回転寿司チェーン最大手の「スシロー」が、“醤油ボトルの注ぎ口をペロペロ舐める”などの迷惑行為をした少年に対し、損害賠償を請求する訴訟を起こしていた。しかし少年側は「請求棄却」を求めて争う構えで、いくつかの争点では真っ向から反論する姿勢も見せている。裁判記録から明らかになった、その驚くべき内容とは。
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〈本件訴訟は、被告の迷惑行為に端を発している。被告は、現在も反省の日々を送っている。以上を前提に、被告は本件訴訟手続を通して、法的に適切な解決をするために、以下の主張をすることをご理解願いたい〉
5月11日に提出された少年側の答弁書は「はじめに」と題し、このような一文から始まっていた――。
「スシロー」が本社のある大阪地裁に少年を提訴したのは3月22日付。訴状によれば、今年1月3日、少年は友人と連れ立って岐阜県内のA店に来店。その際、「醤油ボトルの注ぎ口」や「未使用の湯飲み」を舐め回し、また回転レーン上の寿司に「指で唾液をつける」などの行為を働き、その様子を友人が撮影。
1月29日、この時の動画がSNS上で拡散され、一連の騒動へと発展した。これにより客足が遠のき、同31日には親会社の株価が5%近く下落し、1日で160億円以上の経済的価値を失ったとスシロー側は訴える。また訴状には〈各店舗の衛生管理に疑念を生じさせ、多くの客に著しい不快感、嫌悪感を与えた〉と記し、衛生管理面での信用が損なわれた点や醤油ボトルの廃棄費用なども含め、計6715万1970円の損害賠償を少年に求めた。
対する少年側は答弁書で、まず動画の拡散について〈被告は、本件友人との間でのみ、本件動画に関する情報を共有する意志だった。(中略)まさか本件動画が第三者に共有され、さらには拡散することまでは予想していなかった〉と主張。スシロー側が、一緒に来店した「友人を介して(動画が)拡散された」と指摘したのに対し、〈本件友人は本件動画を拡散していない〉と否定した。
そして友人が別の友人に動画を送ったことまでは認めたが(その別の友人も拡散していないと主張)、最終的に拡散させたのは某有名インフルエンサーであるとして〈被告は、本件友人が行った本件動画を第三者に共有する行為をほう助していないし、その意思もなかった〉とする。
そしてスシロー側が訴える「客数減少」についても〈回転寿司業界は競争が激しい。(中略)仮に客数が減少していたとしても(A店の)立地を踏まえると、減少の原因が他店との競合にあることも考えられる〉と述べ、スシロー側の主張には根拠がないとした。
「釈明を求める」と逆質問
少年側の「反論」はこれにとどまらない。動画の拡散騒動を受け、スシローが醤油ボトルの廃棄などに追い込まれた点について、迷惑行為が行われた席は特定できているのだから〈口をつけた醤油ボトルの効用が害されたことは間違いないが、全ての醤油ボトルの廃棄・入れ替えを実施した理由について、釈明を求める〉と、逆質問。
また他店舗にも波及した「衛生管理面での信用失墜」に関しても、A店以外で〈衛生上の問題は発生していない〉として、〈衛生上問題はないが、店舗に行くのを控えることは、消費者の極めて主観的な心理状態であって、予見可能でない〉と指摘。少年に問うべき損害でないと主張した。
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