キャリアや働き方が多様化し、転職という選択肢もより身近になった昨今。
総務省の労働力調査によると、2022年に転職をした人口は303万人にのぼり、2021年の290万人を上回っている。
一口に「転職」と言っても、スキルアップややりがい、年収や福利厚生など、転職の背景や目的は様々だ。近年は企業が実施するリスキリングの有無が、企業価値と大きく紐づき始めていたり、社会貢献を軸に転職をする人が増えたりもしている。
また、転職のハードルが低くなったことで、人材の定着率が下がることを懸念している企業も少なくないだろう。
そんな中、就職・転職のための情報プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク社が「若手・中堅社会人の転職活動に関する意識調査」の結果を公開した。
約2500人のビジネスパーソン(24歳〜34歳)を対象に実施した同アンケート調査の結果と共に、転職の「今」を見つめる。
調査の結果、アンケート回答者の62.5%が「転職の経験がある」という結果が明らかになった。また、そのうち半数以上をしめる33.6 %が直近3年以内に転職をしている。
「転職したことはない」と回答した人の割合は、昨年12月の調査で41.9%だったのに対し、今回の調査では37.5%と微減した。
新卒一括採用の廃止やジョブ型雇用の推進など、雇用の多様化が加速していることに加え、コロナ禍を通して、ビジネスパーソンが働き方において特に重視する項目も変化しつつあるのかもしれない。
重視する転職先の条件については、転職経験者の45%が「希望条件が概ね叶えば現年収同様でも良い」と回答。「希望条件が叶わなくても年収が上がる事が優先である」と回答した30.2%の約1.5倍だった。
また転職未経験者は、47%が「希望条件が概ね叶えば現年収同様でも良い」、23.5%が「希望条件が叶わなくても年収が上がる事が優先である」とそれぞれ回答。転職経験者よりも2つの回答の差が開いた。
年収以外の物差しを重視して転職をする若手・中堅のビジネスパーソンが増えている背景には、ウェルビーイングという考え方の認知や、スキルアップに役立つリスキリングの拡大もあることも推測できる。
一方で、「希望条件が叶えば現年収から下がってもいい」と回答したのは、転職経験がある人では11.6%、転職未経験者では10.3%と、どちらも1割強に留まっている。物価の高騰や円安をはじめとした経済的な課題に直面している現在、個人の希望を重視しながらも、足元の経済を厳守する傾向も伺える。
転職は増加傾向にあるが、今回の調査で、転職時の情報収集における課題も浮き彫りになった。
転職経験者で、業務内容について「十分に収集できた」「どちらかといえば収集できた」と回答したのは52%だった。企業文化については31%に留まり、うち「十分に収集できた」と回答したのはわずか6%だった。
企業文化における情報収集が十分に実現できていないという現状は、「転職を考えるにあたって感じる懸念や不安」についての回答結果からも見てとれる。
転職経験者と未経験者のそれぞれ4割超が「希望にあった仕事が見つからないかもしれない」と回答。「新しい職場で良い人間関係が築けるか不安」と答えたのは、未経験者では4割に迫り、経験者でも33.9%だった。
オープンワーク社による今回の調査では、転職する若手・中堅のビジネスパーソンが増加傾向にあること、また、転職に対して年収以外のそれぞれの希望を重視する傾向が明らかとなった。今後の課題としては、情報によりアクセスしやすい環境の構築や、企業が積極的に社風を外部に発信してくことが求められることが推察できる。
転職がより身近な選択肢になっている今、企業が社会の風向きに今まで以上に敏感になり、具体的なアクションに繋げていけるか否かが、重要なポイントだ。
人材育成にかかる費用を国が一部負担する助成金「事業展開等リスキリング支援コース」なども活用した、働き手のニーズにもより寄り添った経営が注目されていくだろう。
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若手・中堅の「転職」。重視するのは年収ではない?一番不安なことは?【調査結果】