ここ最近、FRB(米連邦準備銀行)が利上げを続ける〝タカ派〟姿勢を崩さないことや、SEC(米国証券取引委員会)が大手仮想通貨(暗号資産)取引所のコインベースやバイナンスに対する訴訟をしたといった出来事が続き、ビットコインの価格にはマイナスに働くニュースばかりでした。
ところが、6月21日にビットコインが400万円を突破。逆境にもかかわらず、わずか1週間の間に約50万円という大幅な値上がりを見せました。
— 出典:コインマーケットキャップ
※記事中にある価格などの情報は、特に記載のないかぎり記事作成時点(2023年6月21日午後)のものです。
一体なぜ、この〝ビットコイン爆上げ〟が起きたのか? この記事では「ビットコインはオワコン」という誤解を打ち砕き、今後の値動きを予測する上で絶対に見逃せない〝決定的なイベント〟についてレポートしていきます。
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※ この記事はテックニュースや業界の話題を紹介するものであり、投資の勧誘やアドバイスではありません。暗号資産(仮想通貨)を売買する場合、対象の値動きにより利益を得るチャンスも損失を被るリスクもあります。居住する国や地域により、適応される法律が異なる場合がありますので、ご自身の状況をご確認ください。
ビットコインでも金でも、あるいは「ポケモンカード」でも、物やサービスの値段は、シンプルに言えば需要と供給で決まります。
ビットコインの総供給量は2100万BTCと決まっており、特定の時期における供給量も変更不可能なプログラムで厳密に定められているのです。
一方で、需要の側は予測が困難です。ビットコインが世に出たばかりの頃はごく少数の暗号学の研究者やマニアが交換しあう程度のものでしたが、リバタリアン的なコミュニティでの利用や「シルクロード」などの違法サイトでの利用を経て、投機目的の投資家が集まり、イーロン・マスクやテスラといった大金持ちや上場企業が需要を生み出すという歴史がありました。
こうして並べるだけでも、かなり変わった人たちが買い手であったことは明らかですが、これから先これを超える需要は生まれるのでしょうか?
シンプルに需要と供給のモデルに従うと供給量は定まっているのですから「需要の予測ができれば、価格の予測もしやすい」と言えるでしょう。
これに沿って考えるなら、「投機ブームやイーロン・マスクによるバブルを超える需要がビットコインにあるのか?」ということが価格動向を予想する上で重要になってきます。
ビットコインへの新たな需要を生み出す存在として、注目されているのが金融機関や投資会社です。あまりにも普通の話で少し拍子抜けするかもしれませんが、このような莫大な資産を持つ存在が買い手となれば、巨大な需要が生まれます。あまりに普通の話で少し拍子抜けするかもしれませんが、このような莫大な資産をもつ存在が生み出す需要はこれまでとはケタ違いなのです。
現状では、アメリカやヨーロッパ、日本などの銀行や投資会社はがビットコインそのもの(現物といいます)を買うことは困難かほぼ不可能という状態です。顧客の資産を預かる企業は資産の管理や売り買いを慎重に行わなければならず、その方法は法律や社内のルールで縛られています。そのため、どこかの投資会社のトレーダーや銀行員が「ちょっとビットコインを買ってみるか?」と思ってもそれを実行する仕組みがないのです。
2020年ごろには上場企業のレベルではイーロン・マスクやマイケル・セイラーのような強力なリーダーシップを発揮するトップがいればビットコインの購入が可能になっていましたが、より厳しい規制に縛られる金融機関は〝まだ〟ビットコインを買えないのです。そのため、アークイベントメントなどの投資会社などはグレイスケール社が発行する〝ビットコイン債権〟などを通じてビットコイン投資を行なってきましたが、主流の投資や金融の世界から見れば亜流の流れでした。
しかし、ここにきてそのような流れを根本的に変える出来事が起ころうとしています。
それは世界最大の資産運用会社の参入です。米国を拠点に巨額の運用資産をもつブラックロックがビットコインの現物ETFの取り扱い開始に向けた申請を米国の金融当局に行った、というニュースです。
米資産運用大手ブラックロックは15日、暗号資産(仮想通貨)ビットコインの現物に投資する上場投資信託(ETF)の承認を申請した。米証券取引委員会(SEC)への提出文書によると、ETFは「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト」と呼ばれ、資産管理を担うカストディアンに暗号資産交換業大手コインベース傘下のコインベースカストディを起用する。
— 出典:ブラックロック、ビットコイン現物ETFを承認申請|ロイター
投資に興味がなければ〝ブラックロック〟という名前を聞いたことがないかもしれませんが、ETF投資に興味のある人なら「iシェアーズ」などの名前は聞いたことがあるはず。これを発行しているのがブラックロックです。
同社は500以上のETFを展開しており、会社全体の運用資産は1,210兆円。日本の国家予算の10倍という莫大な金額を動かす絶対王者です。
ブラックロックの運用資産残高は9.09兆米ドル(約1,210兆円)です(2023年3月末時点、1ドル=133.090円換算)
— 出典:会社紹介|BlackRock
このブラックロックが申請したETFが米国政府に承認されれば、ETFを通じて世界中の投資会社がビットコインを購入できるようになります。強い規制のもとにある既存の金融機関にとって「これまでの枠組みと同じETFを、これまでの取り引きと同じ方法で購入できる」ことのメリットは計り知れません。
先の需要と供給のモデルに立ち返って考えるなら「ビットコイン現物ETFの承認」は限られた供給に対して、大手金融感の莫大な買いを生み出す一大転機になります。仮にブラックロックの運用額の10%がビットコインの買いに回ると考えた場合、「日本国の1年の国家予算がビットコインの購入に使われる」ことと同等というわけ。
さらにいえば、ブラックロックのライバルとなるようなETFの運用会社(ステイートストリート、ヴァンガードなど)が複数あるため、それらの会社が追随することでさらに多くの資金がビットコインに流れ込むことになります。つまり、買い手の量も額もこれまでとは桁違いになるということであり、需要と供給のモデルに従って考えるなら価格の上昇につながると考えることができます。
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