現状を打破しなければいけないと頭ではわかっているのに、なかなか一歩が踏み出せないという人は多いはず。勉強、転職、キャリア設計、新しい習慣。わたしたちは日々、多くの悩みに直面しています。
ハフポスト日本版は、10周年企画「未来を作る」イベント第3弾として、米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルム フェスティバル & アジア 2023(以下、SSFF & ASIA 2023)」とコラボによるトークイベントを開催。
今年の映画祭テーマ「UNLOCK(解放)」から、「私をアンロックする」と題して、映画祭のアンバサダーであり、ハフポストでも好評連載中のタレント、LiLiCoさんを招き、ハフポスト日本版編集長・泉谷由梨子と、語り合いました。
泉谷由梨子(以下、「泉谷」):参加者の方から事前に、「UNLOCK」というテーマでLiLiCoさんに聞いてみたいことを伺ったところ、たくさんの声が寄せられました。
LiLiCo:どんどんください。お悩みに答えるの得意ですよ。
泉谷:まずは、「新しい一歩がなかなか踏み出せない。どんなふうにマインドセットをしたらいいか?」というご質問ですね。
LiLiCo:どんな状況なのかしら。多分、お仕事のことでは、と想像します。これはとっても簡単なことですけれど、自分のことを止めているのは自分なんですよね。周りの人は誰も気にしてない。それに気がついたら、いかに悩んでいる時間がもったいないかわかるはず。
まずはポンと一歩踏み出してみて、合わないな、と思ったら、やめちゃえばいいんですよ。辞める時は「やってみたけど合わなかった!」って明るく言えばいい。日本に来てみたけど、全然日本は自分に合わなかったから帰ることにした、とかね。だって、誰も傷つけていないし、次のステップにも行く決断もできます。
泉谷:何かをやめる時って、たとえば人に知られたら「飽きっぽい人、根性がない人、って思われたらどうしよう」などと悩んでしまいがちかな、と思います。
LiLiCo:やめる勇気って大事かもしれないですね。とはいえ、自分の人生ですから。しかも、人間って成長するんです。私はたまに、「この前と言ってること違うよ」って人から言われるんですけど、当たり前でしょ。だって成長してるんだもん。だから、根性がないのではなく、成長したんです。
泉谷:「やりたかった仕事にやっとつけたのですが、やっぱり最初は勉強の日々。自己肯定感がなかなか上がらないけどどうすればいいでしょうか?」という方もいました。
LiLiCo:「勉強の日々」というのは、当たり前のことだと思うんです。会社の社長じゃなくても、企画を作る職種じゃなくても、人間、生きている以上はずっとアンテナを張ってないといけない。
私の祖母がよく「駅から家に帰る時、毎日同じ道を通ると何も勉強にならないから、毎日違う道を通りなさい」と言っていました。
泉谷:すごいアドバイスですね、名言です。
LiLiCo:新しいパン屋さんができたな、行列ができているな、という発見でもいいんです。それで実際に自分で食べてみる。あっ、自分はそんなに好みじゃなかったな、っていう感想でも、それはそれでいいじゃないですか。その気づきが勉強になりますよね。
ふらふらするのって、とってもいいですよ。私、よく話が脱線しがちで、人からも指摘されるんですけど、雑談も本当に大事です。雑談にこそ発見がある。雑談ほど大切なものはないと思います。
泉谷:雑談の大切さは私も実感しているところです。コロナ禍以降、ミーティングもオンラインでかなりシステマティックになっていて、自分の話をしたり、人の話を聞くことのハードルが上がっている気がします。
LiLiCo:新型コロナは完全になくなったわけではないけれども、気をつけながらコミュニケーションを模索したいですよね。日本人は特に「話し下手だから」と遠慮してしまう方が多いのですが、黙って静かになってしまうのが一番もったいない! 私なんて、日本語喋れない時からこんなに喋ってますよ(笑)。
SSFF & ASIA 2023の「BRANDED SHORTS」というカテゴリのノミネート作品に、オーシャンソリューションテクノロジー株式会社の『おなじ未来』というショートフィルムがあります。この作品の中には、主人公のお父さんとその同僚の何気ない会話を聞いた主人公が、お父さんの意外な一面を発見する印象的なシーンがあるんですね。
「言うタイミングがなかった」って言う人がいるかもしれないけど、それはタイミングを作らなかったから。
本当は、自分次第でタイミングはいくらでもあるんです。
(※)SSFF & ASIA 2023にはブランデッドムービー(企業のプロモーションにつながる映像作品)を公募する公式部門「BRANDED SHORTS」があり、日本で唯一の国際的な広告映像部門となっている。映画祭オンライン会場およびAbemaでは国内外の選び抜かれたブランデッドムービーを配信中。6月13日、14日には赤坂インターシティで上映やセミナー、授賞式が行われる。
泉谷:「UNLOCK」のテーマにも通ずるところがありますね。なかなか自分の言いたいことが言えない、という日本の風土だからこそ共感できるショートフィルムなのかな、とも思いました。
それは、同じく「BRANDED SHORTS」に応募されていた株式会社ムラタの『ある家族』という作品からも感じます。恐らくある時点から、家族や一部の人にだけ、自分の性自認が男性ではなく女性であると打ち明けて生きるようになった主人公が、「終活」をするところから始まるストーリー。
主人公は自分のお葬式で使う遺影の写真を、男性の自分にするのか、それとも女性の自分にするのか悩みます。
家族らへのカミングアウト以降も、生活の一部では男性として過ごし続けてきたという様子から、日本社会にはマイノリティ包摂の遅れ、カミングアウトがしづらい閉塞感があるという現実を描き、その上で、本人が望む「自分らしさ」に寄り添いたいという葬儀社の思いが伝わってきます。
LiLiCo:私、日本に住んで35年になるんですけど、日本もだいぶ変わってきたと思いますよ。これからフルスピードでいろんなことが変わっていく、という予感があります。
最近、また街で外国人観光客を見かける機会が増えましたが、旅行地として日本を選んでくれた人たちが、困っていたら手を差し伸べたいですよね。言葉が全然わからなくてもジェスチャーで通じますから、どんどん声をかけてほしいなと思います。喋らないとわからないことがたくさんあります。「間違える勇気」を持つこと。
「UNLOCK」というテーマをまた振り返りますが、誰もあなたに鍵はかけていないんです。もう、親や周囲の人間にあなたの人生をああだこうだと言わせる必要はない。自分に鍵をかけているのは自分自身だということを、どうか思い出してほしいです。
(取材・文:清藤千秋)
オリジナルサイトで読む : ハフィントンポスト
「やめる勇気って大事かも」。LiLiCoさんが語る「私をアンロック」する生き方
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