。
原告らは裁判で、神宮外苑の再開発計画が違法だとして認可取り消しを求めている。
計画が違法と主張する理由の一つが、「公園まちづくり制度」の適用の仕方だ。東京都はこの制度を活用して、建物の高さ制限があった神宮外苑に、高層ビルを新設するなどの再開発を可能にした。
しかし、山下弁護士は8月9日の記者会見で、「これは制度の本来の主旨に反している」と語った。
「この制度は、今まで公園として使われていなかったところを公園にするような制度です。それなのに今回の再開発はそれとは逆に公園を壊し、高層ビルを3つも建てようとしています」
もう一つ、原告が問題視しているのが、認可の前提となる環境影響評価(アセスメント)の審査の仕方だ。
環境アセスメントとは、事業が環境に及ぼす影響について、事業者自らが調査や予測、評価をして、市民や地方自治体などの意見を踏まえながらよりよい事業計画を作り上げる制度だ。
神宮外苑の再開発では、事業者が提出した環境影響評価書に対し、ユネスコの諮問機関である日本イコモスが、「評価書には、調査の誤りや虚偽の報告がある」と指摘し、都知事に適切な対応を取るよう求めた。
山下弁護士は「この日本イコモスの指摘があったにも関わらず、東京都の環境影響評価審議会できちんと審議されないまま、認可に至ってしまった」と述べた。
環境アセスの進め方については、国際影響評価学会(IAIA)日本支部が、科学的な観点から問題があるとして、小池知事に工事の中止などを勧告している。
神宮外苑の再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替えるほか、高さ190メートル、185メートル、80メートルの高層ビルが作られる。
今回原告に加わった、建築士で日本大学や武蔵野美術大学の教授である横河健氏は「神宮外苑は、日本の近代都市計画の最初のランドスケープデザインであり、高層ビルを3本立てるのは、ニューヨークのセントラルパークやロンドンのハイドパークに超高層ビルを作るようなもの。そんな計画があっていいのか」と語った。
高層ビルの一つは伊藤忠商事本社で、1980年に竣工した高さ約90メートルの現在のビルを壊し、2倍以上の190メートルのビルに建て替える。
横河氏は「現在の伊藤忠商事本社ビルは約40年しか経っておらず、耐久性に優れた御影石をふんだんに使った建築界でも有名な建物なのに、なぜ壊すのか」と疑問を投げかけた。
「東京都も国もですが、口ではSDGsと環境に配慮することを言いますが、解体することで大変な量のCO2が排出されますし、廃棄物の処分などを考えると環境破壊になります。そういうことも含めて、我々は後に続く子どたちに何を残すかを、もう少し真剣に東京都は考えていただきたいと思っています」
同じく原告に名を連ねた新宿区議会議員の沢居恵美氏は、「人々に長年大切にされてきた歴史ある場所であるにもかかわらず、再開発には人々の思いに対する敬意が感じられない」と訴えた。
「木を切るのは簡単。でも100年の歴史を作るのは簡単ではありません。人間の営みは地球規模で見たら、ほんのひと時の時間です。自然はその時間以上に大切なもので、私たちは敬意をもって接しなければいけないと思います」
この訴訟に対し、東京都はこれまでの手続きに落ち度はないなどとして、裁判で争う姿勢を示している。
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神宮外苑訴訟、新たに101名の原告が参加「木を切るのは簡単だけど、100年の歴史は簡単に作れない」