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「法律上の同性カップルに結婚の権利を認めないのは憲法に違反する」として、全国5地域で性的マイノリティの当事者が国を訴えている「結婚の自由をすべての人に」裁判の1次訴訟は、6月8日の福岡地裁判決をもって、すべての地裁判決が出揃った。
5つの判決のうち、4つが違憲。司法が、速やかに法整備をするよう促す結果になった。
しかし、岸田首相が6月13日の記者会見で「国民にさまざまな影響が出てくる」「国民の理解を得られるべく議論を深める姿勢は重要だ」と述べるなど、国側にこの違憲状態を解消しようとする動きは出ていない。
さらに、6月23日に施行される通称「LGBT理解増進法」には、性的マイノリティではなくマジョリティ(多数派)を配慮する内容が盛り込まれ、当事者から強い批判を招いている。
日本でも結婚の平等(法律上同性同士での婚姻)を実現するためには、国会での法改正が必要だ。
裁判の原告や控訴人らがそのための行動を国会議員に直接訴える院内集会「マリフォー国会」が6月21日、衆議院第一議員会館で開かれた。
東京一次訴訟の小野春さんは、パートナーの西川麻実さんと3人の子どもを育てる中で、家族として扱われず、数々の困難に直面してきたと語った。
「パートナーが次男の入院手続きをできなかったり、周りの子どもが家族の話をする中で、うちの子たちは『家族じゃないだろう』と言われたりして、傷ついてきました」
「(結婚の平等)は政治的なイデオロギーの話ではなく、私たちの生活、命の話です。愛する人と家族になりたいというシンプルの願いを、どうぞ見て見ないふりをしないでください」
同じく東京一次訴訟の大江千束さんとパートナーの小川葉子さんはともに6月生まれだ。
2023年には小川さんが還暦を迎えてふたりとも60代になり、「よくここまで死なずに生きてこれたね」と話したという。
「大変なこともありましたけれども、わたしたちはマジョリティに大変気を遣って、襟を正して生きてきたと思います」
「ただ、これから人生の晩年を迎える中で、気を遣い、埋没して生きていくというのはつらく、きついです。どうかそのようなことのないよう、法案が進んでいくことを望んでいます」
九州訴訟のまさひろさんは、「歴代の総理大臣は『同性婚は我が国の家族の形の根幹にかかわる問題で慎重な検討を要する』と繰り返すだけで、国会内では何の議論も進んでいないどころか、国会議員の差別的な発言が続いています」と指摘した。
パートナーのこうすけさんも「私たちは、好きで裁判をやってるわけではありません。ただ、パートナーと法的にも家族になり、安心してこの国で生きていきたいというその願いのためだけです」と述べ、「一刻も早く同性婚の法制化をお願いします」と訴えた。
同じく九州訴訟の原告で熊本在住のこうぞうさんは、LGBT理解増進法に触れ「同性婚が法制化されることこそ、何より理解増進の効果をもたらすと思っている」と述べた。
こうぞうさんのパートナーのゆうたさんは、4つの地裁で違憲と判断されたことを重く受け取ってほしいと訴え、「来年こそはふうふとして、家族として『ハッピー・プライド・マンス』と心から叫びたいと思っている」と語った。
東京一次訴訟のただしさんは、10代のLGBTQ当事者のうち、約半数が自殺念慮、14%が自殺未遂を経験したという2022年の調査に触れ「差別やいじめを恐れながら、社会に認められない存在として生きるセクシュアルマイノリティは、自己肯定感を保つこと自体がとても困難だと思います」と伝えた。
「国会議員の皆さん、どうかこの国の若者の生命を守ってください」
「日本はLGBTQの人たちを締め付ける国になるんでしょうか?それとも、他の先進国のように、自由と平等の国になるのでしょうか?」
1年前の「第4回マリフォー国会」に参加した時には妊娠中だった、関西訴訟の坂田テレサさん。その時にお腹にいた赤ちゃんは、生後10カ月になった。
坂田さんは「無事に生まれたことは、本当に嬉しい」としつつ「生まれた時からいろいろ不平等なことが発生している」と語った。
「産んでないパートナーは親権がありません。そして産んだ私がアメリカ人のため、アメリカ国籍しか取得できません。この子を守るために2人で一生懸命頑張りますけど、できることは限界があります」
「私たち当事者は特別扱いを求めているわけではなく、平等であるはずの権利をお願いしているだけです。この権利が侵害され続けていることは、真剣な人権問題です。当事者やその家族を守るために、1秒も早く法律の整備をお願いいたします」
5つのうち4つの地裁が違憲とした一方で、「同性カップルが家族となるために、婚姻制度とは別の制度も考えられる」と述べた判決もあった。
しかし、それは原告らが望むものではない。関西訴訟の田中昭全さんは「私たちが求めているのは分離政策ではない」と強調した。
「私たちだけ別の制度をあてがえば、それでいいだろうという話ではないということをちゃんと認識してください」
「私たちは、すでにあるこの婚姻という制度で法的な家族になりたいというだけなのです」
パートナーの河智志乃さんと17年をともに生きてきた東京二次訴訟の鳩貝啓美さんは、「歳を重ねるにつれて結婚という法的保障がない不安が増々つのっています」と語った。
「もう時間がありません。国会での検討を始めていただく段階ではないでしょうか。理解増進法の国会の委員会での審議過程を見ましたが、もう何をどう期待していると言えばいいのかわからなくなっています」
「でも、何も言わなくなったら、伝統的な家族観を重視する政治家が進んで法制度を作ってくれるはずがありません。婚姻平等の実現に力をお貸しください」
同じく東京二次訴訟の山縣真矢さんも、結婚の平等はいつまでも待てるものではない、と言葉を強めた。
「岸田政権の支持率は4割から5割です。世論調査では6割から7割が同性婚に賛成していますが、80%か90%の賛成がなければ、同性婚への国民の理解が得られたとは認識してもらえないのでしょうか?」
「そろそろ私も還暦を迎え、持病も進行しています。私に残された時間はそれほどたくさんあるわけではありません。目の黒いうちに、パートナーの名前が書かれた婚姻届が受理される日を迎えさせてください」
東京二次訴訟の原告でトランスジェンダーの一橋穂さんは「婚姻が認められないのは、パートナーと家族になる仕組みが一切ないということ」と訴えた。
「つれあいが事故にあって救急搬送され、ICUに入っても、私はすぐに入れないと思います。本当に大事な時にそばにいられない。手も握ってやれない。必要な手続きが出来ない。そんな不条理ありますか?」
また、一橋さんは、LGBT理解増進法案の国会審議を見て「胸がえぐられる思いでした」と声を震わせた。
この国会審議では、自民党や日本維新の会の議員や参考人によるトランスジェンダーをバッシングする発言があった。
「これが大人の言うことか、国会議員の言うことかと。私はまだ大人ですから、歯を食いしばってこらえています。でも、これを子どもたちが聞いたらどうしますか?若い人たちに何ていいますか?本当に命の問題だということを、わかっていただきたい」
主催者によると、第5回目となる今回のマリフォー国会には、国会議員44人、代理出席の秘書など含めると71名が参加した。
れいわ新選組の大石あきこ議員は、結婚の平等実現のための議論が進まないことについて「社会は進んでいるのに、遅れているのは国会」と指摘。
立憲民主党の蒲田さゆり議員も「憲法13条は誰もが幸せを追求する権利があると定めているのに、この国で保障されていない。遅れているのは国会だけだ」と同意した。
また、社民党の福島みずほ議員は「裁判で違憲とされ、最もアップデートされてないのは国会だと痛感している」「1日も早く同性婚が実現できるよう、国会で質問し続けていきたい」と述べた。
与党である自民党の牧島かれん議員は「原告の思いを共有するだけでは、政治の役割を果たしていることにはならない」「それぞれの判決の結果を重く受け止めなければならないと思っています」と語った。
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5つの地裁判決は、いずれも原告が控訴したが、裁判所の判断を待たずとも、国会で法律を改正すれば結婚の平等は実現できる。
九州訴訟の原告代理人の森あい弁護士は「裁判で勝たなければできないことではなく、最高裁までいかなくても、国会が立法すれば解決する」と述べ、国会議員に行動を促した。
「(結婚の平等は)この国に一人でも幸せな人や安心して生きていける人を増やしていく話です」
「一人でも幸せに安心して生きられる人が増えるように、弁護団や原告も国会議員の皆様と闘って参りたいと思いますので、これからもよろしくお願い致します」
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「日本はLGBTQを締め付ける国になるのでしょうか?」結婚の平等裁判の原告が国会議員に訴える