そのレインボーの靴下では法廷に入れません――。
福岡地裁で6月8日に開かれた「結婚の自由をすべての人に」訴訟の判決言い渡しで、レインボー柄が見える靴下を履いての傍聴が認められなかった。
なぜ、レインボーが問題になったのだろうか。
この裁判は、30人を超えるLGBTQの当事者が原告となり「法律上の同性カップルの結婚が認められないのは憲法に違反する」として全国6つの地裁・高裁で国を訴えている。
レインボーは、LGBTQの人々の誇り(プライド)や連帯のシンボルだ。世界各地のプライドイベントでもレインボーのグッズが使用され、性的マイノリティの人権を守る象徴にもなっている。
レインボーの靴下を咎められたのは、明治大学法学部の鈴木賢教授だ。鈴木氏は北海道大学名誉教授でもあり、性的マイノリティを巡る法制度に詳しい。
『台湾同性婚法の誕生──アジアLGBTQ+燈台への歴程』の出版で、2023年5月に第1回日本台湾学会学術賞と第35回尾中郁夫家族法学術賞を相次いで受賞している。
最初に裁判所の建物に入る時に、バックパックについているレインボーの装飾を注意されたが、その時は「表現の自由がある」と反論し、それ以上は深く追及されなかった。
しかし、今度は法廷に入ろうとした時に「レインボーの靴下では傍聴できない」と言われたという。
鈴木氏が理由を聞くと「裁判体(裁判官および裁判員)の指示である」とのことだった。
鈴木氏は「靴下の柄だし、座れば裁判官からは見えない」と伝えたが、認められなかった。そのため、納得はいかなかったものの、靴下を曲げレインボー柄が見えないようにして傍聴した。
また、鈴木氏によると、法廷の前にはマスクの箱とガムテープが用意されていたという。鈴木氏は「マスクはレインボー柄のマスクをしている人が付け替えるように、ガムテープはレインボー柄を隠すためだったのではないか」と話す。
原告の弁護団によると、これまでの口頭弁論などでレインボー柄が禁止されることはなかった。
ただ8日の判決では、当日朝に書記官から九州弁護団の事務局長に「裁判体の指示で、レインボーのバッジ等や『marriage freedom(結婚の自由)』と書かれたTシャツは法廷内では着用しないように」という連絡があったという。
弁護団は、これまでにない対応に驚いていると話す。
結婚の自由をすべての訴訟は全国5つの地域で進んでいるが、他地裁の訴訟でもレインボーの装飾品などを身につけて傍聴する人たちは珍しくない。
今回レインボー柄での傍聴が認められなかった理由について、福岡地裁はハフポスト日本版の取材に下記のように回答した。
「法廷という場であることから、はちまき、ゼッケン、たすき、腕章を着用した場合、入廷を禁止される場合があります」
「本日の同性婚訴訟に向けて、裁判長の指示により、上記に類するレインボーカラーの装飾品のうち、裁判体および当事者から(目視で)認識できるようなものを、着用しての入廷は許されておりませんでした」
裁判所によると、普段はレインボーデザインが禁止されているわけではなく、8日の判決のみの要請だという。
また「マスクやガムテープを用意していたのか」という質問に対しては「どういった対応を取ったかということについてはお話しできない」とのことだった。
鈴木氏は、フラッグの持ち込み禁止は理解できるとしたうえで、靴下の柄で傍聴を認められないのは「過剰な制限」ではないかと話す。
「はちまき、ゼッケンは文字が書いてあるので規制の対象になるのだと想像します。一方、レインボーは文字ではなく、デザイン、柄です」
「これは今後もそうなるのか、全国の他の裁判所はどうなのか、明確に説明すべきです。裁判傍聴に不要な萎縮効果が生じます」
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
法廷でレインボーの靴下が「禁止」される。はちまき、ゼッケンと一緒?